庄内の恵みで米粉の洋菓子を再定義、グルテンフリーは付加価値になる

山形・庄内地域の米粉でつくるグルテンフリーの洋菓子「COMERU」が、オンライン販売を促進するためにリブランディングを実施。新たな商品開発方針で2023年、庄内を中心に山形特産の旬のフルーツなどを使った季節限定のスイーツコレクションで4フレーバーを展開。全種完売の人気ぶりです。

WEBとの相性に着目、米粉のスイーツに参入

2024年2月1日、山形県酒田市にファクトリー兼店舗の新装オープンで「COMERU」のリブランディング施策は一段落。引き渡しを終えたばかりの店舗に、運営会社のカムコミュニケーションズ株式会社(以下、カムコミュニケーションズ)代表取締役の内橋良介さんの姿がありました。

WEBとの相性に着目、米粉のスイーツに参入
WEBとの相性に着目、米粉のスイーツに参入

普段は東京にいてリモートで経営をしている内橋さんは、IT企業で培ったWEBの知識を使って衣食住関連のビジネスに参入しようと譲渡先を求めている企業を探し、最終的に残ったスイーツの領域で同社と出会ったそうです。
「『COMERU』は酒田市で煎餅を製造する老舗企業の一事業として立ち上がった洋菓子事業部が、13年前にスピンアウトしたブランドです。米粉やグルテンフリーなどの特徴とオンラインの相性の良さにポテンシャルを感じました」と内橋さん。今から3年半前の2020年夏に同社を買収して代表取締役となりました。

譲渡を受けた当時の「COMERU」では、その特徴である米粉の洋菓子であることやグルテンフリーを打ち出せていなかったため、内橋さんはWEBでのマーケティングを鑑みてリブランディングに着手。約1年かけて商品のパッケージやロゴなどを見直し、2022年1月に現在のデザインへ刷新しました。次に取り組んだのが、ブランドを象徴する新商品の開発です。

マーケットは県外、土地の良いもので商品にストーリー

「商品パッケージやロゴをつくり変えたタイミングで、商品開発の方針を新たに定め直しました」と内橋さんは振り返ります。オンライン販売のターゲットは東京都内をメインとする県外のお客様であることから、そこに提供できる付加価値やストーリーを改めて考えたそうです。

マーケットは県外、土地の良いもので商品にストーリー
マーケットは県外、土地の良いもので商品にストーリー

「米どころの庄内でつくっているお米や季節のフルーツなど、この土地の良いものを使って商品開発をしていくことをリブランディングで決めました」と内橋さん。定番商品の庄内産はえぬき米粉100%のバウムクーヘンとロールケーキを、庄内・山形のフルーツなどの作物を使って季節限定の商品として出していく方針を打ち出すと、今回の米粉商品開発等支援対策事業を活用して4フレーバーの新商品を開発。2023年に季節限定スイーツコレクションとしてWEBで展開しました。

春のいちごは、庄内を主産地のひとつとする山形県のオリジナル品種の「おとめ心」。初夏のさくらんぼは山形を代表する品種の「佐藤錦」。夏から秋にかけては庄内地方の特産品の枝豆「だだちゃ豆」。秋冬は洋梨の「ラ・フランス」で、目にもおいしくリブランディング。バウムクーヘンは冷蔵商品として、ロールケーキは冷凍商品として、酒田市のファクトリーから発送しています。

「リブランディング前にも季節商品はありましたが、商品開発の方針はなく、単にその季節の旬のものを使うだけでした。ブランドのコンセプトに沿って商品開発をすることが大事だと思います」と内橋さんは話します。

製造面では、これまでもOEMを含めていろいろな商品をつくってきたスタッフのノウハウがあったものの、フルーツは水分量が多いため焼成の難しさは常にあります。また、内橋さんがリクエストしたのは、ロールケーキの生地に混ぜた果肉とクリームにつけた果汁の味のバランスです。特にだだちゃ豆のロールケーキでは、クラッシュした豆の粒の大きさと塩加減まで、細かく試食して決定しました。
「素材の味を受け手がしっかり感じられる商品に仕上げたいと思っています」とこだわりの意図を語ってくれました。

地域ビジネスに商機、スイーツ領域で高まる米粉の存在感

「COMERU」のリブランディングで感じた米粉の可能性を内橋さんに聞いてみました。 「お菓子でいえば米粉は小麦粉と遜色がなくなっています。ここでグルテンフリーを打ち出しても良いのではないでしょうか。健康意識の高まりもあって、都内で販売イベントをするとグルテンフリーということで手に取るお客様も少なくありません」と内橋さん。
所説ありますが、米粉がもたらす健康面での効果についてエビデンスもそろいつつあります。「特にCOMERUの商品はギフト利用を前提としているので、贈る人への気遣いとして健康的なものを選ぶために米粉だからできる部分もあると感じています」と言葉を続けます。

地域ビジネスに商機、スイーツ領域で高まる米粉の存在感

会社を承継するまでは東北に足を踏み入れたことがなかったという内橋さん。軸足は東京に置き、外から地域を見ることで感じられる土地の良さやポテンシャルもあります。
「地方の会社が生き残るための付加価値のつくり方として米粉を使うことはアリだと思います。最終的に世界に受け入れられるお菓子をつくるようなことをやっていきたいです」とビジョンを語ってくれました。