米粉の魅力と可能性を、もっと多くの人に知ってもらいたい

米粉をはじめ多くの素材に九州産を使用し、地産地消にこだわった製品づくりをしている株式会社SAKU(さあく/以下、SAKU)。グルテンフリーの米粉パンやスイーツは、小麦アレルギーを持つ人やヴィーガンを実践する人たちを中心に、リピーターの輪を広げています。今回は、代表取締役の齊藤久美さんに、「グルテンフリー食パン」開発のきっかけや米粉の魅力・可能性についてお聞きしました。

おいしい米粉パンが見つからない…。それなら自分でつくってみよう

齊藤さんが小麦に対してアレルギーを持っていると知ったのは、7年ほど前のことです。それまでは普通に小麦のパンや麺類を食べていましたが、長年かゆみなどの肌トラブルに悩まされていたそうです。
「病院で診察してもらっても、ストレス性の皮膚炎といわれ、飲み薬や軟膏を処方されるばかりでした。そんな状態が8年ほど続いていた時に、血液検査で小麦にアレルギーがあるとわかりました。当時は私自身も『あのかゆみは小麦が原因だったの!?』と驚くばかりでした」と振り返ります。

培った経験とノウハウを活用して、初めての自社製品開発に挑戦

不調の原因が判明した齊藤さんは、それから小麦由来の食品の摂取を控えるようにしたそうです。しかし、ご飯中心の食生活を送る中、軽めの食事にと米粉パンを食べてみたところ、その味わいに違和感を覚えたそうです。
「当時は九州で米粉パンを販売しているお店が少なくて、やっと手に入れたものでしたが、食べてみるとお餅のようでした。さらに温めすぎると固くなってしまい、おいしく味わうことが難しかったのです。九州以外からも米粉パンを取り寄せて食べてみましたが、どれも今ひとつで…。これはパンじゃない!と思ってしまいました」
そこで齊藤さんは「大人になってから小麦アレルギーになったので、小麦のパンの味を知っている自分なら、おいしい米粉パンをつくれるのでは」と考え、自分で米粉パンをつくることを決意します。
パンづくりの経験がなかった齊藤さんですが、“パンとはこうあるべき”という先入観がなかったぶん、開発に没頭できたと話します。

そして約2年かけて「グルテンフリー食パン」が完成。2020年に「グルテンフリー食パン」の販売を開始すると、齊藤さんは「グルテンフリーでおいしい米粉パン」を求めている人が多いことを改めて感じたそうです。

ニーズの高まりを受けて、いつでも購入できる体制を整備

ニーズの高まりを受けて、いつでも購入できる体制を整備

今回、SAKUでは「グルテンフリー食パン」のパッケージをリニューアルし、これまでよりも大きく“GLUTEN FREE & VEGAN”と表示するデザインにしました。また、これまで商品名を印刷したシールを手作業で袋に貼っていたそうですが、パッケージに印刷することで製造工程も効率化できたそうです。

さらに宮崎県にある製造工場に、ストック用の冷蔵庫を新たに導入しました。「米粉パンは冷凍で長期保存が可能なので、まとめ買いする人や大口購入の依頼にもフレキシブルに対応できるように体制を整えました。お客様が“食べたい・買っておきたい”と思った時に、品切れで手に入らないといったことがなくなると考えています」(齊藤さん)

福岡市内にある「PON Q PON 福岡博多店」では、「グルテンフリー食パン」を使ったサンドイッチ(※1)も販売しています。地元で採れる季節の野菜やスモークした鶏ハムなどを使ったサンドイッチは、見た目以上に食べごたえがあり、満足感を得られると評判も上々だそうです。 齊藤さんは「軽くトーストしてシンプルに味わったり、いろんな素材をはさんでみたりと、さまざまな楽しみ方ができるのは、どんな素材とも相性が良い米粉パンの魅力の一つですね」と手ごたえを話してくれました。
※1:サンドイッチで使用する具材はヴィーガンでないものもあります。

ニーズの高まりを受けて、いつでも購入できる体制を整備
さまざまな場面で米粉の魅力を積極的に発信したい

さまざまな場面で米粉の魅力を積極的に発信したい

米粉100%の「グルテンフリー食パン」をはじめ、米粉を使ったパンやマフィンの開発に取り組んでいる齊藤さんに、今後の展望を伺いました。
「食のバリエーションを増やすために、米粉を使ったハード系のパンを開発したいと考えています。米粉マフィンは新しいフレーバーを増やしていきたいですね」

また商品開発の一環として、イベントや贈り物に使える品もつくっていきたいそうです。
「まだ試作段階ですが、学校行事などで使える品を検討しています。これは食物アレルギーのある子どもも、そうでない子どもも、『みんなで同じものを味わってほしい』という保護者からの要望を受けたものです。数としては少ないかもしれませんが、そうしたニーズにも応えていきたいですね」と話してくれました。

齊藤さんは日本のお米を活用した製品を、海外にも積極的に発信していきたいと話します。以前、九州の物産を紹介するイベントでマカオへ行った際、米粉パンやスイーツをSNSで発信したところ、大きな反響があったそうです。しかしその一方で、『パンをわざわざ温めて食べるのは面倒』と考える人がいることを知ったと言います。
「『温めたほうがおいしい』と説明しても、現地の食習慣にないものは、うまく伝わりませんでしたね。そんなこともあり、今後はさまざまな機会を通して米粉の特性やおいしさを積極的に発信し、多くの人に米粉の魅力を知ってもらいたいと考えています」と話してくれました。

さまざまな場面で米粉の魅力を積極的に発信したい