毎年進化しているコンビニの中華まん。今シーズンは米粉が入った皮に注目

毎年進化しているコンビニの中華まん。今シーズンは米粉が入った皮に注目

全国どこの街でも見かけるコンビニエンスストア。パンやおにぎり、ドリンクなどをいつでも購入できる手軽さとともに、近年は有名料理人とのコラボ企画や素材を厳選した本格志向の味を提供する「コンビニグルメ」も注目を集めています。例年9月ごろからレジ横に登場する中華まんは、寒さが増すほどに恋しくなるコンビニグルメの代表の一つ。大手コンビニチェーン向けに中華まんを製造している株式会社中村屋(以下中村屋)では、米粉を加えた皮を開発し、新たな食感とおいしさを実現しました。

2023-2024年度のテーマは「しっとりとした皮」

1901年(明治34年)に創業した中村屋では、「おいしいものをつくって、お客様に喜んでもらう」ことを第一に、さまざまな商品を生み出してきました。中村屋を代表する商品の一つである中華まんは、1927年(昭和2年)に発売された「天下一品支那饅頭」が始まりとされ、以来、多くの人に親しまれてきました。

コンビニエンスストアで販売されている中村屋の中華まんは4種類。「もちもちxじゅわっと 大入り豚まん」は、具に豚肉と玉ねぎをたっぷり使い食べごたえ満点。豚肉と玉ねぎに加え、シイタケやタケノコが入った「ふんわりxごろっと 肉まん」は、具の存在感が抜群です。ほかにもトマトソースとチーズがあふれ出す「もちふわxとろ~り ピザまん」、ゴマの風味となめらかな餡が人気の「ふわふわxとろっと濃厚 ごまあんまん」と、それぞれにこだわりの具材がたっぷり入っています。

2023-2024年度のテーマは「しっとりとした皮」
2023-2024年度のテーマは「しっとりとした皮」

中華まんスチーム開発部の齊藤洋さんは、個性豊かな具材をやさしく包み込んでいる皮の開発を手がけています。「コンビニで販売している中華まんは、毎年変わらないように見えますが、じつは毎年どこかを改良しています。今回、皮については“しっとり感を強化する”という目標のもと、改良を進めました」と話します。

しっとりとした食感を出すために、どんな素材が必要か検討する中、「米粉を使ってみては」という提案があったそうです。「中華まんの皮は国産の小麦粉が主原料です。小麦粉はふんわり軽く、口溶けが良いのが特徴です。そこに米粉を加えたら…。最近、米粉パンを多く見かけるようになったこともあり、米粉を使えば“もちもち・しっとり感”を中華まんでも出せるのではと考えました」

しっとり食感と口どけの良さの両立を目指して

米粉パンからヒントを得て、中華まんの皮に米粉を加えてみることになりましたが、実際に試作をしてみると、いろいろなことがわかったそうです。
齊藤さんは「中華まんの皮に米粉を使用するのは初めての試みでした。試作したところ、米粉でしっとりとした食感を出すことはできたものの、その一方で口どけの良さには少し課題が残りました。そこで、小麦粉に加える米粉の比率を調整することにしました。何度も試作を繰り返したことが、今回の開発で一番苦労した点ですね」と振り返ります。

最終的に米粉の割合は0.5%になりました。これは米粉ならではのしっとり感を出しながらも、小麦粉の口溶けの良さを生かす絶妙なラインだそうです。「米粉と小麦粉、双方の良さを引き出し両立させることで、中華まんに新たな魅力が加わったと考えています」

しっとり食感と口どけのよさの両立を目指して
ラボでの試作から工場での大量生産へ。中華まんの進化は続く

ラボでの試作から工場での大量生産へ。中華まんの進化は続く

ラボで開発を進めた齊藤さんたち。試作を重ねた結果、納得のいくものをつくることができましたが、それを商品として工場で大量につくる段階で、新たな課題が出てきたそうです。 「ラボではうまくできても、工場の製造ラインでは口溶けが悪くなってしまったり、表面にシワが寄ってしまったりという不具合が出ることがありました。そこで工場からの報告をもとに、大量生産でも設計品通りのクオリティを保てるように微調整を行いました」

半年以上かけて米粉入りの皮を開発し、新しい食感を生み出した齊藤さん。今後の展望については「コンビニを利用する多くの人たちに、新しい中華まんを届けたいですね。実際に味わってもらい、米粉の特徴や魅力を実感してほしいと思います」と語ります。

さらに米粉の活用については、まだ検討の余地があると感じているそうです。「私は皮の部分を担当していますが、具材を担当しているメンバーもいます。お互いの改良点をすりあわせながら、さらにおいしい中華まんをつくっていきたいと思います。また、味覚や食感については、好みの変化もあると思います。今後はそういった時代の変化を考慮しながら、お客様が求めているものをつくっていきたいです」

米粉の特徴を生かしてバージョンアップした中村屋の中華まん。これからも改良を重ね、さらなるおいしさを追求していきます。

ラボでの試作から工場での大量生産へ。中華まんの進化は続く