たくさんの人の笑顔をつくる、エニクック発の自社製品

さまざまな企業ニーズに応えてOEM(委託生産)やPB(プライベートブランド)でレトルトや冷凍の食品を開発・製造している福岡県筑紫野市の合同会社エニクック(以下、エニクック)。自社独自の200種類以上にもなるレシピを保有し、抽象的なものから老舗の味の再現まで、さまざまなオーダーに柔軟に応えています。そんなエニクックが、初となる自社ブランド商品「KOMEKO 米粉カレー」を開発しました。そこには代表社員である山田福士さんの、地元への愛と情熱が溢れていました。

培った経験とノウハウを活用して、初めての自社製品開発に挑戦

エニクックはこれまでさまざまなレトルト食品や冷凍食品のOEMやPB商品の開発を請け負ってきました。パスタソースや煮込み料理、レトルトカレーなど、その種類はとても多彩。内容も、ホテルや料理店の味を再現したレトルト食品から、イベント用のオリジナル商品までさまざま。自社でも200種類以上のレシピを開発していて、例えば「他にはない変わったレトルトをつくりたい」というような抽象的なオーダーにも、しっかりと応えています。

「もともと大手食品会社で勤務していたのですが『味にこだわってつくりこんだオリジナル料理のレトルト食品を小ロットでオーダーできれば、もっと積極的にチャレンジができるのに……』というお客様の声を聞くことが多く、そういった方の要望に応えてビジネスのお手伝いができれば、とエニクックを立ち上げました」 そう話す山田さんには、食への熱い思いがあります。SDGsの中でもフードロス削減の取り組みに力を入れたり、農産物の地産地消を押し進めたり、常に「食品事業を通してより良い未来がつくれないか」と考えています。

培った経験とノウハウを活用して、初めての自社製品開発に挑戦
培った経験とノウハウを活用して、初めての自社製品開発に挑戦

そんなエニクックが米粉商品開発等支援対策事業を活用して、今回初めて自社ブランドのレトルト食品の開発・販売にチャレンジしました。 「きっかけは、自分が小麦粉アレルギーだと気づいたことです。重度ではないのですが、小麦粉を使った食品、例えば大好きな豚骨ラーメンやカレーを食べると顔に発疹ができてしまいます。そこからグルテンフリーについて調べ、考えるようになり、今回は米粉を使ったカレーに挑戦することにしました」
実績も設備も、そして経験も豊富なエニクック。使っている小麦粉を米粉に替えれば商品は完成するだろうと思っていたそうですが、完成への道は想像以上に険しかったと山田さんは苦笑いを浮かべます。

生まれ育った愛着ある筑紫野市から誰もが楽しめるおいしいカレーを

レトルトカレーの小麦粉を同量の米粉に替えたところ、とろみが思ったように出なかったと話す山田さん。そこで最適なとろみが出せるように米粉の配合を調整していったそうです。
「グルテンフリーのカレーを目指していたので、醤油も使えないんです。醤油には小麦粉が含まれているんですよ。醤油に変わる調味料を探したり、使わずともおいしいカレーを試作したりと、かなり難航しました。いくつも試作して、スタッフとも協議して、やっと『KOMEKO 米粉カレー』が完成しました」

創立から10周年を迎えるエニクック。その初となるオリジナル商品ということで、スタッフの皆さんの思いも強く、議論も白熱することが多かったそうです。だからこそ納得できる味になったと山田さんは話します。

生まれ育った愛着ある筑紫野市から、誰もが楽しめるおいしいカレーを

「今回は九州産にこだわっています。野菜も地元農家さんがつくった規格外品、つまり味はおいしいのに、カタチや大きさが基準を満たさず市場に出回らない、廃棄されてしまうもったいない野菜を使っています。同様にお米も地場のものを米粉にして使おうと決めていました。ですが、その米粉にするお米を分けてもらえる農家さん、そして米粉に製粉してくれるところを探すのに苦労しました」

つくった商品は、自分が生まれ育った愛着のある福岡県の、そして筑紫野市の、名物ともいえる存在になってほしい。そのためにはたくさんの人に食べてもらいたい。だからこそ、安定して米粉を供給してもらえる農家さん探しは大変だったそうです。山田さんは紹介や訪問を繰り返して、なんとか供給先と製粉会社を見つけたそうです。

レシピ開発の裏で、生産性に気づきあり

たくさんの人、そして地元の農家さんに貢献できる商品をこれからも

「小麦アレルギーを持っている子どもたちにも食べてほしくて、辛さは控えめです。化学調味料や着色料、保存料も使っていません。野菜も地元産で、安心・安全なカレーになりました。パッケージの完成前に試験販売しましたが『カレーが食べられる!』と小麦アレルギーを持つ方にも喜んでいただけました」と評判は上々という山田さん。
製造には本事業を活用して購入した殺菌ができる機器や重量を量る機械、金属探知機といった新しい製造機器を使っているそうです。
「安心・安全なカレーを楽しんでほしいので、それを実現できるラインを設けました」と山田さん。工場内のレイアウトも、最初に小麦粉を使用しない米粉カレーを製造するよう変更したため、グルテンフリーも達成できました。

パッケージの完成後は、引き続き地元駅の販売所で販売するほか、お客様のECサイトや一般的な通販サイトでも手に入るようになるそうです。
「自分のように小麦粉アレルギーがあると、大好きなものが食べられなかったり、みんなと同じものが食べられなかったりということがあります。そういった寂しい思いをする人を減らしたい。この米粉カレーがその一助になればと思っています」

さらに、地元の農家さんに貢献することも、より追求していきたいと山田さんは話します。今後は材料の確保に努めて、筑紫野市産の食材だけで米粉カレーを生産するのが目標だそう。まずは万人受けするカレーで初めての自社製品を開発したエニクック。今後もたくさんの人と地元の農家さんのためになる商品を開発していきいと、山田さんはさらなる情熱を燃やしています。