ビジネスの選択肢を無限に広げる可能性が、米粉にはある

新商品はマサラ味、本格スパイスで打って出る

「米粉には米粉にしかない良さがある。そこを発掘して伸ばしていくこと。また既存の粉類とミックスすることに、ビジネスチャンスがある」と話すのは、奈良県桜井市の旭製粉株式会社(以下、旭製粉)の代表取締役社長 西田定さん。桜井の地は、江戸時代から小麦粉の水車製粉が盛んな土地。その地に根付き、設立以来80年以上にわたって小麦粉製粉とその関連製品をB to Bで販売してきた旭製粉が、初となる米粉事業に進出。そこにはどんな背景やねらいがあるのか、西田社長にお話いただきました。

米粉+αのミックス粉事業に、ミックス粉のプロが挑戦

米粉商品開発等支援対策事業を活用して、米粉用の製造ラインを新たに新設した旭製粉。そのラインでは多様なオーダーに対応して、米粉のお好み焼きやパン、麺、揚げ物などの米粉ミックスを小ロットから配合することができるそうです。

米粉+αのミックス粉事業に、ミックス粉のプロが挑戦
米粉+αのミックス粉事業に、ミックス粉のプロが挑戦

「新しいラインにはブレンダー機に始まり、袋詰めの機械までそろえています。製粉機は備えておらずあくまで配合。ミックス粉の製造を受託するラインです」と話す西田社長。 米粉は製粉会社から旭製粉が取り寄せるかクライアントが持ち込むことになるそうです。例えば、2024年に発売された「曽爾高原米粉パンケーキミックス」は、曽爾村観光振興公社から現地で穫れたお米でつくった米粉を受け取り、オーダーにあわせたレシピを旭製粉が提案。OKが出た配合でミックス粉をつくって納品しています。

「自社に配合の設備がないお客様、あるいはノウハウをお持ちでないお客様が、米粉を使ってビジネスを始めたいといった場合に気軽にご利用いただける新しいサービスで、『米創造』と名付けました。曽爾村観光振興公社様のケースは、納品したミックス粉を現地でお客様がパッケージに封入されています。農業の6次化のお手伝いをした事例ですね」
米創造への問い合わせで多いのが、米粉の製粉会社からのものだと西田社長。

「米粉の製粉会社さんも、小麦や澱粉とのミックス商品を扱いたいというニーズを持ってらっしゃるところが多い。でも、これまで米粉以外は扱ったことがない。新たに小麦粉などの粉を扱うとなると、設備機械をそろえる資金が必要なことはもちろん、小麦粉を扱うことでコンタミへの配慮やアレルギーに関する表記など、従来からの変更点が多くなります。小麦粉を専門に扱い、配合できる設備がある旭製粉に委託した方がさまざまなリスクが避けられるのです」
西田社長は、米粉に進出したのはまさにそういったニーズをねらってのことだと話します。

農業を救う米粉。小麦粉関連企業を救う米粉

旭製粉は設立以来、長らく小麦粉の製粉を専門に扱ってきましたが、西田社長がまだ営業社員だった時代にミックス粉を扱い始め、そこからさまざまなレシピの開発もスタート。オーダーに合わせて配合するだけでなく、お客様が求めるスペックに合致したミックス粉の提案・提供もしてきました。現在では自社が所有する小麦粉のミックス粉のレシピは何万通りにもなるそうです。

「パンケーキひとつとっても、甘いもの、しっとりしたもの、口溶けが良いもの、焼き色の濃淡とさまざまあります。弊社にはその特徴ごとにレシピがあります。だから具体的な要望に応えることをはじめ、抽象的で曖昧なオーダーや、これから新たにレストランを始めたり特産品をつくるなど、ビジネスを始める方のニーズにも、レシピの提案で応えることができるのです」

農業を救う米粉。小麦粉関連企業を救う米粉

その膨大な量のレシピが、米粉ミックスをつくる際にも活用されているとのこと。もちろん米粉ミックス製造のサービスを始める前には、さまざまな米粉の特性を研究し、レシピに米粉専用の微調整を行ったそうです。
では、創業80年以上にもなる小麦粉製粉の老舗が、どうしていま米粉のビジネスにチャレンジするのでしょうか。

「物価上昇はご存じの通りですが、中でも海外産の小麦粉の値上げ幅は大きなもののひとつです。4期連続で小麦粉の値段は上昇しています。また、世界情勢の影響で為替が変動し、円安が続いています。海外産の小麦粉だけに頼っていては、売上を伸ばすことが難しい状況が続いているのです」

また、旭製粉ではミックス粉に馬鈴薯澱粉やタピオカ粉、卵白など扱っていますが、これらも世界的な不作や価格上昇が続いているとのこと。そういった供給の不安定さや価格の上昇にあえぐ中、目をつけたのが米粉だったと西田社長。
「国産小麦の利用を進めると共に、米粉のミックス粉の請け負い製造のスタートを決めたとき、本事業を知り、ありがたく活用させていただきました。食糧自給率の低下に悩む日本でも、米は自給率が高い。米粉なら安定的に使えると考えたのです」
馬鈴薯澱粉やタピオカ粉の代替品としても米粉は使えると言います。それも数多くのレシピを所有し、それぞれの粉の特性をつかんでいた旭製粉だからこそ、いち早く知れたことだと西田社長は話します。

米粉だけが持つ良さを知れば、可能性はより広がる

米粉だけが持つ良さを知れば、可能性はより広がる

さらにチャレンジを後押ししたのは、既に展開してたさまざまなサービスがあったからだと西田社長。 「オリジナルミックス粉を小ロットで製造するオーダーメイドサービスをはじめ、お好みの容量でパックする『ユニーク・パック』、粉ものの計量・混合を旭製粉が請け負う『BPO』、小麦だけでなく穀物や野菜などを粉砕・粉体化する『G-Crush』など、さまざまなサービスが旭製粉にはあります。このサービスを『米創造』とあわせて利用していただけば、さまざまな形態・ビジネスにマッチした内容や容量、ロット数で米粉ミックスが製造できます」

ニーズは数多くあるはずだと西田社長は話します。実際、前述の米粉製粉会社の事例のような問い合わせは多くあるそうです。以前は「米粉は取り扱っていないので」と受けなかったそうですが、その総数を調べるとかなりの数に上ることがわかり、「米粉のニーズは高まっている」と確信したそうです。

「米粉には米粉にしかない良さがあります。馬鈴薯澱粉やタピオカ粉にはない特性が出て、新しい食感を生んだりします。米粉を扱っている方は、そういった特性、良さを知っているはず。そういった企業と手を組むことで、ビジネスはたくさん新しい芽を出すと考えています。小麦粉の代替品ではない。それだけだと限界が来る。小麦粉やほかの粉とミックスして、商品幅を増やせばいい。そう捉えると、米粉によってビジネスの選択肢は無限にも広がります」

旭製粉が持つレシピと配合の技術で、これまで日の目を見なかったビジネスのアイデアを実現する。それがこれから必要なことであり、そこには大きなチャンスがある。
「米粉でビジネスの選択肢を増やす。それをB to Bで、さまざまなお客様のビジネスの縁の下の力持ちとしてやってきた旭製粉が始めたい。新しいチャレンジにワクワクしています」と西田社長は笑って話してくださいました。