ノングルテンの米粉麺がもたらす、至高の麺体験

「米粉商品開発等支援対策事業と出会えたおかげで、イメージしていた米粉麺を実現することができました」と話すのは、福岡県福岡市の株式会社SMJ(以下、SMJ)の代表取締役 青木栄作さん。SMJは2024年1月から、日本独自の基準である「ノングルテン」を達成した米粉麺「AO」の販売をスタートしました。「AO」は青木さんの想いの結晶でもあるのです。

すべての人にどこまでも安全で、どこまでも美味しい食事を

すべての人にどこまでも安全で、どこまでも美味しい食事を

あざやかな青色が美しいパッケージには、繊細な線で「AO」という商品名が描かれています。その線のように細く、パスタのカッペリーニのような米粉麺が封入されています。精米されたお米のように真っ白な麺は白米でつくられたもの。もう一方には玄米の米粉が用いられており、蕎麦のような色合いが独特です。香りも味わいも違うこの二種類の米粉麺が、SMJが新たに開発した「AO」です。

「『AO』はハワイ語で、光や夜明けを意味する言葉。この米粉麺が、これからの食文化、そして農家の皆さんにとっての光や夜明けになってほしいと思って名付けました。また青色は世界でも好まれていますし、私がいちばん好きな色でもあります」
もちろん自分の名前にも由来していると笑って話す青木さん。「AO」は、無添加の米粉麺。そして、なによりこだわったのが「ノングルテン」だそうです。世界の基準では、1kgあたりに含まれるグルテンが全体の0.002%にあたる20mg以下または未満、つまり20ppmを達成した食品が「グルテンフリー」と謳うことができます。ノングルテンは、許される含有量が1ppm以下という非常に厳格な基準。「AO」はその基準を満たした画期的な米粉麺なのです。

「使っているのは米粉と水、そして少しの馬鈴薯粉だけです。するするっと食べられて、まったく胃もたれしませんよ」
食事後に体が疲れたり胃もたれするのを感じた青木さんは、その原因を調べる中で、小麦粉の影響が大きいことを知ったそうです。「体調不良や疲れを癒すために食事を摂っても、小麦粉を食べているとその消化にエネルギーを取られてしまい、効率が悪いということを知りました。そこで小麦粉を使わない、グルテンの少ない食事を心がけるようになり、米粉と出会ったのです」と話します。

もともとは不動産や保険代理店業をビジネスとしていた青木さんですが、一念発起して飲食ビジネスもスタート。「私以外にも安心で安全で、健康に良い食事を求めている人は多くいるはず。そんな人たちに米粉の良さを活かした食事を届けたい」という想いで、福岡市内に「米粉天ぷら工房 天」をオープンしました。衣に米粉を使い、米油で揚げた天ぷらは、「たくさん食べても胃もたれがしない」「なによりグルテンフリーの食事ができる」と評判で、福岡のみならず海外からも来客がある人気店になりました。

「天ぷらだけでなく、もっと米粉の可能性を活用できないかと、スイーツをつくったりと挑戦を続けてきました。中でもつくりたかったのは、米粉を使った麺でした」と青木さん。ただ、食品製造は未経験。なにより製造と販売には大きな初期投資がかかります。なかなか最後の一歩が踏み出せていなかった時に、米粉商品開発等支援対策事業の存在を知ったのだそうです。

すべての人にどこまでも安全で、どこまでも美味しい食事を
苦難の道を乗り越えて生まれた、新しいブランド

苦難の道を乗り越えて生まれた、新しいブランド

「米麺の製造設備で国内トップクラスの技術力を持つ、山口県の藤井製麺株式会社と協力することができ『ノングルテンの米粉麺をつくろう』という意志は固まりました。ですが、製造設備をゼロからそろえるのには大きな資金が必要になります。本事業がなければ、AO実現に向けての一歩は踏み出せなかったでしょう」
ただ、製造設備がそろってからも、ノングルテンの米粉麺「AO」の完成までは苦難の道でした。
小麦粉を混ぜれば、グルテンの力を使って麺がまとまります。ですが、ノングルテンでは麺が固まらないのです。

「さまざまな米粉を試しましたが、麺体を適度な固さにするのは非常に困難でした。米粉が変われば水との割合が変わります。また気温や湿度によっても固さが変わるのです。固ければ設備に負担が掛かって壊れやすくなり、軟らかければ設備に生地がびっしりと付着して生産が思うように進みません。高い技術を誇り、熟練の職人でもある藤井製麺でも一筋縄ではいきませんでした」

製造現場には室温・湿度を一定に保てる環境を整備。馬鈴薯を少し足すことで麺体の状態を良好に保つことができたそうです。そうしてやっと、年間を通して安定生産できる「AO」のレシピが完成。新たなブランド「Rice noodles Lab.AO」が誕生したのです。

「AO」を通じて新たな価値を九州から世界へと提供する

「AO」はその細さも特長。さっと熱湯でほぐし、1分~1分半ほど茹でるだけで食べられます。のどごしの良い細さながら、しっかりとしたコシも楽しめます。そのままめんつゆで、ソースと和えてパスタのように、汁麺で、と和洋中問わずさまざまな料理との相性がバツグン。オープンした「AO」公式サイトでもさまざまな料理写真が紹介されており、幅広く利用できることがわかります。

「AO」を通じて新たな価値を九州から世界へと提供する
「AO」を通じて新たな価値を九州から世界へと提供する

「『米粉天ぷら工房 天』で販売を行うほか、店内の天ぷら麺をAOで提供する予定です。また日本のさまざまなレストランで『AO』を使ったメニューを提供してもらったり、シェフにレシピを考案してもらったりというコラボレーションも計画しています。品質の高い日本の米粉を使ったノングルテンの米粉麺は、おいしいのはもちろん健康にも良い。いずれは世界でも活躍できると自信を持っています」

世界の多様な食のニーズに応え、アレルギーを持った人たちにも麺食の喜びを提供する。そういった価値の創造こそが、ビジネスを通じて生み出したかったものだと青木さんは話します。
その他にも今後はさまざまな展開を考えているという青木さん。将来的には米粉の産地を九州と山口県の特定の地域に絞った特別な「AO」の生産も視野にいれているそうです。

「地産地消で生産を行うことで、地元の農家の方々に少しでも貢献したい。歴史的で保存が必要な棚田などとコラボする、地方創生にも力を入れていきたいと考えています。『AO』を通じて、生まれ育った九州、福岡に還元していきたい」
おいしく、安全で健康にも良い。そして社会の未来にも貢献する。そんな多くの価値を秘めているのが「AO」なのです。