「いくつ食べても罪悪感がないスイーツ」を実現した米粉のヘルシードーナツ

京都府京都市伏見区で行列の絶えない人気の洋食屋「コートレット」を運営する株式会社コートレットフーズカンパニー。その取締役を務める黒河内楓さんがオープンしたのは「ヘルシーな安心感の中にもときめきを」というコンセプトのドーナツ店。一般的なドーナツが小麦粉の生地を油で揚げてつくるのに対し、黒河内さんのドーナツは米粉や玄米粉でつくり、基本的に揚げません。罪悪感なく、いくらでも食べられるそのドーナツは、またたくまに大人気に。そんな黒河内さんのヘルシーなドーナツがいかにして生まれたか、そしてこれから目指す姿についてお聞きしました。

「いくつ食べても罪悪感がないスイーツ」を実現した米粉のヘルシードーナツ
すべてのドーナツラヴァーに贈る、ドーナツラヴァーが考えた理想のドーナツ

すべてのドーナツラヴァーに贈る、ドーナツラヴァーが考えた理想のドーナツ

黒河内楓さんが「NAYAMACHI DONUTS 君に、あげる」をオープンしたのは、2022年4月。オープン当初から米粉や玄米粉の生地に、スーパーフードや地元の名産品などを使ったトッピングを散りばめたヘルシーなドーナツを提供しています。揚げずに焼いてつくるドーナツが多く、揚げる場合もヘルシーな米油を使うなど徹底しています。

「私自身ドーナツが大好きです。でも、小麦粉でつくって揚げたドーナツは、カロリーも高く、満腹感もすごいので、たくさん食べられない。そしてたくさん食べたら罪悪感がすごい。そういううしろめたい思いをせずにたくさん食べられるドーナツってできないのかな、とずっと考えていたんです」
好きな食べ物を好きなだけ食べる。それはとても幸せな気持ちになれる行為なのに、従来のドーナツでは幸福感の真逆、罪悪感でいっぱいになってしまう。「そんな残念なことって…」と思い、ヘルシーなドーナツを提供するお店を自分でオープンしたのだそうです。

掲げているコンセプトは「ヘルシーな安心感の中にもときめきを」。それを体現するように、すべてのドーナツにはファンシーでポエミーな、心ときめく名前がつけられています。例えば「ただ、君だけを」「君のいるこの町で」などなど。黒河内さんがさまざまな詩集やエモい文章を読み込んで付けた名前の数々だそうです。
トッピングなどもスーパーフードに加えて、京都やお店のある日本酒の酒蔵が多い伏見の名産を使って、とても映える見た目に仕上げています。その映えるドーナツは、オープンするとまたたくまに年齢を問わず大人気に。たくさんの人にドーナツを食べて好きになってほしいという思いから始めたので、とてもうれしかった、と黒河内さん。

「それに加えて自分が生まれ育ったこの土地の『新しい名物土産にしたい』という思いもこめていました。でも、お店のドーナツは、保存料などは一切不使用なので、賞味期限が当日限りなんです。なんとか調理法や包装などを工夫して、全国に届けられないかと思っていたところ、この米粉商品開発等支援対策事業を知ったのです」

すべてのドーナツラヴァーに贈る、ドーナツラヴァーが考えた理想のドーナツ
京都の新しい名物を、日本中に届ける準備が整った

京都の新しい名物を、日本中に届ける準備が整った

賞味期限を長くする調理方法などを試行錯誤していましたが、どうしても保存料などに頼ることになり「それではコンセプトに反してしまう」と悩んでいたという黒河内さん。そこで製造方法ばかりに注目するのではなく、本事業を活用して新しいパッケージの制作に挑戦したそうです。その結果、長時間の輸送に耐えられるパッケージが完成。また、ドーナツを冷凍できる機器も購入できたため、賞味期限を「冷凍保存で1ヵ月」と大幅に延ばすことができたそうです。

「30分ほど常温で解凍してもらうことで、お店で買って食べていただくのと同じ味を、全国どこでも楽しんでもらえることができるようになりました。これで『罪悪感のないヘルシーなドーナツ』を伏見の、そして京都の新しい名物としてアピールできる準備ができました」

配合なども細かく改良を行い、店舗の提供だけでなく、催事などでお土産として紹介することが可能になったと黒河内さんは話します。その結果、積極的に京都の大手百貨店の催事などにも出店できるようになり、ヘルシーで罪悪感フリーの黒河内さんのドーナツの知名度はどんどん広がっていっているそうです。
「通販サイトもオープンさせることができました。これで全国のオーダーに応えられることができます。私と同じようにドーナツを大好きな方に、うしろめたい罪悪感もなく、心ゆくまでドーナツを味わってほしいなと思っています」

ドーナツをあきらめていた人にも、ドーナツの素晴らしさを

ドーナツが大好きで始めた「NAYAMACHI DONUTS 君に、あげる」ですが、ドーナツ愛好家以外にもファンは大きく増えているそうです。インスタグラムなどに映えるドーナツの写真がアップされることで、さまざまなファン層にリーチすることができ、それを見た小麦粉アレルギーを持つ方、そういったお子さんを持つご家族の方が遠路はるばるお店や催事に駆けつけることも多くなったそうです。

「体質などでスイーツを楽しむことをあきらめていた方が、このお店のドーナツなら安心して食べられると喜んでくださいます。『ドーナツを食べたかったけれど、市販のものやチェーン店のものは食べられなくてさみしかった』というお子さんが笑顔で食べてくれたこともあります。そうやってこのドーナツが誰かの大切な記憶に残っていくのは、とても嬉しいです」

ドーナツをあきらめていた人にも、ドーナツの素晴らしさを

食の制限や多様な嗜好性のある方のニーズにも応えられるよう、小麦を使ったドーナツの調理場所を分けるなど、細かやかに対応もしているという黒河内さん。その結果、より多くのお客様に選ばれるドーナツが次々と生まれています。
黒河内さんが「NAYAMACHI DONUTS 君に、あげる」から発信するドーナツは、いまも少しずつ地元の新しい名物土産として、たくさんの人に喜ばれる存在として、着実に歩みを進めているようです。