新商品をつくるほどに、米粉の可能性を感じています

新商品をつくるほどに、米粉の可能性を感じています

食物アレルギーや食事制限があるなど、「食べたいのに、食べられない」という人からのニーズの高まりを受け、米粉を使ったパンやピザを開発している株式会社ふく家(以下ふく家)。米粉を使ったパンづくりは初めて経験することばかりで、試行錯誤の連続だったそうですが、パンづくりに携わるスタッフが意見を出し合い、見た目も味わいも個性豊かなパンが次々と誕生しています。

太陽の恵みを受けて育った米から、元気とパワーをもらう

「私たち日本人は、古くからお米を食べてきました。今回開発した古代米食パン『Rising Sun』には、はるか昔に食べられていた古代米と、現代の主食である玄米や白米を使うことで“古代と現代をつなぐ”という想いを込めました」と代表取締役の秋保明美さんは話します。
「米が育つ環境に太陽や水の恵みは欠かせません。商品名の『Rising Sun』は、お米がもつ力強さや、健康的なイメージが伝わるようにと考えて付けました」と話します。

「古代米食パン『Rising Sun』」は、国産米粉に赤米や黒米といった古代米を30~40%ほど加えてつくります。赤米や黒米には身体に良いとされるアントシアニンが多く含まれており、栄養価が高いことで知られています。秋保さんは「古代米は栄養面で優れているだけでなく、ほのかな酸味や適度なえぐみがあるので、米粉に力強い風味が加わります。さらに赤米はほんのりピンク色、黒米は紫色の生地に仕上がるので、カラフルな米粉パンを楽しめることも魅力です」と話してくれました。

太陽の恵みを受けて育った米から、元気とパワーをもらう
太陽の恵みを受けて育った米から、元気とパワーをもらう

米粉以外の素材も、白神こだま酵母やてんさい糖、米油など、自然に近いものにこだわっています。今回は古代米を使用しましたが、竹炭や紅茶エキスなど、さまざまな素材を練り込むことで、味わいも見た目も多彩な米粉パンをつくることができるそうです。ふく家で開発した新製品は、「米粉パンといえば白い生地」というイメージを一新する、新しいスタイルのパンと言えるでしょう。

2023年12月から販売を開始した「OH COME PIZZA(~お こめピザ~)」も、古代米を使った生地が特徴です。米粉のもちもちとした食感に加え、少し厚めに成形した縁の部分は、焼き上げると香ばしさが増し、米粉ならではの風味を楽しめます。トマトソースベースのマルゲリータ、フルーツやあんこをトッピングしたデザートピザなど、楽しみ方も自由自在。「ご飯を洋食や和食のおかずで味わうように、米粉でつくったピザも素材の風味を邪魔することなく楽しむことができます。色味の異なる生地やカラフルなトッピングは、写真映えもバッチリ。食卓を華やかに演出し、みんなでシェアして味わうのにぴったりです」

「家族目線」で開発に取り組み、誰もが生き生きと働ける場を提供

ふく家が手がける米粉パンは、2022年にオープンしたグルテンフリーのベーカリー「SHIMA」(東京都町田市)で販売しています。新製品の開発には、たくさんのスタッフが関わっています。
「スタッフの中には、食物アレルギーをもつ子どもがいる人や、加齢や病気で味覚が変わってしまったという人もいます。そういう人たちは、試作品をみんなで検討する際も『うちの子どもなら…』『自分が食べるなら…』といった観点から意見を出してくれます。こうした“家族目線”は、私たちの製品づくりに大いに役立っています」とも話してくれました。

「家族目線」で開発に取り組み、誰もが生き生きと働ける場を提供

近年、食物アレルギーやグルテンフリー食品への理解が深まり、米粉パンの市場は広がりを見せています。しかし、アレルゲン物質を排した設備を整え、安心安全な素材を調達し、十分な人材を確保するなど、さまざまな課題があります。
「まだまだ手間やコストがかかる米粉パンは、どうしても高めの価格設定になってしまいます。でも、米粉パンを必要とする人には気軽に手にしてもらいたいですし、おいしく食べてもらいたい。そういう想いから、SHIMAでは小さな子どもが食べるのにちょうどいいサイズの米粉パンをつくり、1個100円台から販売しています」と話します。

SHIMAでは、小さな子どもを育てているお母さんやシニア世代も多く働いています。秋保さんは「フルタイムは難しいけれども、週に数日、数時間でも働きたいという人たちを応援しています」と話します。店舗では、タッチパネル式の機器を導入するなど、誰でも無理なく作業に取り組める持続可能な職場づくりを目指したそうです。
「米粉パンをつくることで、アレルギーを持つ人たちとそうでない人たちの食の垣根を取り払い、働く場所を提供することで、誰もが自分のペースで社会に貢献する。この2点は、私たちが事業に取り組む目的であり、モチベーションになっています」

新しい形と価値観で日本の米を世界に発信

新しい形と価値観で日本の米を世界に発信

イギリス・ウェールズ政府公認のウェールズ羊プロモーションシェフを務めている秋保さんに、日本の米や米粉製品の展望について伺いました。
「海外では『日本のお米はおいしい』という認識がだいぶ広まってきていると感じています。また、米はグルテンフリーなので、体質的に小麦を摂取できない人や健康への意識が高い人にも向いています。もしかしたら今後は『米を食べるために日本にやって来た』という旅行者も増えるかもしれません。私たちは米粉パンやピザといった新しい形で日本のお米の魅力を知ってもらい、小麦粉文化とは違う価値観を発信して行きたいと考えています」と話します。

今回開発した古代米を使った食パンやピザ生地は、白米でつくる米粉よりも力強い風味を楽しめるのが特徴です。「日本の素材との相性が良いのはもちろんですが、チーズやベーコンといった欧米で広く親しまれている食材とも合うのでは」とも話してくれました。

国内外でのイベントに積極的に参加し、米粉パンや日本の食材を使った料理を発信している秋保さん。今後も、オリジナリティあふれる商品とともに、米粉の新しい楽しみ方を発信していきます。