フルーツ専門店が周年記念で挑んだ焼菓子、果物の香り引き立つ米粉入り生地

2024年は、青木商店株式会社(以下、青木商店)設立100周年。同社の洋菓子ブランド「フルーツピークス」が誕生して20年。記念すべき年を彩る新商品の開発プロジェクトが、2022年秋に立ち上がりました。

創業100周年、ブランド誕生20年を彩る新商品

1924年、初代が福島県の郡山駅前に開業したバナナ問屋が青木商店のはじまり。以来、果物卸からフルーツ専門店へと業態を変え、カフェやバーを展開しながら果物のある暮らしを創造してきました。なかでも、フルーツタルト&カフェ専門店の「フルーツピークス」は、フルーツタルトをはじめとする同社の洋菓子を代表するブランドです。

「洋生菓子に加えてお客様が手に取りやすい焼菓子を充実させることで、より多くの人にフルーツのおいしさを届けたい」と、同社執行役員でフルーツタルト&カフェ事業部部長の古川光浩さんは今回の商品開発の思いを語ります。

創業100周年、ブランド誕生20年を彩る新商品
創業100周年、ブランド誕生20年を彩る新商品

タルト生地を自社で製造する同社でも、クッキーなどの焼菓子を商品化した事例は少なく、ましてや生地に米粉を使用するのは今回が初めて。「フルーツキャラメルサンドをつくろうと話が決まってから商品化するまで1年以上かかりました」と、商品開発を推進してきた同事業部マネージャーの菅野雅子さんはその難しさを滲ませます。

生地の材料として米粉を選んだ理由について、「もともとの商品コンセプトとして、とろっと濃厚なフルーツキャラメルソースをミルクチョコレートに包み、サクサク生地のクッキーでサンドするという方向性がありました」と古川さん。生地に軽やかな食感を与える米粉をどう活かすかがレシピ開発での焦点のひとつとなりました。

菅野さんは、「クッキー生地は米粉の割合が多くなるほど焼成後の形を保ちにくくなったり、こんがりとした焼き色がつきにくくなり、失敗も多く重ねてきました」と、試作段階での課題を話します。小麦粉と米粉の配合を調整しながら目指す食感に近づけていきました。

フルーツ感とサクサク感の黄金バランスを追求

クッキー生地と同時に開発を進めてきたフルーツキャラメルソースは、フレーバーにパッションフルーツとラズベリーを選定。「チョコレートと米粉のクッキーと最も相性が良かったのがこの2種類。甘いだけではもの足りない味になります」と古川さん。「キャラメルソースには、酸味と香りがある果物が合うと思います」と菅野さんが言葉を続けます。

「フルーツキャラメルソースの開発で難しかったのは粘度の調整です。チョコレートでコーティングするため、ゆるすぎず、とろっとした食感を残すには硬すぎない粘度に仕上げなければなりません。これからも気温に応じてさらにレシピを変えていく必要があります」と古川さん。
菅野さんもまた、「パッションフルーツとラズベリーのソースは粘度の出方が違うので、ラズベリーでようやくうまくいったレシピが、パッションフルーツでもうまくいくとは限りません。試作をするたびに調整しなければなりませんでした」とその難しさに言及します。

フルーツ感とサクサク感の黄金バランスを追求

フルーツのおいしさに妥協を許さないのが専門店である同社の信条。フルーツキャラメルサンドの開発でも細部にわたってこだわっています。おいしさを感じるサイズから生地の厚みまでミリ単位で調節を重ね、米粉入りクッキー生地とチョコレートコーティングしたフルーツキャラメルの厚さはほぼ均等で直径5cmに決まりました。

「米粉入りのクッキー生地がさらっとした味わいなので、フルーツの香りがより引き立って感じられるのは新しい発見でした」と菅野さんが今回の新商品開発で得られた知見を教えてくれました。

量産化の壁、超えた先に見えた米粉と果物の可能性

量産化の壁、超えた先に見えた米粉と果物の可能性

新商品のフルーツキャラメルサンドは、同社パティシエの菊池健二さんを中心とするフルーツピークス新商品会議のメンバーが商品開発を手がけ、同社工場のタルトファクトリーのスタッフが製造立案した一大プロジェクト。より多くの人にフルーツのおいしさを届けるために超えなければならないのが量産化の壁です。菅野さんは、フルーツキャラメルサンドを製造する機械を探すところから携わり、パティシエ、工場長と共に全国の機械メーカーを訪ね、レシピが変わるたびにうまくいくまで試作を繰り返してきました。

古川さんは「フルーツピークスのメイン商品に育てたいと思っているので、味の妥協は絶対にしたくなかった」と言います。「ちょっとした味の調整で機械の設定が振り出しに戻ることもしばしば。古川さんの改良提案との戦いもありましたね」と菅野さん。今では笑って話します。
米粉入りのクッキー生地には、フルーツピークスのロゴを型押し。それもロゴだけでいいのか、ブランド名を入れるのか、商品名を入れるのか、最後まで議論して社員100人のアンケートで決めたそうです。

こうして、こだわり抜いたフルーツキャラメルサンドがついに発売されます。まず地元の郡山の人に喜ばれ、手土産やギフトで全国へ届けたいというのが開発者たちの思いです。
「新たな機械を導入して挑んだプロジェクトですから、これを機に焼菓子のアイテムを増やしていきたいですね。米粉はフルーツの香りを引き立てます。また将来的にはアレルギー対応の商品もつくっていきたいと思うので、より多くの人にフルーツをおいしく届けるために米粉は不可欠なものになるでしょう」と古川さんが展望を語ってくれました。

フルーツ感とサクサク感の黄金バランスを追求