グルテンフリー市場への布石、海外展開も視野に入れた大容量の米粉入りカップラーメン

山本製粉株式会社(以下、山本製粉)は、1916年に愛知県豊橋市に製粉業で創業。1940年から製麺を手掛け、その生産を拡大してきました。1964年に発売した袋麺の「ポンポコラーメン」は、当時と変わらぬ懐かしい味でロングセラーのご当地ラーメンです。今回、その「ポンポコラーメン」から、新たに大容量の米粉入りカップラーメンを発売。その開発背景と商品コンセプトを、常務取締役営業本部長の鈴木利延さんにお聞きしました。

米粉のカップ麺をラインナップ、新規需要の獲得へ

米粉のカップ麺をラインナップ、新規需要の獲得へ

山本製粉の商品ラインナップはバラエティ豊か。自社ブランドのラーメン、うどん、そばの袋麺、乾麺、カップ麺を、和洋中さまざまな味で展開し、OEMを含めると商品はさらに多岐にわたります。

「当社ではOEMのお客様の依頼に応じて、各国の食習慣や嗜好に合わせた商品を開発していますが、近年は欧米を中心にグルテンフリーのニーズが高まっています。また、日本のカップラーメンは海外で人気があり、そのジャンルでの需要獲得も視野に入れています」と鈴木さんは話します。同社では小麦粉を原材料とする各種カップ麺を製造してきましたが、グルテンフリーにも対応するために、米粉麺の商品開発に乗り出しました。

アメリカではボリュームのある商品が好まれることから、米粉を使って製造するカップ麺は、既存のレギュラーサイズ(65g)に対して、同社では初となる大容量サイズ(102g)で商品化をはかることに。その製造設備として、新たにフライ麺を大容量カップに入れるマシンを導入して生産ラインを拡充。高まるグルテンフリーのニーズに日本のカップラーメンで応えます。

プロジェクトで越える、米粉100%へのハードル

山本製粉が米粉麺を製造するための技術開発に着手したのは2022年。小麦粉は水を加えて練ると粘りのあるグルテンができ、それが麺のつなぎになりますが、米粉にはその性質がないため他の材料で補わなければなりません。米粉麺の開発は、米穀メーカーをはじめ材料を供給するメーカー各社のプロジェクトで進められてきました。

「米粉と小麦粉はまったく性質が異なります。カップラーメン用のフライ麺をつくるためには米粉の挽き方から検討する必要がありました」と鈴木さんは振り返ります。「最も難しいのは麺の成形です。つなぎになるグルテンがなければ長い麺をつくることができません。また、カップラーメンは麺を成形してすぐにフライ油で揚げる工程があるので、それに適した硬さを出さなければなりません」と言葉を続けます。メーカー各社と共に検討を重ね、立ちはだかるこれらの課題を一つずつクリアしてきました。

プロジェクトで越える、米粉100%へのハードル
プロジェクトで越える、米粉100%へのハードル

テスト機を使った小ロットの試作で米粉100%の麺ができあがったものの、それを量産ラインにのせるためにはさらに調整が必要です。特注で半年がかりで納入された実機でテストを繰り返し、試作品の改良すべき点がわかってきました。
「家庭でも調理器具が変わると最初はやりにくいのと同様に、生産も機械が変わるとうまくいかないのはよくあることです。米粉の比率が多くなればなるほど麺はつながりにくくなりますが、その課題と戦いながら量産化を進めていきます」と鈴木さんは落ち着いた声で話します。

目指しているのは、小麦粉のラーメンと同じ食感の米粉100%の麺。まずは米粉20%の麺で商品化し、次の段階で米粉100%の「カップ大盛 米粉入りポンポコラーメン 醤油味」を大容量カップで発売する計画です。

ご当地ラーメンに託す、グローバルな潜在需要

「国内でこのようなラーメンを製造しているメーカーは数十社ほど。それほど多くはありません。カップ麺を製造している企業となるとさらに数が限られてきます。そのなかで、製粉会社であることが当社の特徴です」と鈴木さんは話します。

カップ麺の材料となる米粉は米穀メーカーから調達していますが、小麦粉は自社工場で挽いています。製粉会社だからこそ、初めて扱う米粉に対しても仮説が立てやすいことは同社の強み。米穀メーカーにフィードバックしながら、つくろうとするカップ麺専用の米粉を開発してきました。

「米粉の麺ではビーフンやフォーがありますが、ラーメンかつカップ麺はまだ少なく、あったら欲しいという潜在ニーズは多いと思います。私たちは海外輸出用にベジタリアン対応などの商品を製造していますので、さらにグルテンフリー対応の要素が加われば、多方向へのマーケットの広がりが期待できます。早く米粉100%麺を完成させたいですね」と鈴木さんは開発への意気込みを語ります。

ご当地ラーメンに託す、グローバルな潜在需要

日本のグルテンフリー市場はまだ小さいものの、アレルギー対応としてのニーズはすでにあることから、米粉100%麺の可能性は大きいと見ています。グルテンフリーのニーズが高まったときに、いち早くカップ麺で応えたい。その思いが、ロングセラーのポンポコラーメンに託されています。