和粉の老舗ブランド、米粉商品のアップデートで新規用途の需要にリーチ

玉三白玉粉をはじめ、きな粉、だんご粉などの和粉を幅広く製造・販売する川光物産株式会社(東京都、以下川光物産)。そのイメージをガラリと変えた新規用途の米粉の商品開発で新たな顧客層の開拓へ乗り出しました。営業と製造の両面から米粉商品の展望を聞きました。

雑貨のようなパッケージで新たな層へ訴求

2023年秋、川光物産は新商品の「小麦粉の代わりに使える米粉」を販売開始。同時に大豆粉、オートミール粉を発売して新規用途の穀物粉3種類をシリーズとして展開しています。そのなかでも、米粉はスーパーの自然食品・オーガニックのコーナーや業態で採用されるなど、同社に販路の広がりをもたらしました。

販売が好調な理由のひとつが、パッケージのデザインです。同社では10年ほど前から新規用途の米粉を販売していますが、今のニーズに合わせて商品自体や販売手法を見直したのが、この「小麦粉の代わりに使える米粉」です。同社営業推進部課長の小川誠さんは、「私たちは主に和粉を扱っているため、玉三といえば昔ながらのレトロなパッケージが浸透しています。今回、開発担当者と話し合い雑貨屋さんに置かれている商品をイメージしました」と開発の意図を話します。

雑貨のようなパッケージで新たな層へ訴求

「スーパーの棚割りにも米粉が必ず入るようになり、お客様の認知度も上がっています。そこで陳列棚が見慣れた風景にならないように米粉商品に新規性を持たせる必要がありました」と話す小川さん。売場での新しい見せ方として考えたのが、他の穀物粉とのシリーズ化による同時展開です。3種類がそろって陳列棚に並ばないとしても、セールス面での相乗効果が期待できます。さらに、1袋200gの小容量パックにしたことで、手に取りやすく、使いやすい商品となり、米粉を試してみたいという潜在ニーズにリーチしたことも好調を後押ししています。

営業からの情報を受けて、製造部門では米粉商品の拡販をバックアップするために生産力の向上が話し合われました。同社工場のうち、内守谷工場(茨城県常総市)と松戸工場(千葉県)で機械・設備の更新がはかられました。内守谷工場長の石塚厚さん、松戸工場の工場長補佐の大熊弘一さんにも話を聞きました。

新商品の開発に合わせて製造もアップデート

新商品の開発に合わせて製造もアップデート

川光物産の内守谷工場は、100gから1kgまでの小分け包装をする工場です。同工場長の石塚さんは、「今回、充填システムと包装機を新規導入し、自動化を進めて生産性の向上をはかりました。当工場で米粉商品をつくるのは初めてですが、従来の米粉商品は手詰めに近い方法で製造され、生産量が限られていたため、3~4倍の生産能力になります」と、今回のアップデートについて話します。石塚さんはまた、「一昔前と比べて今の包装機はDX化が進んでいて、より環境に配慮した商品づくりにもつながっています」と商品の価値向上にも言及します。

従来の米粉商品を製造していた松戸工場では、新商品の開発で生産体制を見直しました。「米粉商品の需要拡大に向けて、家庭用の新商品に対応できる設備を入れ、同時に学校給食などの業務用の商品群でも効率化をはかりました」と同工場長補佐の大熊さん。米粉というものを上司とともにもう一度考えるきっかけになったと言います。

製造面でもアップデートされた米粉の新商品「小麦粉の代わりに使える米粉」には、新規需要創出に向けたいくつかの工夫が凝らされています。例えば、パッケージに米粉の用途をイラストで入れてたこともそのひとつ。さらに、パッケージ裏面に掲載したレシピは、初めて米粉を手に取る人にはうれしい情報です。

新商品の開発に合わせて製造もアップデート
新商品の開発に合わせて製造もアップデート

「これまで小麦粉が当たり前だったところに米粉を使ってみるという商品なので、お客様をフォローできる情報をできるだけパッケージに盛り込みました。レシピは社内でストックしてきたものがありますし、これからもスーパーさんや業務店さんへの提案を通して日々蓄積してお客様にお伝えしていくことが大事だと思っています」と営業推進部の小川さんが、同社の強みの一端を話してくれました。

「玉三」の信頼と安心で、米粉の消費拡大に貢献したい

老舗ブランドとしてさまざまな穀物粉を扱ってきた皆さんに、米粉の可能性と今後の抱負を聞いてみました。

「内守谷工場で扱うでんぷん類は気候変動により豊作・不作の差が著しい中で、米粉が主力商品となれば工場の安定稼働にもなります」と石塚さん。「離乳食や介護の嚥下食など、その用途を広めていくことで消費拡大につながればと思います」と言葉を続けます。

「もともと白玉粉から関連商品を増やしてきた当社としては、新規用途の米粉を製法も含めて深めていくことで、穀物粉全体の拡販につながるものとして期待しています」と大熊さん。「安定供給はメーカーの務め。品質の安定にもこだわっていきたい」と抱負を語ってくれました。その方針に基づいて、新商品の米粉には新潟県産の良質のうるち米を使用しています。

「玉三」の信頼と安心で、米粉の消費拡大に貢献したい

営業の小川さんは、「和粉のイメージが強い当社を、ホットケーキやシチューなど洋風な用途の米粉から知っていただけるチャンスだと思います。逆に玉三ブランドへの信頼で米粉を選んでくださるお客様もいるでしょう。その相乗効果で米粉の消費拡大に貢献していきたい」と話してくれました。
新商品に刻まれた玉三のロゴが、お客様と同社をつないでいきます。