多様化するニーズを捉え、将来を見据えて製品開発に取り組む

関東や東海エリアのスーパーで、麺類を中心としたデリカ食品を展開している株式会社デリモ(以下、デリモ)。同社では、消費者が求めているものは何か、それにどんな製品で応えていけるかを常に追求しながら、製品開発に取り組んでいます。今回、米粉をブレンドしたパスタを開発し、2023年秋から4~5種類を展開しています。同社で初となった米粉を使ったパスタについて、開発の経緯や今後の展望をお聞きしました。

多様化するニーズを捉え、将来を見据えて製品開発に取り組む
米粉をブレンドしたパスタの開発を目指す

米粉をブレンドしたパスタの開発を目指す

スーパーのデリカコーナーで、そばやうどん、ラーメンなどの麺製品を展開しているデリモ。数年前から販売している「押し出し生パスタシリーズ」は、デリモでも人気の高い商品です。今回開発した米粉入りパスタもこのシリーズの一つです。

デリモでは毎年商品を見直してブラッシュアップを重ね、新たなおいしさを消費者に届けています。今回の米粉を使ったパスタも、2023年秋から各地のスーパーで販売を開始しています。

麺の製造については豊富な経験とノウハウを持つデリモですが、米粉を使用したパスタづくりは初めての試みだったと代表取締役専務の栗田慶太郎さんは話します。
「全国規模で米や米粉の消費拡大を目指す中、当社でも何かできないかと考え、パスタに米粉を使えるのではという案が出たのが開発のきっかけです。そしてさまざまな資料や他社の事例を参考に検討を重ね、今回の支援事業を活用して小麦粉に米粉をブレンドしてパスタ用の生地をつくる設備を導入しました。今回開発した米粉入りパスタは、製品によって多少異なりますが、10%前後の米粉が使われています」

デリモで製造しているパスタは、押し出し式のマシンを使って独特の弾力をつくり出しているのが特徴です。今回、パスタに米粉を加えたことによって、ほど良い弾力の中に米粉のしなやかさが加わり、新しい食感と味わいが生まれたそうです。

もっと良いものがつくれる。米粉の可能性に期待

米粉入りパスタの開発には、経験豊富なデリモでも多くの課題があったそうです。その一つが米粉調達の難しさでした。
栗田さんは開発当初を振り返り「当社には長年培ってきた麺づくりのノウハウがありますから、ゼロからのスタートではありませんでした。しかし、使用する米粉の品質にばらつきがあると、パスタの仕上がりも一定ではなくなります。計画通りの製品をつくるためには、品質の整った米粉を調達する必要があり、それにはとても苦労しました」と話します。

何度も失敗を乗り越え、実現した初めてのスイーツ
挑戦を通じてつかんだ米粉の可能性。夢はより大きく

パンや麺に使われる米粉には、粒度や水分含有量などについて細かい基準や区分がないため、品種や製粉工程によって精度が異なる製品ができてしまう場合があるそうです。
「私たちのように大量に米粉を使用する場合、ある程度品質が揃っているものを調達しなくてはなりません。これは原料となる米や米粉の品質の善し悪しとはまた違うものです。一定の精度を持つ米粉であれば、加工技術を工夫して調整を加え、良い製品をつくることが可能だからです」と話します。

デリモでは、すでに来年度に向けた製品開発が始まっているとのこと。米粉パスタに関しては、米粉の配合割合や麺の形状などを検証し、ソースや具材を調整しながら、新たな製品づくりを進めています。
「私たちは今回、初めて米粉と向き合って製品開発に取り組み、さまざまなことを学びました。今回の経験を来年度以降の商品開発に生かしていけば、お客様にもっと良いもの、おいしい製品をお届けできると考えています」とも話してくれました。

最適なタイミングで商品を提供できるよう開発を続ける

米粉を使った製品開発の手ごたえと、これからの米や米粉の可能性について、栗田さんに訪ねました。
「今回はパスタに米粉を使ってみましたが、もしかしたらもっと適正のある素材が見つかるかもしれません。現状、米粉は素材の一つに過ぎません。しかし、将来的には『米粉料理』というものが一つのジャンルとして確立することだって考えられます。人やモノの行き来がグローバル化していく中、食の多様化も進んでいきます。そうしたライフスタイルの変化が、米粉にとっても大きな転換期になる可能性があるでしょう。当社は米粉の次なるステージに向けて開発を続け、そのときが訪れたらスピード感を持って新たな商品を発信していきたいと考えています」と話してくれました。

最適なタイミングで商品を提供できるよう開発を続ける
最適なタイミングで商品を提供できるよう開発を続ける

今回発売した「カニのトマトクリーム生パスタ」などのパッケージには、「米粉配合の自家製もちもち生パスタ」というキャッチコピーが入っています。栗田さんはこのフレーズも、消費者に米粉を知ってもらうきっかけづくりであり、ライフスタイルに変化をもたらす仕掛けの一つになるのではと期待しているそうです。

また、製造面での技術的な工夫や改良に加え、米を生産する農家や加工する製粉会社、そして米粉を使う製造業者などが一体となり、これから米や米粉をどうやって活用していくかを考えていく必要があるとも話します。官民が協力し、将来像を描きながら取り組んでいけば、米粉の可能性がさらに広がっていくと期待しています。
デリモの米粉製品開発は始まったばかり。今後どんな製品が登場するか、注目が集まります。