石川県産のお米の販売や、おにぎり・すしなどに加工してスーパーなどにも卸している株式会社米心石川。そんなお米の専門会社がつくったのが、米粉のスイーツ。マフィンはほろっとほどける米粉ならではのやさしい甘さが特徴。使われているのは、石川県の新しいブランド米として9年かけて開発された『ひゃくまん穀』の米粉。ブランドの知名度向上を目指し、県内はもちろん今後は県外や海外への販売にもチャレンジしていく予定です。
米粉マフィン 2,700円(税込)/9個・冷凍
米粉カップケーキ 1,950円(税込)/9個・冷凍
・自社ECサイト
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左から河村さん、久田展子さん、久田真也さん、越中さん
石川県金沢市にある株式会社米心石川(以下、米心石川)では、石川県産のお米を軸として多彩な事業を行っている、いわば石川県産米のプロフェッショナル。そんな米心石川が挑むのが「米粉のスイーツ」。実は以前にも米粉スイーツを販売していたものの、さまざまな課題があり休眠状態になっている事業なのだと言います。今回は石川県産のブランド米の米粉を使用することにこだわり、石川県のお米の認知向上もテーマに掲げ、再挑戦。そのチャレンジの中で見えてきた新たな可能性についてなど、さまざまなお話をお聞きしました。
米心石川では、生産者から仕入れたお米を精米・玄米・ぬかとして販売する米穀事業、炊飯して白飯やおにぎりやすし加工品として販売する炊飯事業、その他にさまざまな穀類関連の製品を扱う商事事業を行っています。そのため、精米を行う施設や炊飯・調理を行う施設を自社で所有しています。ほとんどの事業はBtoB。おにぎりやすし加工品などの食品は石川県内のスーパーやコンビニエンスストアに卸されて販売されているほか、県内の小中学校などの給食として提供されているものもあります。一部の精米やパックご飯、お煎餅などの加工食品は自社で運営するECサイトで販売されているので、県外からでも手軽に購入し、味わうことができます。
「お米をメインに扱っているので、どうしても主食となる商品が多いのですが、お客様からの問い合わせも多く、以前は米粉を使ったスイーツを販売していたことがあります」
そう話すのは、炊飯部課長の河村亮さん。米心石川の実店舗を金沢市内で運営しており、米粉でつくったマフィンやカップケーキなどをお弁当などと共に販売していた時期があったそうです。ですが、工場には専用の機械はなく、少量を生産するのは効率が悪いことに加え、現在ほど米粉の知名度がなかったこともあり、実店舗とともに休眠状態になってしまったそう。
米粉の研究からレシピ考案まで手がけてきた久田展子さんは「当時は幅広い展開を考えていて、苦労してつくったレシピなど種類もたくさんありました。商品自体は好評だったので、『いつかは米心石川のお米のスイーツを復活させたい』という思いはずっとありました。それが今回の米粉商品開発等支援対策事業のおかげで実現できたんです」と笑顔で話します。
「米粉スイーツの復活」には、新たなテーマも掲げて取り組んだと河村さん。そのひとつが石川県の新しいブランド米『ひゃくまん穀』の米粉を使うこと。9年かけて開発され、2017年に発売された『ひゃくまん穀』。その知名度は他県のブランド米などに比べるとまだまだ。「もっと有名にしたい、全国区で愛されるお米にしたい」という思いを込めての取り組みとなったのです。
既に数多くの米粉スイーツのレシピを完成させていた久田展子さんと、製品化が実現すれば調理の統括を行う久田真也さん、そして加工に詳しい越中利恵子さんに河村さんが中心となってチームを結成。マフィンやカップケーキ、ロールケーキなどの試作を繰り返していったそうです。
「お米のブランドが変わると、米粉の性質も変わる。水分量や粘度など『ひゃくまん穀』に最適な数値を見つけるのが難しかった。過去のレシピがそのまま使えるスイーツはほとんどなかったですね」(久田展子さん)
「展子さんのスイーツはどれもおいしく、試食の回を重ねるごとに期待が高まりました。つくる以上はたくさんの人に気軽に楽しんでもらいたい。そのために生産コストと価格は悩んで決めていきました」(越中さん)
「レシピができても、それを工場でそのままつくれるとは限らない。本事業を利用して整備した焼成機とラインのおかげで生産量や効率化についての課題は解決できましたが、米粉のスイーツは新しい挑戦。その日の湿度や温度でおいしさが変わる。レシピを安定して再現するのは苦労しました」(久田真也さん)
それぞれの立場で悩み・苦労しながら『ひゃくまん穀』のスイーツが少しずつ形になっていきました。
「こうして社内の試食会・販売会でも好評だった『ひゃくまん穀』マフィンを第一弾と決めました。また石川県の別のブランド米でつくったカップケーキも販売が決まっています」(河村さん)
「試行錯誤を繰り返す時間の中で、新たな展開も見えてきました」と河村さんは話します。
展示会などのイベントで、新商品の米粉のスイーツを紹介したところ、とても良い反応が返ってきたそうです。石川県の新ブランド『ひゃくまん穀』を県外の人に紹介するのに、スイーツはいいきっかけになるかもしれない、と感じた河村さん。そこで、自社のECサイトで販売をスタートすることを決めました。
「グルテンフリーなどを好む健康意識が高い海外の方にも、米粉のスイーツは受け入れられるのではないかと期待しています。石川県や日本という壁を取り払って、米粉スイーツで大きなチャレンジができればと期待を膨らませています」と話します。
「米粉のマフィンは、ほろっとほどけるような軽さが特徴。甘いスイーツもいいが、米粉の風味を活かせば、おかずにも合うはず。マフィンは、いそがしい朝でも手軽に食べられる食事になる。またお弁当にも使える。軌道に乗ればおかずマフィンなどの可能性も探っていきたいと考えています」(久田展子さん)
「展子さんのレシピには、まだまだたくさんのスイーツがあります。それを今後、少しずつ実現していきたい。『米心石川ならお米スイーツもおいしい』と認識されて販路が広がればうれしいですね」(越中さん)
久田真也さんも「新たに整備された製造ラインで、米心石川の事業や製品の幅が広がるのではと期待している」と話します。
米粉スイーツをきっかけに、ビジネスが成長するチャンスをつかんだ米心石川。今後の展開にぜひ注目してください。