副副菜から食卓の主役へ。フジッコの新商品「ダイズライス」

大豆の煮豆や蒸し豆などでおなじみの兵庫県神戸市のフジッコ株式会社(以下フジッコ)が新たなビジネスの柱に、と開発したのが「ダイズライス」。お米のような見た目ですが、主たる原材料は大豆。香りや食感を米に近づけるために商品の改良を繰り返してきましたが、そのカギを握っていたのは「米粉」でした。「ダイズライス」にかけた思い、開発の苦労などを、新規事業開発部の田口敬子部長、圖子絢菜さん、木村真優さんにお聞きしました。

副副菜から食卓の主役へ。フジッコの新商品「ダイズライス」
高タンパク質・低糖質の食事が手軽に摂れる

高タンパク質・低糖質の食事が手軽に摂れる

「ダイズライス」はその名の通り、お米のような見た目の大豆食品です。大豆食品を数多く手がけてきたフジッコが開発した商品で、「Beanus(ビーナス/Bean+us)」というブランドとして販売しています。その特長は、高タンパク質で低糖質。ダイズライス1食分の150gには、タンパク質がなんと24g含まれています。同量の白米に含まれているタンパク質は3g前後なので、ダイズライスなら圧倒的に多くのタンパク質が摂れることがわかります。そして糖質は、同量の白米に比べて86%※1もオフ。その特長から、ボディメイクに取り組む人や食事制限をされている人などに好まれていると言います。

「ダイズライスを発売したのは2021年3月。これまでフジッコは佃煮や昆布加工品、そして大豆の煮豆・蒸し豆などの商品を主力として発売してきました。それらは食卓においては副副菜という立ち位置。食卓の変化にともない年々消費が減少しているのを実感していました。そこで『食事の主役となる、毎日食べられる商品をつくりたい』と新規事業開発がスタート。プロジェクトを立ち上げて、大豆を使ってお米の代わりになるような商品がつくれないかという挑戦を始めたのです」と話すのは、田口さん。

高タンパク質・低糖質の食事が手軽に摂れる
高タンパク質・低糖質の食事が手軽に摂れる

「大豆のおいしさを残しつつ、大豆を米状に加工したものは、予想以上に早くつくることができました。ただ、大豆クサい、ボソボソしている、ご飯と言えないなど、評価はボロボロ(苦笑) そこで試行錯誤を繰り返し、100以上の試作品をつくり、なんとか商品とすることができたのです」(田口さん)
ネックであった香りや食感の問題をカバーしたのは、増粘剤などの食品添加物でした。製品として完成度は高まったものの、田口さんは満足できなかったと話します。

「毎日食べてほしい!という思いから開発した商品です。できれば添加物は無い方が良いと考えました。そこで発売以降も開発を継続し、2023年3月に3度目のリニューアルを果たしました。そのカギとなったのが、米粉だったのです」(田口さん)

「ダイズライス」を次のステップに押し上げた「米粉」

木村さんは、発売後にプロジェクトに参加したメンバー。ダイズライスを使ったレシピの開発に加え、味や食感、風味の改良も進めてきました。
「香りや食感の良さは国産の米粉を使用することで、食品添加物がなくても実現することができました。そして今まで以上に食べやすくなったのです」と木村さん。国産の米粉を使うことが、大豆由来の風味を消し去り、また、その特長である粘りが活躍し、よりお米の食感に近づいたそうです。
「ライスと言われると、無意識に米感を探してしまうもの。国産の米粉を使用することで、その感覚も満たすことができました」と木村さんは話します。

「ダイズライス」を次のステップに押し上げた「米粉」

「国産の米粉を使うことは、もうひとつメリットがありました。安定供給が可能なことです。昨今、コロナなどで世界情勢は急速に変化しています。物流や生産が不安定では、コンスタントに食卓に届けることができない危険性があります。国産の米粉ならその心配はありません。こうして2023年1月に念願の“無添加”のダイズライスが実現しました。これで開発は一段落。ダイズライスは、やっとスタートラインに立つことができたのです。そのタイミングで米粉商品開発等支援対策事業の存在を知りました。対策事業がダイズライスの背中を力強く押してくれました」と田口さん。

「ダイズライス」を次のステップに押し上げた「米粉」

イメージしていた理想に近いダイズライスが遂に完成。並行して開発したレシピは、約100種類にもなっていました。そこで田口さんが考えていた次のステップが「拡販」でした。対策事業はダイズライスの拡販の大きな原資となり、推進力にもなったと、マーケティングや広報を担当している圖子さんは話します。

「これまでもインターネット広告にはかなり力を入れていましたが、さらに多くの広告を投入することができました。まだまだ世の中に知られていない商品なので、SNSや検索結果などで商品名や画像が目に入って知ってもらうことはとても重要です。また、今後はダイズライスをより多くの人に手に取ってもらえる活動を積極的に進めるため、店頭での販売も計画しています。そのため、お客様に商品の特長をより魅力的に伝えられるパッケージデザインを現在考案中です」(圖子さん)

お米に代わる「新たな主食」を目指して

これまでもフィットネスジムやクリニックなどさまざまな場所で試食会を実施してきたダイズライス。そのどこでも好評を博したと田口さんは話します。例えば、ボディメイクのために高タンパク質で低糖質の食事を心がけている方にとって、白米はNG。一方で、赤身肉や鶏のむね肉といった食事が多くなり、食の選択肢は狭まってしまいます。そんな方にも、ダイズライスならご飯の代わりに食べてもらうことができます。お米は食べたいけれど病気などで糖質制限をしている方、タンパク質を摂りたいけれどお肉はたくさん食べられない高齢者の方、そしてベジタリアンやヴィーガンの方のニーズにも、ダイズライスはフィットします。

「発売して3年、さまざまな場所でPRを行ってきましたが、ダイエットやボディメイク、食事制限など『目的ある人に選ばれ、喜ばれる商品だ』という実感を得ています。今後もそういった方々へアピールを続け、定着を図りたいと思います」(田口さん)

お米に代わる「新たな主食」を目指して
お米に代わる「新たな主食」を目指して

現在はネットでの販売のみですが、「いつかは海外でも販路を開拓したい。認知度が深まり、『新しい主食』として世の中に定着したダイズライスが、スーパーなどで気軽に買えるようになったらうれしいですね」と田口さん。フジッコの新しいビジネスの柱として、そして「お米に変わる主食」として、ダイズライスが成長するのを夢に見ていると話してくださいました。

(※1)「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」うるち米(水稲めし・精白米)とダイズライスプレーンの比較