米粉入りパンで未来の食卓をより豊かに、おいしく

国内8箇所に工場を持ち、全国のスーパーやベーカリー、レストラン、カフェなどを通して質の高い多彩なパンを提供している広島県広島市の株式会社タカキベーカリー(以下、タカキベーカリー)。食事用パンや菓子パン、サンドイッチなどあらゆるジャンルのパンがラインナップに並びます。その中でも近年力を入れている商品のひとつが、米粉入りのパン。2023年度には5種類が開発されました。米粉とパン、そして私たちの食卓にどのような未来のイメージを描いているのか、営業本部営業企画室の多久美香里さんと、生産本部研究開発部の富永守さんにお話をお聞きしました。

全国から寄せられたお客様の声に応え、米粉入りパンに注力

「タカキベーカリーは、数十年前から玄米粉などを使った商品を販売しています。玄米粉ではなく白い米粉の使用を本格的に始めたのは2020年に開発・発売したミニブレッドシリーズの『米粉入りもっちりブレッド』からでした」と話すのは、商品企画を担当する多久さん。

全国から寄せられたお客様の声に応え、米粉パンに注力
全国から寄せられたお客様の声に応え、米粉パンに注力

「その『米粉入りもっちりブレッド』の開発以降、当社では本腰を入れて米粉の扱いを研究してきました。年々ラインナップを増やしています。2023年度には、米粉商品開発等支援対策事業も活用し、多種多様な米粉入りパンを開発・発売することができました。今回はその中から茨城県のつくば工場、神奈川県の秦野工場、愛媛県の松山工場でつくっている3商品をご紹介します」と話す富永さんは、新商品の商品開発から工場のラインテストまでを担当しています。

全国のスーパーで多彩な商品を販売しているタカキベーカリー。「米粉のパンをつくってほしい」という声が全国から届くようになったことが、ラインナップに本格的に米粉入りパンを追加した理由になったそうです。
「米粉を使ったパンのおいしさに興味を持たれる方や小麦粉を摂る量を減らしたいという方からのご要望も多く、『より多くの方にタカキベーカリーのパンを楽しんでいただきたい』と、本格的に米粉を使ってパンをつくるようになりました。同時期に全国のリテールベーカリーでも米粉を使ったパンを見かける機会が増えましたから、日本全体で米粉入りパンのニーズが高まっていたと言えますね」と多久さんは話します。

「米粉を使ったパンは、小麦粉だけのパンにはないもちもち感や米の甘味があります。それがお米に慣れ親しんできた日本人には味わいやすく、ファンが増えていったのかもしれませんね」と富永さん。

研究と試行錯誤を重ね、多彩な米粉入りパンが誕生

「お客様の声に応えたいと開発をスタートしましたが、商品が完成するまでは苦難の道でした」と富永さんは振り返ります。富永さんは米粉関連の論文などから情報収集することで、米粉の特性を理解することから始めたそうです。
「米粉は種類によって吸収する水分量が違うのです。水を吸収しすぎて生地がべちゃっとするものがあれば、まったく吸わずバサバサになる米粉もあり、つくりたいパンに適した米粉を選ぶ必要があるのです。最初は米粉70%のパンに挑戦していましたが、グルテンが少なく、生地ができないため、パンが膨らみにくく、焼成後につぶれやすいという問題にぶつかりました。そこで、小麦粉と米粉の割合を変えながら、米粉と小麦粉と水の最適な配合量を探っていきました」
富永さんは当初、これまでのパン開発のノウハウを活かして小麦粉を米粉に置き換えるだけでスムーズに商品開発は進むだろう、と思っていたそうですが、実際は商品ごとに試行錯誤を繰り返して最適な配合を探ることになり「毎回、ゼロからの開発と同じ苦労がありました。おかげでかなり米粉に詳しくなりましたね」と笑って話します。

研究と試行錯誤を重ね、多彩な米粉パンが誕生

「数々の苦労を乗り越えたからこそ、特徴のあるおいしい米粉入りパンをラインナップに加えることができました」と、完成度には自信があると多久さん。それぞれ目指した味や食感に最適な米粉を選び、小麦などの配合も変えていると言います。

秦野工場で製造しているのは、耳までしっとりやわらかい生地が特長のミニブレッドシリーズの新作、「国産玄米入りブレッド」。しっとりした米粉の生地はこのシリーズとの親和性が高かったと言います。水分量の多い生地で、もちもちとした食感のパンになりました。

研究と試行錯誤を重ね、多彩な米粉パンが誕生

つくば工場からは、最も力を入れている石窯シリーズの新作「石窯 国産小麦粉&米粉ロール」。ハード系のカイザーパンはもともと人気のある商品ですが、国産・米粉といった点はお客様からもご支持いただいています。そのままでももっちりした食感が楽しめますが、焼くことで切れ目の部分がカリッと焼け、米粉ならではのおせんべいのような芳ばしい香りにお餅を彷彿とさせる食感も楽しめます。「米粉のおかげで味・香りともにパンの新しい境地にたどりつくことができた、と自信を持っています」と多久さん。

松山工場製造の「米粉入りもっちりブレッド(黒糖)」は、四国限定販売。黒糖の和菓子のような香りがウリ。そのまま食べればしっとり・もっちり食感とともに口の中に薫り高い黒糖の甘みが広がります。おやつにも最適で、バターやハチミツのほか、和菓子に使うあんこやきな粉と食べるとよりおいしいそうです。

研究と試行錯誤を重ね、多彩な米粉パンが誕生
米粉入りパンが実現する「パンのある、心豊かな暮らし」

米粉入りパンが実現する「パンのある、心豊かな暮らし」

玄米粉はミネラルやビタミン、食物繊維も豊富に摂れるといわれています。また米粉特有の風味や食感も活かしながら、今後に向けさまざまな米粉入りパンの新商品のアイデアを練っている多久さん。
「米粉入りパンは、米で育った日本人の食事スタイルと相性が良いのです。パンはどうしても朝食・昼食に、と考えられがち。でもお米の香りや甘みが感じられる米粉入りパンなら、カレーをはじめ、和食のきんぴらや照り焼き、お味噌汁といった料理とも合うんです。もちろん小麦粉のみのパン同様、チーズやバターなど洋食の食材とも合わせられます。夕食にお米の代わりに米粉入りパンというチョイスも広めていきたいですね」と大きな可能性を感じていると話します。

「パンの良さは手軽であること。『朝は子どもにお米を食べさせたい』『共働きで炊飯の時間がない』といった方にぜひ、米粉入りパンを選んでもらいたい。時短でおうちご飯を充実させることができます。以前は米粉マフィンを販売していましたが、いまなら具材を工夫しておにぎりのような食べ方の提案をすればより人気が出そうなどなど、アイデアは尽きません。より多くの方に喜ばれる新しい商品をどんどん提供していきたいですね」(多久さん)

「毎回苦労していますが、少しずつタカキベーカリーに米粉をパンに取り入れるためのノウハウは蓄積しています。今後もどんどん全国のスーパーで気軽に手に入る米粉入りパンを開発し、お客様の選択肢を増やしていけるようがんばりたいと思います」と富永さんも話します。

普段の食事に米粉入りパンを採り入れてもらうことで食の選択肢が増え、日本の食事シーンが豊かに、幸せになる。そんな大きな可能性を感じていると、お二人は話してくれました。