北海道の材料で生米の製粉から自家製、商品のこだわりを伝えるリブランディング

北海道札幌市で米粉バウムクーヘン事業「ring ring(リング・リング)」を手掛ける株式会社SYOKUSAN(ショクサン、以下SYOKUSAN)。商品開発部マネージャーの佐々木遥香さんに、今回のリブランディングを含めた商品開発についてお聞きしました。

北海道米を自家製粉、道産素材でバラエティ豊かに

パステルカラーの外観が目を引くバウムクーヘンの店「ring ring」。店舗へ入ると、甘い香りが漂い、目の前で焼き上げた米粉のバウムクーヘンが棚いっぱいに並んでいます。バウムクーヘンは大きく分けてソフトタイプとハードタイプの2種類。ソフトタイプには北海道産のフルーツ等を使った各種フレーバーと、今回は増毛町の酒蔵・国稀とタイアップしたプレミアム商品があり、トータル8種類のバウムクーヘンを展開しています。

北海道米を自家製粉、道産素材でバラエティ豊かに
北海道米を自家製粉、道産素材でバラエティ豊かに

生地に使用している米粉は北海道米の「きらら397」。いろいろな品種を試した結果、製菓に適したものを選びました。粒米を仕入れて店舗工場で洗米・浸漬して自家製粉した生米粉は、市販の米粉と比べて水分値が高く扱い方がデリケートになるぶん、しっとりふんわりとした食感に仕上がります。丁寧に仕込んだ生地を専用のオーブンで繰り返し回転させ、目の前で焼き上げたバウムクーヘンは、新たに開発されたパッケージで直営店のほか、札幌市内の百貨店やスーパーなどで販売され、手土産やギフト、北海道のお土産としても喜ばれています。

SYOKUSANが米粉バウムクーヘン事業を開始したのは2021年3月。しかし、当初から順調だったわけではありません。

パッケージ更新で商品コンセプトを言語化

同社が「ring ring」を出店したきっかけは、前身が米の流通民営化を担う公的機関だったことに由来します。減少する日本人の米消費量の回復を目指して米粉の販売を始めましたが、原料としての需要は伸び悩み、自社で商品化しようと米粉のバウムクーヘン事業を立ち上げました。

「米を取り扱ってきましたが、自社で商品の製造・販売をしたことがなかったので、事業の立ち上げから手探りでした」と佐々木さんは話します。当初のターゲットを流行に敏感な30~40代の女性に設定し、商品ナンバーが記されたパッケージ(写真左)で販売していましたが、そのデザインが化粧品のような印象を与えていました。「米粉でつくっていることや北海道の素材を生かしていること、体にやさしいお菓子であることが伝わっていませんでした」と佐々木さんは言葉を続けます。今回のパッケージ更新にあわせて商品ラインナップを見直し、新商品として開発し直すことに取り組みました。

パッケージ更新で商品コンセプトを言語化

百貨店やスーパーの陳列棚に並んだ商品は、直営店での対面販売のようにその良さや生い立ちを伝えることができません。 「パッケージを見ただけで商品のよさと私たちの思いが伝わるデザインにしたいと考えていました」と佐々木さん。本事業で外部のデザイン会社にパッケージのリニューアルを依頼しましたが、上がってきたデザインは3度、4度の見直しが必要でした。

「バウムクーヘン事業に携わってきた私たちには、ブランドへの思いや商品をどのようにお客様に見せたいかというイメージがあるものの、それを第三者に伝えることの難しさを感じました」と佐々木さん。イメージのギャップが、同社の米粉バウムクーヘンのコンセプトを改めて言語化するきっかけになりました。こうして1年近くの時間をかけたリブランディングでたどり着いたのが、現在のパッケージ(写真右)。バウムクーヘンの自転車に乗った少女が、北海道を駆け巡り、選りすぐりの素材を集めて届けるストーリーを伝えています。

米を大切にしてきた企業の思いを込めて

米を大切にしてきた企業の思いを込めて

「リブランディングで以前のようなSNS投稿だけでなく商品自体に目を向けてもらえるようになりました。明るく暖かい印象のパッケージになったことで、店舗でお子様連れのママさんやご年配のお客様にも手に取っていただける商品になりました」と佐々木さんは笑顔を見せます。

今回、新たに商品化したものもあります。以前からフードロス削減への取り組みとして販売していたバウムクーヘンの切れ端を、アップサイクルした「バウムラスク」です。同商品のパッケージにも思い入れがあります。それぞれのフレーバーにエゾ動物を採用し、そのキャラクターカードをパッケージに差し込みました。カードの裏面には動物の名前がアイヌ語で書かれ、特徴を表すキャッチコピーがつけられています。

「子どもたちに蝦夷動物に親しんでほしいという気持ちでデザインしました。百貨店やスーパーのバイヤーさんに説明するととても興味を持って聞いてくださいます」と佐々木さん。商品ストーリーの大切さを改めて知る開発事例になりました。

また、新たなパッケージの素材に廃棄米からつくられた紙を用いたことも同社のこだわりです。米からできたパッケージで米粉バウムクーヘンを届けます。
「商品を伝えることができるようになったので、今後はさらに認知を広げたいと考えています。地元に根ざして育ててきたビジネスをオンライン販売で伸ばして、たくさんの人に米粉バウムクーヘンを届けたいです」と佐々木さん。遠く離れたところでも、そのパッケージが手に取る人へ思いを伝えてくれることでしょう。

米を大切にしてきた企業の思いを込めて