冷凍麺だからこその食感のなめらかさを実現

業務用のラーメンスープの製造から事業を開始した素井興食品工業株式会社は、蕎麦やうどんに相性が良く香りや風味をプラスする「ゆず七味」でも有名。2018年に柿の種など米菓の製造販売や外食事業などを担う阿部幸製菓のグループに加入。米粉ビジネスの拡大を目指して米粉麺を開発しました。今回の米粉商品開発等支援対策事業により、米粉麺の品質をさらに向上させ、量産化を可能にする設備も活用して生産量を大幅に向上させることができました。

新規設備導入で生産量は2~3倍にアップ

「米粉麺の製造は、2020年に東京の下北沢にPHO'MINH(フォーミン)というフォーのお店を出店したのが始まりです。フォーの麺の開発段階で『これはフォーじゃないよな』という麺もできたのですが、それがうどんやちゃんぽんの麺になるのではないかと考え、フォーの麺の開発が落ち着いた段階で、それらの開発を進めていきました」と専務取締役の蒔田英之さんが語ります。

製品としての米粉麺はできあがりましたが、手作業が多く品質にばらつきもありました。そこで、本事業を活用し、新しい米粉麺として改良を加えると共に、大規模な急速冷凍機を導入して、品質と生産性を高める取り組みを行いました。

新規設備導入で生産量は2~3倍にアップ

「これまでは計量なども手作業でしたが、計量機器なども活用し、一連の流れで麺を製造する工程が整うので、生産量は2~3倍にアップする予定です。これまでは1日に500~1,000食の生産でしたが、今後は2,000~3,000食といった水準に改善できると思います」と蒔田さんは語ります。
「米粉麺の工場自体がグルテンフリー体制になっているので、完全なグルテンフリー食品としてアレルギーのある方も安心してお召し上がりいただけます」

いろんな食べ方を楽しめる米粉麺

いろんな食べ方を楽しめる米粉麺

実際の米粉麺にはどのような特徴があるのでしょうか。麺を製造する栄工場で開発に関わる阿部ゆりかさんに伺いました。
「米粉麺は麺の形状によって食感が大きく変わります。弊社では平麺タイプと丸太麺タイプをつくっていますが、平麺は特につるつるとした食感が楽しめます。丸太麺はつるつるさにもちもちとした食感が加わります。お米はすべて新潟産にこだわっています」
完成した商品の名前は「新潟白色(NIIGATA white)」。米粉麺の透き通るような真っ白な見た目を表現しました。

阿部幸製菓グループでは、その米粉麺を使った店舗「新潟ちゃんぽん たねや」「新潟まぜそば たねや」を展開しています。
「ちゃんぽんとまぜそばは丸太麺を使っているので、もちもちした食感が楽しめます。うどんは平麺で、なおかつ幅3ミリの細いタイプなので、喉越しの良さが際立ちます。米粉麺はあっさりしているので、濃いめのタレに絡めて食べるのもおいしく、具材を選ばずいろんな食べ方ができます」(阿部さん)

今後の計画を蒔田さんに伺いました。
「業務用の販売にも力を入れていきますが、小売についても現在企画検討中です。2食タイプの新商品など、ネーミングやパッケージなどを含めどのようにブランディングしていくか考えています。商談も進めていますが、米粉麺はどうしても単価が上がります。他社との差別化で売り出していきたいと考えています」

その差別化のカギは「冷凍」にあると蒔田さんは言います。
「他社の米粉麺は乾麺や半生タイプが多いですが、味としては冷凍にまさるものはないと私は考えています。実際にネットで買える米粉麺をできるかぎり入手して食べ比べてみましたが、食感がざらついていたり、切れやすかったり、これでは米粉麺はなかなか浸透しないなと思うような商品が多くありました。それに比べて弊社の冷凍麺の方がおいしく、商品として差別化が図れると考えました」

いろんな食べ方を楽しめる米粉麺
新潟の新たなソウルフードに

新潟の新たなソウルフードに

冷凍米粉麺のおいしさには自信がありますが、冷凍だからこその販売の難しさがあるそうです。
「冷凍するが故に流通がネックになります。冷凍便で流通しなければいけないのでコスト高になりますし、行ける場所も限られてきます。その辺のバランスをどうするかが今後の課題です」(蒔田さん)

3月にはFOODEX JAPAN 2024にも出店して試食を出し、新規顧客開拓をすすめました。これまでも展示会での商談は多くあり、店舗に食べに来られた方から「この米粉麺を紹介してほしい」という電話がかかってくることもあるそうです。
「最近、東京の虎ノ門ヒルズのパスタ屋さんに納入が決まりました。そういったお店を今後もどんどん増やして、生産量を増やしていきたいと考えています」と蒔田さん。
「新潟県で麺類といえば蕎麦が有名で、ラーメンも人気です。でも、新潟は米どころなので、新たなソウルフードとして米粉麺の地位を築いていきたい」と阿部さんも今後の抱負を語ってくださいました。