農家のこだわりと思いを世界に伝える架け橋となる離乳食

農家のこだわりと思いを世界に伝える架け橋となる離乳食

「手間暇かけて育てられた新鮮なお野菜を使い、進んで食べさせたくなるようなベビーフード」として、栽培期間中、化学合成農薬・化学肥料(窒素成分)不使用の滋賀県産の野菜を使ったベビーフードをつくる滋賀県湖南市の株式会社はたけのみかた(以下、はたけのみかた)。2024年2月に商品名を「manma 四季のベビーフード」と変更し、大きなリニューアルを果たしました。「農家との架け橋に」という思いはそのままに、よりお客様の声に応える商品ラインナップへと進化した「manma」。その進化には米粉も一役買っているそうです。代表取締役である武村幸奈さんに、はたけのみかたのこれまでとこれからについてお話をお聞きします。

世に知られていないすばらしい野菜を、もっと広めたい

はたけのみかたは、武村さんが大学時代に仲間たち4人で起業した会社です。大学生だった武村さんがなにをきっかけに離乳食に興味を持つようになったかとたずねてみると、「大学時代はまちづくりなど社会の仕組みづくりを考える学部にいました。なにか学生にできる活動はないかと京都にある大学のまわりを歩いていたときに、意外に畑が多いことに気づきました。農家に話を聞くと、とてもこだわりを持って野菜をつくっていらっしゃる。でも、その野菜はどこか遠くの町などで流通していて、ブランド名などを知っている近隣の方は少ないというのです」
そのことに驚いた武村さんは、農家と近隣の住民の方、そして消費者をつなげ、農家の思いやこだわりを伝えることはできないかと、マルシェなどを開く活動を仲間と始めます。

世に知られていないすばらしい野菜を、もっと広めたい

「化学合成農薬や窒素成分を含む化学肥料を使わずに栽培している農家を集めて、その野菜を販売しました。皆さん確固たる信念を持って農業をされているんです。でも、その信念がどのように野菜に活きているか、野菜の良さを伝えるのが難しい。とても手間暇を掛けて育てているので、広報する時間もないのです。そういった農家の素晴らしさをどうにか伝えられないかと思いました」
そして、新しい驚きもあったと言います。それはマルシェに赤ちゃんを連れた方がたくさんいらっしゃるということ。聞けば、健康的で質の高い野菜を販売するというマルシェの主旨を知り、電車を乗り継いで駆けつけたそうです。

「赤ちゃんには『少しでも良いものを食べさせてあげて、健やかに育てたい』と思うもの。出産を経て、食に興味を持ったという方がとても多いのです。その時に『食材にこだわった離乳食をつくるのはどうだろう』とアイデアが浮かんだのです」
こうして医師や栄養士といった育児や健康のプロ、そして料理人にも協力を求めて、武村さんたちの離乳食づくりが始まりました。そして武村さんたちは4回生で起業。はたけのみかたと、離乳食「manma」が誕生したのです。

はたけのみかた、そしてお母さんと赤ちゃんのみかたに

はたけのみかた、そしてお母さんと赤ちゃんのみかたに

これまでは「manma 四季の離乳食」として販売されていたはたけのみかたの離乳食。滋賀県でこだわりを持って農業をしている農家から直接お米や野菜を仕入れて製造を行っていました。
「市販のベビーフードをたくさん食べ比べました。価格を下げるための大量生産と保存期間の確保のために、多くの製品は煮込まれすぎていたり調味料の風味が立っていたりと、野菜の味を感じるものは少なかった。そこでおいしい野菜の味を伝える離乳食にしよう、と考えました」

武村さんの故郷である滋賀県は米どころとしても有名ですが、栽培にこだわっている農家の存在とその野菜の良さも知り、滋賀県産のお米と旬の野菜のみを使うことを決めたそうです。
「すばらしいお米や野菜を栽培しているのに、なかなか世に知られず苦労している農家を、より多くの方に知ってもらいたいという思いもありました。そこでパッケージは生産者がわかるよう、農家の名前を入れることにしました」
時期や収量によって仕入れ先の農家が違うので、味も微妙に変わります。名前を入れることで、興味を持った方がその農家から直接お米や野菜を買ってくれるかもしれない。そんな架け橋のような存在になりたい、という思いも込められていると言います。

「安心で安全、そしておいしい離乳食を提供している中で、お客様からさまざまな要望が寄せられました。中でも多かったのが、おかずになる離乳食がほしいという声。そこで今回、大きくラインナップを増やすリニューアルを行いました」

誕生から約10年、さまざまな味のおじやを販売していたはたけのみかたですが、今回のリニューアルでは野菜はもちろん、動物性タンパク質も摂れる「おかず」「ぷらすのおかず」を開発しました。1歳までを4つの月齢に分け、月齢に応じて少しずつ固形物を増やして、野菜そのものを味わえるように食感が工夫されています。
「こだわったのは野菜のテクスチャー。『栄養を摂る』から、『味わう』『食事を楽しむ』と変化できるよう、月齢に合わせて調理しています。テクスチャーを感じられる一方で、赤ちゃんが食べやすいように調理するのにはとろみが重要。そこに米粉を使っています。今回発売したおかずと既存のおじやを組み合わせると、月齢7ヵ月の赤ちゃんなら1食に必要な野菜・魚と肉・穀類を摂ることができます」

はたけのみかた、そしてお母さんと赤ちゃんのみかたに

この10年で自身も母親になった武村さん。育児と仕事に追われていると、離乳食をつくるのは大変。かといって手を抜くと自分を責めてしまう結果になる。そうならないよう、時短かつ手軽に用意ができて、おしくてより栄養が充実した離乳食をつくりたかったと話します。

生まれ変わった「manma」が見据えるのは、世界

生まれ変わった「manma」が見据えるのは、世界

「『おかず』と『ぷらすのおかず』には、とろみをつけるのに米粉を使っているとお話ししました。小麦粉などさまざまな食材を検討する中で、とろみ以外にも米粉には良い効果があるとわかったことも決め手となりました。米粉からは甘みがでますし、カロリーも高い。赤ちゃんは小さなお口と胃でたくさんのご飯を食べ、しっかりカロリーを摂らないといけません。米粉を使うと効率よく、カロリーを満たすことができるのです。また米粉なら小麦粉アレルギーを持つ赤ちゃんにも安心して食べさせられます。開発を進める中で『manmaに使うのは米粉じゃなきゃだめだ』と確信しました」

開発では米粉と野菜などとの水分量の最適なバランスを探るのが難しく、時にはお餅のように固まってしまったりして苦労したと武村さん。その試作などをはじめ、今回のリニューアルには米粉商品開発等支援対策事業を活用。製造のための機械を導入し、一新したパッケージデザインにも利用したそうです。
「こだわって栽培をしている農家がつくる野菜は、形や大きさが不均一なこともあります。そのどれも味はおいしく、安心で安全です。でも一般的な流通には乗らない。はたけのみかたは、そういった野菜も適性価格ですべて買い取り、製品に使っています。『おかず』と『ぷらすのおかず』をつくったことで、より多くの野菜を購入でき、農家を応援できると期待しています」

滋賀県でも農家の減少は続いていると言います。武村さんは「農家の数を増やすことが解決策ではない。こだわりのある、質の高い作物をつくる農家を増やすことが、未来へ農業をつなぐことになる」と考えています。そのためにも、はたけのみかたでお米や野菜を購入し、その農家を消費者の方に知ってもらいたいと活動しているのです。

「今回のリニューアルでは栄養設計についても見直し、WHOの基準に合致する内容にしました。海外には健康志向の意識の高い方も多い。新しくなった『manma』は海外でも受け入れられるはず。まずはアジアなど米食に馴染みのある国への進出を考えています。滋賀のすばらしいお米と野菜、そしてそれをつくる農家に世界の注目を集めたい。そうして赤ちゃんの離乳食で、農家の架け橋になっていきたいと考えています」 武村さんとはたけのみかたは、さまざまな人をつないで笑顔にする架け橋。それはこれから世界へとのびて、より多くの笑顔を増やすことでしょう。