親しみやすい“町中華”で米粉の消費拡大を目指す

親しみやすい“町中華”で米粉の消費拡大を目指す

家庭や外食で手軽に味わえる中華料理。最近は、家庭的な雰囲気の店で楽しむ「町中華」が人気を集めています。そんな町中華ブームも追い風になり、中華惣菜も人気が高まっているようです。アイワイフーズ株式会社(以下、アイワイフーズ)では、今回、米粉を使った「町中華のひとくち焼売」を開発しました。

皮ではなく、あんに米粉を使用した焼売を開発

今回開発した「町中華のひとくち焼売」は、最近人気の町中華をイメージした製品です。中心メンバーとして開発を進めたのは、デリカ事業部の川口剛也さん、池田雅紹さん、阿久津結衣さんです。
中華メニューで米粉を使うなら、肉まんや餃子の皮をイメージする人も多いかもしれません。しかし、アイワイフーズでは、焼売のあんに米粉を使用しています。

「焼売の皮は薄くて小さいので、米粉を使うには少々難しい点がありました。もし使うとしても、その量は全体の1%程度だったでしょう。それだったら、あんの部分に米粉を入れれば、もっとたくさん使えるのではと考えたのが開発のきっかけです」(川口さん)
実際、あんに加えた米粉は約3.5%で、皮に使用するよりも多く使えることがわかりました。 「全体の3.5%という割合が多いか、少ないかは何とも言えませんが、皮に1%使うよりも多く使えるのは確かです。わずか3.5%でも、大量生産すれば、将来的には米の消費拡大に貢献できるのではと考えました」(川口さん)

皮ではなく、あんに米粉を使用した焼売を開発
皮ではなく、あんに米粉を使用した焼売を開発

アイワイフーズで焼売のあんに米粉を使うのは、今回が初めての試みでした。さまざまな品種の米粉を使って試作を重ねた結果、高アミロース米からつくった米粉が最適であることがわかりました。
「高アミロース米とは、デンプンの一種であるアミロースが多く含まれているお米です。米の特徴である粘りが少ない一方で、口に入れたときのべたつき感は抑えられます。米粉をつなぎのように使うことで、ほどよくジューシーな食べごたえになりました」(池田さん)

また、今後の開発次第で米粉はもっと多く使える可能性があると川口さんたちは考えています。
「今回、米粉を使った製品の開発を初めて行ったということもあって、何もかもが1からのスタートでした。しかし、今後はこの経験を活かすことができるので、効率よく進められると考えています」(池田さん)

適材適所、絶妙なチームワークで商品を開発

開発にあたり、長年商品開発を手がけてきた川口さんがベースとなるレシピを考え、試作品を社内で検討してもらい意見を集約、改良を加えて試作を行い、意見を集めるといった作業を繰り返したそうです。
「開発や製造部門はもちろんですが、営業担当のような実際に商品と店舗をつなぐ役割を担う部署の人たちの意見も貴重です。他部署との連携には開発とはまた違った大変さがありますが、良い製品をつくるためには不可欠ですね」(池田さん)

適材適所、絶妙なチームワークで商品を開発
適材適所、絶妙なチームワークで商品を開発

入社1年目の阿久津さんも、開発に取り組んだ一人です。
「一つの商品をつくるまでに、何度も試作をしたり、他部署の皆さんに意見を聞いたり、さまざまな業務を経験できました。焼売に米粉を使うということが、最初はなかなかイメージできませんでしたが、全体の流れを把握し、レシピを調整しながら開発することは楽しく、やりがいを感じました」(阿久津さん)

阿久津さんは「町中華のひとくち焼売」のパッケージや販促物の制作も担当しています。パッケージで使用する調理例の写真を撮影したり、店頭に設置するのぼりのデザインやお米をモチーフにしたキャラクターを考えたりと、その業務は多方面にわたったそうです。

商品パッケージでは米粉が使われていることはわかりませんが、販促用ののぼりでは、商品名とともに「米粉使用」「米粉を食べて食料自給率を上げよう」といったコピーが添えられ、米粉の存在感をアピールしています。

アイワイフーズでは、経験や世代の違う人たちが、それぞれの役割を理解し製品づくりに取り組んでいます。

本社前に設置した自販機で販売スタート

こうして商品化した「町中華のひとくち焼売」。2024年2月から、アイワイフーズ本社入口に設置されている自動販売機で発売が始まりました。自動販売機では、同社の主力ブランド「冠生園」の餃子や炒飯などの冷凍食品とともに「町中華のひとくち焼売」がラインナップされています。

「敷地内の工場でつくっているので、運送コストがかからないぶん低価格に設定しています。また、地域の皆さんに、当社の製品を楽しんでもらいたいという気持ちもあります。ときには車で訪れてまとめ買いしていく人もいるようですよ」(池田さん)
今後はテスト販売を兼ねた自動販売機での動向を見て、グループ傘下のスーパーやECサイトでの販売へ展開していく予定です。また、既存の製品への米粉の使用も検討していくそうです。

本社前に設置した自販機で販売スタート
本社前に設置した自販機で販売スタート

今回の開発にあたり、アイワイフーズでは、小粒の焼売用の成形機を導入しました。これは皮とあんをセットにして焼売の形をつくるものです。
「今回のような小粒の焼売は、短時間で大量に製造できるので、効率化アップにも役立っています」(川口さん)

米粉の消費拡大を目指し、アイワイフーズではさらなる商品開発を進めていきます。