ご当地ラーメンの国産原料を家庭用に小売。地元から米粉の良さ・楽しさ・用途を広めて需要を刺激

愛知県・西三河地方のご当地ラーメンといえば「キリマルラーメン」。1950年に碧南市の小笠原製粉株式会社(以下、小笠原製粉)から発売されました。その小笠原製粉で、今、売れている商品が家庭用の国産米粉です。好調な販売の背景には、同社と地域とラーメンの深いつながりがありました。

地元の米・麦・大豆で、ブランド復活の恩返し

地元の米・麦・大豆で、ブランド復活の恩返し

発売当時と変わらない昭和レトロなパッケージで、幅広い年代の方々に親しまれている「キリマルラーメン」。特に地元の碧南市民の愛着はひとしおです。高度成長期に小麦粉商品の需要の高まりを受けて製造され、地元では知らない人はいないほどの人気ぶり。2000年に一時製造中止となりましたが、地元の人たちの熱い要望で2005年に1万食限りの復活を果たすと即日完売。そのクチコミが広まり完全復活を果たしました。

「『キリマルラーメン』が復活できた恩返しに、原材料は輸入小麦粉から切り替えて地元を中心とした国産を使うようになりました。碧南市の農家さんが小麦との二毛作で米・大豆を生産しているので、小麦粉に米粉と豆乳を加えて麺をつくっています」と話すのは、代表取締役の小笠原充勇さんです。復活を遂げたときから「キリマルラーメン」はその原材料に米粉を使っていたのです。

小笠原製粉は製粉業を廃業していましたが、復活を機に外注で専用の米粉の製造を始めました。このとき、さまざまな米粉を試したノウハウが、後に販売する家庭用の品質に生かされました。2020年、新型コロナウィルス感染症の流行で国民に行動制限が要請されたとき、「キリマルラーメン」の原材料の小麦粉と米粉を自社工場で小分けし、家庭用として地域で販売したところ、予想を上回る需要がありました。その好調を今も堅持し、むしろ伸ばしているのは、同社とお客様の良い関係がなせるわざかもしれません。

製造ラインの拡充で需要にキャッチアップ

小笠原製粉が販売している米粉は、「キリマルラーメン」と同じく愛知県産を主とする国産うるち米を胴搗き製粉したもの。デンプン質に傷がつかないようにゆっくり挽いた米粉は、吸水性が良く、菓子などが硬くなりにくい性質があります。

「販売するまで米粉は米粉として使うものだろうと想定していましたが、パン生地、菓子づくり、天ぷらなど、小麦粉の代用に使うことはお客様から教えていいただきました」と小笠原さんは話します。地域のスーパーの食品売場で販売したり、コロナ後は地域の祭りなどのイベントに出店し、ラーメンと並べて米粉・小麦粉を販売してきました。小笠原さんが自ら店頭陳列や接客販売するなかで、米粉についてお客様から教わることが多かったそうです。

新設備を導入し、品質と作業の効率アップを実現

「米粉って誰が使うのかなと思っていましたが、意外と皆さん使っていました。当初は小麦粉の代替として小麦粉に混ぜてパンづくりに使う方が多くいましたが、今では米粉単体でその良さを生かした使い方をする方も増えています。お菓子やピザ、カレーのルーにも適していて、特に製菓用に皆さん上手に使ってくださっています」と小笠原さん。 「私の体験でもありますが、それまで米粉を使ったことがなくても、お菓子や料理を手づくりしてみると結構楽しくて、簡単につくれておいしいんですよ。皆さんも楽しくて継続されているのだと思います」と販売が好調な理由の一端を教えてくれました。

一方の製造面では、袋詰めを1台の充填機ですべて手作業で行っていたため効率が上がらず、生産が販売に追いつかなくなりつつありました。また、小麦粉と米粉のラインを分けたいという考えもあって、今回の米粉商品開発等支援対策事業で自社工場の家庭用米粉の製造ラインを拡充。自動化で生産量が従来の2倍になり、充填機2台で懸案だったグルテンフリーへの対応も可能になりました。

新設備を導入し、品質と作業の効率アップを実現

広めたい米粉の楽しさ、製造販売で家庭の潜在ニーズ引き出す

製造ラインの拡充によって実現した新商品が、健康志向に対応した「グルテンフリー 国産 焙煎玄米粉」です。玄米を焙煎することで酸化を防ぎ、香りが良く、生食もできます。
「製菓用にも使えますし、牛乳などのドリンクに混ぜたり、粉末玄米茶としてお湯に溶いたり、料理やヨーグルトにかければ玄米の栄養が丸ごととれます」とお勧めしてくれました。

「多くの人が米粉の良さがわからなくて使えていない状況なので、伸びしろは大きいと思っています。潜在的に米粉を使いたくても、使い方がわからない、売っていないという課題があるので、食品産業として周知していく必要があります」と展望を語る小笠原さん。米粉を使っている会社がそれをすることは説得力があります。販売当初のパッケージには「米粉」とだけ書いていましたが、それでは使い方がわからない人もいるため、お菓子のイラストを入れた工夫はそのひとつです。以前はラーメンが主体だったイベントの物販でも、今では米粉・小麦粉が半分を占めるまでになりました。

「米粉は楽しみのある商品です。ただの原材料ではなく、これを買うことで家族との楽しい時間や会話が増え、エンターテインメントになる可能性を秘めています」と小笠原さん。地元から米粉を使う楽しさを発信し、その伸びしろを刺激してくれることでしょう。

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