岡山市の米粉パン専門店大元工房で発売を開始したグルテンフリーの米粉パンは種類が豊富。皮はカリッと香ばしく、中はしっとりもっちり、噛むほどに甘みが広がります。二日目も変わらぬおいしさは、自社で開発した米粉ミックス粉のおかげです。
岡山米粉パン(プレーン) 140円(税別)/1個
つぶあんパン 200円(税別)/1個
※店頭価格の一例
・米粉パン専門店 大元工房
岡山県岡山市北区野田2丁目10-15
Tel.086-238-1180
・自社ECサイト
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岡山県で米粉の製造販売を担うシーワングループで、パンなどの米粉食品の製造販売を手掛ける株式会社エムワン(以下エムワン)は、グルテンフリーの米粉パン用ミックス粉を活用し、自社が経営する米粉パン専門店大元公房で、グルテンフリー米粉パンの製造・販売を開始しました。
大元工房では、これまでも岡山県産「吉備しあわせ米粉」を生地に使用した米粉パンを製造・販売。「もちもち、フワフワ」食感が人気となっていました。
今回、新たにグルテンフリーのパンを発売した理由を代表取締役の田中満さんにお聞きしました。
「私はこれまで10年ほど米粉に関わってきましたが、小麦粉を使用しないグルテンフリー専門のパン屋さんは、市場としてとてもニッチで、特に岡山だと小麦粉アレルギーの方も多くなく、経営を続けていくことが難しい状況でした。そこで、アレルギーがある人もない人もおいしく食べられる、両方をターゲットにした米粉パンのお店をできないかと考えました」
ただ、そこで一番の問題は、小麦粉を使っている現場でグルテンフリーのパンをつくってお客様に受け入れられるかという部分。最初は現場のスタッフも難色を示しましたが、お客様に情報や検査結果などをすべて開示して、アレルギーへの完全対応ではない旨をご理解いただいた上でご判断いただこうと、テストを兼ねてお店で扱い始めたそうです。
「現在は、金曜と土曜など、日時を限定してグルテンフリーのパンを販売しています。実際に販売を開始してみると、『私はそこまでアレルギーが強くないので、いろんな商品を出していただけるのはありがたい』という声を多くいただきました。また、アレルギーはなくてもグルテンフリーのパンを食べたいという方も多いですね。アレルギーで完全対応した商品でないと食べられない方は専門店にお任せして、当店では、受け入れていただける客層に米粉パンを楽しんでいただければと考えています」 実際にいただくと、皮はカリッと香ばしく、中はしっとりもっちり伸びもあり、噛むほどに甘みが広がるおいしいパンでした。
今後は、開発したグルテンフリーの米粉パン用ミックス粉の他のパン屋さんへの提供も考えているそうです。
「例えば、街のパン屋さんは、お昼ぐらいまでパンを製造して、午後は機械が稼働していない場合があります。その時間を利用してグルテンフリーのパンをつくれば、機械の稼働率を伸ばし、新たな客層を獲得することもできます」。
グルテンを含まない米粉パン用ミックス粉の開発を開始したのは8年ほど前だそうです。
「当時からグルテンフリーの米粉パン用の粉は世の中にありましたが、型に流し込んで成形するタイプが多く、商品ラインアップに限りがあり、つくって2日目に固くなるなど、商品価値をもっと上げられるという印象でした」
当時、シーワンで米粉の製造・販売を担当していた田中さんは、仕事の合間などを使って試作研究に没頭。5年ほど前に、大元工房の経営を担うことになり、その母体としてエムワンを設立。その代表取締役に就任した頃には、プロトタイプが出来上がり、ゴールが見えてきたそうです。
「当時、大元工房で試作品をつくって食べてもらったのですが、米粉や他の材料を試作どおりの分量で混ぜ込んで、水の温度を測ったり、生地の温度を測ったりして現場で再現するのがとても大変でした」。
お店でグルテンフリーの米粉パンを量産するなら、どんなスタッフでも均一なクオリティで仕上げられないといけません。だれでも簡単につくれるように、「混ぜる」作業や「測る」作業を極力減らし、分量や加水量が多少ぶれてもおいしい米粉パンができるようなミックス粉に仕上げようと、更なる開発を進めたそうです。
「重要なのは、米粉とデンプンと増粘剤のバランスですね。米粉にデンプンをプラスすることで米粉のデメリットをなくし、増粘剤により疑似的な小麦の要素を足していく。デンプンや増粘剤の種類の検討はもちろん、米粉パンをつくるミキサーの特徴に合わせてブレンドを考えていきました」
田中さんが目指したのは、小麦粉のような使い勝手の良い米粉です。
「小麦は、中力粉でうどん、強力粉でパンなど、つくり方がしっかり確立しており、硬水・軟水を問わず水道水でつくれますし、イーストはドライでも生でも手に入るものでできます。グルテンフリーの米粉パンもそれと同様に、どこでも手に入るものでできるようにしたいと考えました。完成したこのミックス粉があれば、あとは水やイースト、塩や砂糖など、小麦粉のパンづくりと同様の材料で誰でもおいしい米粉パンができます」
完成したミックス粉は成形可能な生地になるので、食パンだけでなく、あんパンやクリームパンなど、さまざまなタイプのパンをつくることができます。
「このミックス粉をいろんな方にお配りしたところ、大阪のパン屋さんから使いたいと連絡があり、今、製造テストを行っています」
今回開発したミックス粉の製法は、米の品種を変えても応用できると田中さんは語ります。「米粉に付加するデンプンや増粘剤などのバランスを、米それぞれの特徴に合わせてチューニングすれば、おいしい米粉パンはできます。最近では、島根や鳥取など他県からも情報を聞きに来られますね」
使い勝手の良さと、いろんなタイプのパンをつくれる汎用性、そして米の品種に合わせたブレンドのノウハウが、グルテンフリーの米粉パンの可能性を広げます。