地場産米粉でフォーと会津ラーメンのいいとこ取り。地産地消で新たな名産品へ

福島県の米どころ西会津町で農産物や特産品の流通を担ってきた株式会社千秋(せんしゅう、以下千秋)が、惣菜事業を立ち上げてメーカー機能を持つ商社に生まれ変わりました。商品開発の第一弾は、西会津産米粉80%の「ジャパニーズフォー」です。その開発秘話と今後の展望を代表取締役の山﨑雅夫さんに聞きました。

ラーメン好きをも唸らせる新ジャンル麺に挑戦

「ついに最終製品が完成します」と山﨑さんが見せてくれたのは、試行錯誤を重ねて開発したジャパニーズフォー。西会津産米粉80%の麺に合うスープをセットにして販売するために、同社がそうざい製造業と食肉販売業を取得したのは2023年3月のこと。西会津町の期待を背負い、およそ1年をかけて商品開発に挑んできました。

「西会津町は隣接する新潟県と気候風土も似た米どころです。人口約5,000人の町ですが、ふるさと納税返礼品の売上は2億円超え。そのうち7割はコシヒカリを主とする米が占めています」と教えてくれた山﨑さん。ふるさと納税返礼品で一番人気の西会津産米を使って、コメの消費拡大と地域活性化を目指します。
「地域には会津ラーメンというご当地麺があり、地元の方々はもとより新潟から旅行や商用で来られる方にも人気です。新たに開発した米粉麺は、あえて皆さんに親しみのある会津ラーメンに近づけました」と言葉を続けます。

ラーメン好きをも唸らせる新ジャンル麺に挑戦
ラーメン好きをも唸らせる新ジャンル麺に挑戦

米粉麺というとベトナムなどで食されているフォーをイメージしますが、千秋が開発した米粉麺は会津ラーメンそのままの見た目で、食欲をそそる黄色味を帯びた、地域で好まれる平打ち中太麺。一方のスープはフォーに寄せた鶏白湯で、会津ラーメンとの融合を目指し、鶏ささみの具材入りでお得感を打ち出しました。

販売場所は、商品企画の当初から「道の駅にしあいづ よりっせ」を想定。地場のミネラル野菜などの農産物が集まり、町民の台所ともいえる道の駅で手に取りやすいように、パッケージは麺とスープを透明のガゼット袋に入れてラベルを貼って業務用風に簡素化。できるだけ販売価格を下げ、素朴で親しみやすい商品にしたのは、地域の食の嗜好を知る同社ならではのアイデアです。

米と麺のまち、西会津町のポテンシャル

西会津町の新たな名産品を目指す「ジャパニーズフォー」。その特筆すべき点は、米にあります。山に囲まれ、粘土質の肥沃な土壌と雪解け水に恵まれた土地で、腕のある生産者たちが米づくりに励んでいます。なかでも、JAS認定有機米や減農薬米を生産し、世界的な農業認証であるグローバルGAPを取得するなど、先進的な取り組みをする橋谷田ファームが米粉の仕入れ先です。新たに開発した麺には、同農場が栽培した「亜細亜のかおり」を自家製粉した米粉を30%使用しています。
「橋谷田ファームさんの自家製粉米粉は80メッシュと粗めで、製麺には向かないのではと心配しましたが杞憂に終わりました」と山﨑さん。実はかつて喜多方市の製麺会社に勤めていたことがあり、その人脈とノウハウも今回の米粉麺の開発・製造に活かされたようです。

米と麺のまち、西会津町のポテンシャル

千秋では2022年に西会津味噌ラーメン(米粉10%)や会津北部産地域合同ふるさと納税返礼品の1品として会津山塩ラーメン(米粉10%)を商品化してきました。その実績をもとに、今回の米粉利用拡大支援対策事業で新商品の開発に取り組みました。

米粉商品を次々と、地産地消で盛り上げていく

米粉商品を次々と、地産地消で盛り上げていく

米粉を使った名産品を持続的に開発していくことがミッション。千秋では、町の空家利活用事業を活用して製造所を構え、今回の事業でレトルト殺菌機と急速冷凍庫を導入しました。「これから町の製造加工会社として機能していきます。すでに第2弾の商品として、餃子の開発にも着手しています」(山﨑さん)

千秋の代表取締役社長を務める傍ら、農産物直売所の風の丘ファーム(西会津町新郷)の運営や、合同会社まんぷく亭本舗の代表社員として道の駅のフードコートで米料理を提供するコメジローの経営にも携わる山﨑さん。「先行商品の米粉入り西会津味噌ラーメンは、風の丘ファームのみに出荷していますが、販売開始から1年半で2万食を売上げ、そのうち1万2000食を町民が消費しています」と新商品の可能性を語ります。

地産地消に振り切った「ジャパニーズフォー」で、ラーメン好きの西会津の人たちをうならせることができれば、商品開発は成功です。道の駅や直売所、外食など、販売戦略の出口は町の中にたくさんあります。麺好きの町民5,000人の胃袋をつかめば、野を越え山を越え、日本各地に広まるポテンシャルを秘めた新ジャンル麺が、ここ西会津町に誕生しました。