中国発祥の米粉めん「ビーフン」を日本の食卓に届け続けて70年以上という長い歴史を誇るケンミン食品。現在はタイにある工場で、海外産の米を使って生産を行っています。そんなケンミン食品が今回、悲願である「国産米粉100%のビーフン」の開発を実現。つるつるしたのどごしに、しっかりとしたコシ。さらに馴染み深い日本のお米の香りまでおいしい、新しいビーフンです。
海鮮五目汁ビーフン 1,180円(税込)
ピリ辛汁ビーフン 1,280円(税込)
担担和えビーフン 1,200円(税込)
※店内飲食のみ、各数量限定で提供。
・健民ダイニング(店内飲食)
兵庫県神戸市中央区海岸通5-1-1
Tel.078–366–3039
味付け済みで調理時間はたったの3分。カンタンでおいしい「焼ビーフン」を日本の食卓に紹介した老舗、兵庫県神戸市のケンミン食品株式会社(以下ケンミン食品)。70年以上の歴史を誇るケンミン食品の悲願とも言える、「国産米粉100%ビーフン」がついに完成しました。その開発過程には、日本における米粉めん「ビーフン」のパイオニアでありリードカンパニーだからこそのこだわり、そして葛藤がありました。
「国産米粉100%のビーフンをつくることは当社の悲願でした」
そう話すのは、商品開発を担当した経営企画室課長代理の大塚光晴さん。今回の開発プロジェクトを成功に導いた立役者です。
ケンミン食品の創業は1950年。70年以上、神戸の地から日本全国に「ビーフン」を届けてきました。ビーフンは中国南部発祥と言われ、漢字で「米粉」と書きます。その名の通り、材料は「米粉」。創業当時は、神戸で生産を行っていたそうです。その当時から、本場の味に近づけるため海外産のインディカ米の米粉を原材料として使用していました。海外米は日本のお米に比べて粘り気が少なく、製めんに適しているそうです。
その後、規制で海外産の米の輸入ができなくなったため、ケンミン食品は1987年にタイに生産工場を設立。以来、海外産の米粉を使い、海外で生産したビーフンを、日本の食卓へと届けてきたのです。
「日本国内でこれほどの歴史を誇り、かつ米粉で製めんができる技術を持っている企業は、当社をおいて他にはないと自負しています。だからこそ国産の米粉100%にこだわってビーフンを製造したい。そんな思いが経営陣をはじめ、全社にありました」
創立70周年を迎えた2020年前後に「国産米粉100%のビーフンを開発すべし」という使命が、大塚さんに下されました。そこから3年間、どのように生産すればいいか考え、試行錯誤していた大塚さん。そこに今回の「米粉商品開発等支援対策事業」の知らせが届きました。
「技術はあるが、設備がない。それが大きな課題となっていました。国産米粉は原材料費が高いうえ、タイ工場に運んで生産すれば輸送費まで価格に反映されてしまう。となれば日本で生産するのが順当です。ただ、日本の工場には製めん設備がないため、新たにつくらねばなりません。そのコストに悩んでいた背中を押してくれたのが、本事業だったのです。これをきかっけに2023年に開発は大きく前進しました」と大塚さん。
「国産米粉100%のビーフン」は、ケンミン食品の積年の思いとは別に、消費者からも求められていたそうです。海外産米は独特の香りが特徴。その香りはビーフンに加工しても残るのです。それが日本米の香りに慣れ親しんだ一部の消費者からは不評だったそうです。
「国産の米粉でつくったビーフンは、ほわっと日本の白米の香りがします。日本人にはとても馴染みのある、炊きたてのご飯の香りです。そんな国産米粉100%のビーフンをお届けすることができれば、不満を解消でき、よりケンミンのビーフンで喜んでいただける、という期待がありました」
実際に試作を始めると大きな壁にぶつかった、と大塚さんは苦労を話します。海外の米と比べ、日本米は粘りが強いのが特徴。それがビーフンにとってはマイナス要素となってしまったのです。
「ビーフンはお湯で茹でますが、国産米粉でつくったビーフンは粘り気が多いため、少し時間が経つだけでめんがくっついてしまうのです。そうなると調理の際に、めんをほぐすという工程が増えてしまう。手軽にカンタンにおいしく食べてほしい、という当社のビーフンへのこだわりに反してしまう。それでは商品として不合格なのです」
それ以外にも、クリアしなければならないケンミン食品のこだわりの基準がありました。それは「切れない」「コシがある」「のどごしがよい」。そのこだわりの基準をクリアできるよう、米粉大手の株式会社波里と協力し、最適な米粉を探していったといいます。
「風味、そして味とのどごし、なにより調理のしやすさ。波里さんにご協力いただき、そのこだわりを満たす米粉が見つかりました」と大塚さんは話します。
「試作品が社内でも高評価を得て、機械導入にゴーサインがでました。現在は兵庫県丹波篠山市にあるケンミン食品篠山工場内にスペースを設け、専用の製めん機の導入が完了しています。まだまだ少量ではありますが、『国産米粉100%のビーフンを国内で生産する』という、ケンミン食品の夢が実現したのです」
海外米と比べると生産コストが高く、また海外と比べ生産にかかる人件費も高いため、価格は従来製品と比べてかなり高額になるそう。そこでまずは国産米粉100%のビーフンができたということを認知してもらうために、自社が運営するレストランで提供を始めるとのことです。本社ビル1階にある「健民ダイニング」で、これまでの海外米を使ったビーフンと国産米粉100%のビーフンを選べるようにするとのこと(※)。
※国産米粉100%に変更する際は、通常料金に200円が加算されます。
「そこでお客さまの声を集め、大量生産の可能性を探りたいと思っています。今回の『国産米粉100%』とは、添加物や防腐剤を使わない、100%米粉だけのめんということ。そこにもこだわりました。そのため現状では、保存性などは未知数。そのあたりも自社レストランでトライアルしつつ探っていく予定です」と大塚さん。
米粉だけでつくっためんは、当然ながらグルテンフリー。小麦アレルギーの方やセリアック病の患者さんなど、「小麦でできためんは食べられないが、めん類を楽しみたい!」といった方にもお勧めしていきたいと考えているそうです。そのためにケンミン食品篠山工場内に、国産米粉を使用したビーフンなど米めん開発を行う研究・製造施設「ビーフン未来Factory」を新設。2024年1月より稼働を開始しています。
「おそらく米粉100%でビーフンを大量生産できるのは当社だけ。自信を持って、今後は飲食チェーン店などに営業をかけ、徐々に全国に浸透させていきたい思います。小麦のめん、うどんやパスタを食べられない人にめん食の喜びをお届けできることはもちろん、この商品がより多く消費されることで、微力ながら日本米の生産・消費拡大、水稲作付面積の低下抑制にも貢献できるのではと期待しています」
と抱負を話してくれました。米粉(ビーフン)の老舗、ケンミン食品が満を持してつくった「国内産米粉100%のビーフン」が、日本全国の食卓を彩る日はそう遠くないかもしれません。