食の新しい選択肢で日本の農家へ救いの手を

家族みんなが笑顔になれるグルテンフリーの米粉ラーメンを開発

京都府京都市の株式会社図司穀粉(以下、図司穀粉)は、昭和17年(1942年)創業の「京の粉屋」。数多くの京都の和菓子屋に高い品質の米粉を届けています。各店の伝統和菓子のレシピを熟知し、季節ごとの気候に合致した配合の米粉を届けられるのも、京都の和菓子屋と深い繋がりを持ち、長い歴史とそこで培った経験があるからこそ。そんな図司穀粉が新たに発売したのは洋菓子やパン、ピザ、お好み焼き用の米粉ミックス。図司穀粉だからこそできた開発と、そのこだわりについて代表取締役社長の図司一智さんにお聞きしました。

和菓子用米粉を得意とする製粉会社が手がける新商品とは

図司穀粉が新たに開発した米粉商品は4種類。「お好み焼きミックス」「ピザミックス」「白米 パンケーキミックス」「食パンの焼ける米粉」です。
「お好み焼きミックス」には、出汁粉などが配合され、好きな食材を混ぜるだけでおいしいお好み焼きがつくれます。さくっとした軽い食感は米粉ならでは。たくさん食べても胃もたれせず、ご飯と食べるのもアリだそうです。小麦粉と違い、生地の風味が出にくい米粉だからこそ、出汁や具材、かつお節、ソースをより楽しめるとのこと。海鮮お好み焼きが特にお勧めだそうです。
「ピザミックス」もグルテンフリーでピザを楽しんでもらえる商品です。焼くと耳までさっくり軽く、歯切れの良い生地になるのが特徴。食べやすく、米粉だけに和の食材とも相性が良さそうな、新しいピザミックスです。
「パンケーキミックス」は、バニラビーンズなども配合されているので、手軽に使うことができます。一般的なパンケーキミックスでは中がべちゃっとしてしまうことがありましたが、そういった失敗がないようしっかりふっくらと焼き上がる工夫がされています。なにより厳選されたおいしい米粉を使っているので、味には自信があると図司さん。

和菓子用米粉を得意とする製粉会社が手がける新商品とは
和菓子用米粉を得意とする製粉会社が手がける新商品とは

そして中でも最も自信を持って推したいと図司さんが話すのが「食パンの焼ける米粉」。米粉でパンをつくると、発酵がうまくいかず、膨らみが足りないということが起こりがち。逆に膨らみばかりを追求すると、バサバサの食感になってしまいます。そういった失敗の原因を究明して、パンに適した米粉を探して配合。ホームベーカリーでも失敗しない、しっかりパンが膨らむおいしいパンミックスになっているとのこと。米粉パン特有のしっとりした生地は、口に入れるとほんのり甘く、まるで溶けていくような独特の食感です。「ほんとうに米粉でつくったの?と驚く人も多いんですよ」と図司さん。

米粉で日本の米を、農家さんを救いたい

長らく和菓子用の米粉を扱ってきた図司穀粉が、どうしていま食事用や洋菓子用、そしてパンのための米粉ミックスを開発したのでしょう?
「図司穀粉は、多くの京の和菓子屋さんに米粉を納めています。ただ納めるのではなく、そのお店のレシピを理解し、それに合った配合の米粉を提供しているんです。季節によって気温や湿度が違っても、同じ和菓子がつくれるような米粉を常に提供できる。それで信頼を勝ち得てきました」と話す図司さん。
和菓子屋さん以上にその店の和菓子に精通し、いま求められる米粉を的確に提供する。そのために図司穀粉は研究ができる施設、和菓子の製造ができる設備も整えています。

図司穀粉では、新商品の提案も行い、その製造を請け負うこともあるそうです。そうやって京都の和菓子会を支えている図司穀粉だからこそ、米粉についての知見は深く、また品質についてのこだわりも強いのです。
「当社は滋賀県の農家さんと契約を結んで、質の高い米を納めてもらっています。そして、それぞれの米・米粉の特徴を知るべく、研究も行ってきました。その中で、失敗が起こりやすい米粉や和菓子は、当社で何度も試作し、失敗のたびにその原因を追究して、克服してきました」

米粉で日本の米を、農家さんを救いたい

そして食料自給率を向上させる取り組みに参加し、米の新たな用途として「洋菓子用の米粉をつくる」取り組みをスタートしたと言います。その研究の中で、米の種類はもちろん、米粉にした際のデンプンの損傷度が洋菓子の成否・味を大きく左右することがわかってきました。つまり、歴史の中で図司穀粉は和菓子に向く米粉、洋菓子に向く米粉、それぞれの特徴をつかんでいったのです。
「洋菓子用の米粉もつくって提供できるようになれば、当社としても販路が広がりますから。なにより、契約している農家さんにも還元できるようになります。それが今回、これまでとはまた違った商品を開発したねらいです」

米粉は世界で通用する実力を秘めている

米粉は世界で通用する実力を秘めている

現在、図司穀粉が使っている米粉は滋賀県産のもの。洋菓子用はさらに農家を絞り、米の品種も指定しているそうです。
「日本の米農家さんが丹精込めて育てた米は、とても品質が高いもの。だから当然、米粉の質も高い。ですが消費減が続くと、農家さんが儲からなくなってしまう。それで離農が進めば、質の高い米が手に入らなくなる。そこで私たちが米を買い取り、幅広く使える米粉として活用することで、少しでも還元したいと思ったのです。それに米は地産地消に繋げやすい。地域に貢献することにもなります」と、取り組みを始めたねらいについて図司さんは話します。

ただ、従来の米粉のパッケージの多くは、キロ単位など大きいものが一般的。つまり業務用です。広く一般家庭で使われなければ、米粉が浸透して米消費が進むという、目的が達成できません。そこで米粉商品開発等支援対策事業を活用し、少量の小分けパッケージの製造ができる機器を購入し、4つの米粉ミックスを開発したのだそうです。
「農家さんから数キロのお米を買い、その特徴を生かした少量の米粉製品をつくる。そういった小回りの利いた製造は、私たちのような規模の会社に向いている。手軽に買えて、簡単につくれ、失敗がない当社の米粉ミックスなら、例えば農家さんに使ってもらって自農園の米でパンやスイーツを製造して売ってもらうといった、農家さん単位の六次産業化のサポートもできると期待しています」と図司さんは話します。

少量パックの米粉ミックスにはそのほかにも大きな可能性を感じているという図司さん。その目は海外の人々に向いています。
「世界では国内以上にグルテンフリー食品へのニーズが高い。ですが、海外には米粉がほとんどなく、大豆やとうもろこしを小麦の代替品として使っている。そこにヘルシーだと注目を集めている米食、そして米粉が入り込む余地は大きくあると考えています」
京都には多くの外国人観光客が訪れます。彼らのグルテンフリーの選択肢はおにぎりがメイン。米粉を使えば、パンやピザといった外国人に馴染みの深い食事のほか、人気のラーメンやうどん、天ぷらやから揚げといった日本食を提供できる。そこにも可能性はあると図司さんは考えています。
図司穀粉が和菓子とともに歩んだ伝統が生んだ米粉が、世界の人々に愛される未来も夢ではありません。