創業以来の大きなチャレンジ。米粉が拓く食の明るい未来

創業以来の大きなチャレンジ。米粉が拓く食の明るい未来

「創業以来の新しい大きなチャレンジ」をと、2022年に米粉の販売を始めた兵庫県高砂市のキングフーズ株式会社(以下、キングフーズ)。発売以来、その反響の大きさに驚きの連続だと話します。その中で見えてきた米粉の魅力と可能性、そして米粉が描くこれからの日本の食と農業について、代表取締役社長の中里仁一さんと取締役の八木昌幸さんにお話を伺いました。

売上は予想外。発売2年で米粉の生産規模は数倍に

60年以上にわたってきな粉や穀粉、澱粉など、多彩な粉を製造しているキングフーズですが、米粉商品の開発に着手したのは、意外に最近のこと。キングフーズ初となる米粉商品「国産米粉パウダー」の発売は2022年です。
「スーパーなどの小売、あるいはレストランや給食事業、そして消費者の皆様から、米粉を求める声が高まり、その声に応えようと開発をスタートしました」と中里社長は話します。

売上は予想外。発売2年で米粉の生産規模は数倍に

既にJAや全農などとパイプが構築できており、原料となる米の調達はスムーズに行えたとのこと。ですが、予想外なことが起きました。それは商品の売れ行きでした。
八木さんは「米粉のニーズが高まっているのは、中里の言葉通り感じていたのですが、その実態は私たちの想像以上でした。当初の予定では生産が追いつかず、発売から数年で数倍の量の米粉を量産する体制を整えることになりました」と話します。
スタート時は米粉パウダーのみだった商品も、需要の多いパンケーキとから揚げ用のミックス粉も開発し、ラインナップを拡充しています。また、大手スーパーからPB(プライベートブランド)の米粉の製造依頼も来るようになりました。

「商品を発売してみて、米粉が市場に求められているということを改めて実感しました。より強力な生産体制を整えたい。そう思っている矢先に、米粉商品開発等支援対策事業の存在を知りました。事業を活用して、新たに最新の設備を導入し、より効率的に生産できる体制を構築することができました。米粉をビジネスの武器として、攻勢をかけられるスタートラインに立ったと感じています」と中里社長は話します。

より多くの人に知られ使われるために、米粉を1円でも安く

より多くの人に知られ使われるために、米粉を1円でも安く

本事業を活用し、米粉の生産体制は大きく進化したと中里社長。
「最新設備の導入により生産能力が向上し、競争力のある製品を供給することができるようになりました」
そう話す中里社長は、米粉の普及、さらに日本の職業自給率アップと、大きな未来を見据えています。

「米粉のニーズが高まっていることを実感しました。ですが、まだまだ認知度や普及率は低い。理由のひとつは小麦粉よりも高価であること。生産コストを削減して量産することで、米粉の価格を1円でも下げることが、B to CはもちろんB to Bにおいても米粉が選ばれるために重要だと考えています」(中里社長)
そのための準備が整い、だからこそ「攻勢をかけられるスタートラインに立った」と中里社長は考えているのだそうです。

「また、製造ラインを整備したことで、混入や包装の破損など、ロスやお客様からのクレームにつながる事象を減らすこともできました。より安心して、安全な米粉を手に取っていただけると自信を持っています。さらなる拡販のために、本事業を活用して新パッケージの作成も行いました」と話すのは八木さん。小売り用パッケージは自立するタイプにリニューアルし、これから発送を進めていくとのこと。平積みしかできないパッケージでは売場の棚での視認性は高くありません。立てて陳列されることで、より大きく書かれた「国産米粉パウダー」の文字や調理例の写真を認識してもらえ、興味を惹いて手に取ってもらえるようになります。

「米粉には大きな期待をしています。吸油率も小麦粉と比べて30%カット、グルテンフリーで三大アレルゲンを含まない。ヘルシー志向や小麦等のアレルギーを持つ方にはそういった要素が刺さるはず。さらに、揚げ物はサクッと、ケーキやパンはもっちり・しっとりと仕上がる。価格が小麦に迫れば、もっと選ばれる商品になるはず」
八木さんは輸入小麦粉の代替品として選ばれることが、米粉の目標だと話します。キングフーズでは、小麦粉と同様の細かさで米粉を製粉しています。製菓・製パン、そして料理にも使いやすい汎用性の高い米粉となっているそうです。

より多くの人に知られ使われるために、米粉を1円でも安く
日本の農業を盛り上げる。米粉がその成否を担っている

日本の農業を盛り上げる。米粉がその成否を担っている

「消費されるお客様、業者の方への認知だけでなく、生産者の方へも米粉の魅力をどんどん発信していきたいと考えています」と中里社長。現在、キングフーズでは国産米粉を使っていますが、将来的には地元である兵庫県産など産地を絞って差別化や輸送コスト削減などを図っていきたいそうです。
「兵庫県は灘など日本酒の醸造所が多く、良いお米が穫れます。ただ、それらは食用米。米粉用には獲得が難しい。現在は別の産地の卸先に依頼し、春先から6月にかけて早期に契約して米を確保しています。『米粉は売れる』『米粉は使える』ともっと認知していただければ、調達は容易になるはず。そのために、産地を訪れ現状を報告し、お話をすること、また生産者さんを招いて米粉の魅力や可能性をお伝えすることなどを積極的に行っていきたい」(中里社長)

中里社長は、現在でも大豆生産者などを毎年訪れ、市場の傾向やキングフーズの取り組みなどを話し合い、生産についても意見を交わしているそうです。今後は米農家さんに対しても同様の活動を行い、また米農家さんを招いての「米粉を使った料理の試食会」などを計画していると言います。そうして実際に米粉をつくっているメーカーからの発信で米粉の魅力・可能性を生産者さんに実感してもらうことが重要、と中里社長は考えています。

「キングフーズが事業を継続し、成長させるには、農家さんの存在がなにより大切。農家さんと二人三脚で農業を盛り上げていくことも私たちの使命です。米粉はキングフーズと米農家さんとのちょうつがいのような存在になると考えています」
中里社長は米粉が拡販されることで、米の消費が進み、食料自給率の向上にもつながると考えています。
「八木が話したように、米粉はグルテンフリーで三大アレルゲンも含まない食品です。海外ではまだまだこの米粉の魅力・可能性は伝わっていません。日本の外に目を向ければ大きな市場が広がっています。米粉で海外進出することができれば、より農家さんの力になれると考えています」
創業以来の大きなチャレンジ。「その準備も今整った」と中里社長は力強く笑って話してくれました。