福島県のスペシャルティコーヒー専門店が手がける米粉の洋菓子は、郡山産コシヒカリの「あさか舞」と自社製ビーントゥバーチョコレートを使用。コーヒーに合う濃厚な風味を追求し、小麦粉使用と遜色のない本格的な洋菓子・洋生菓子を目指しました。一押しのロールケーキは、米粉生地にガナッシュの苦みがのったリッチな味わい。
ロールケーキ 715円/1ピース
フィナンシェ 216円/1個
ダコワーズ 270円/1個
生ショコラ 594円/1個
珈琲屋さんのティラミス 750円/1個
チョコバー 500円/1本
食パン540円/1斤
ピザ 432円/1ピース
※すべて税込
・富久栄珈琲直営店、市内JA直売所、市内スーパーマーケット
・各社ECサイト
富久栄珈琲(FUKUEI COFFEE/ふくえいコーヒー)は、福島県郡山市と宮城県仙台市に物販とイートインの8店舗を展開するスペシャルティコーヒーの専門店。生豆の輸入から焙煎まで自社で一貫して行い、原産国を同じくするカカオ豆からビーントゥバーチョコレートも製造・販売しています。そのチョコレートと米粉を使ってコーヒーに合う洋菓子の開発を加速させています。
富久栄珈琲を運営する富久栄商会は、代表取締役の中島茂さんが今から約15年前に設立。自らがブラジル政府公認コーヒー鑑定士など、コーヒーに関する複数の資格を持ち、主にアフリカでコーヒー豆の買い付けをして、自家焙煎をしています。
中島さんはコーヒー焙煎士としても全国大会でチーム準優勝の実績を持ち、その技術を活かして、自社でカカオ豆を輸入してビーントゥバーのチョコレートの製造・販売もしています。そのチョコレートを使って、以前からコーヒーに合う洋菓子づくりをしてきましたが、5年ほど前から原料を小麦粉から米粉に代えて商品開発に取り組んでいます。
「私自身がグルテンに対して吸収不良を起こしやすい体質があり、できるだけ小麦粉を使わないで洋菓子をつくりたいと考えました」と話す中島さん。福島県産の良い食材を広く知ってほしいという思いも強く、洋菓子づくりには地元・郡山産の地域ブランド米「あさか舞」のコシヒカリの米粉を選びました。
中島さんは、コロナ前、JA福島さくらとタッグを組んでFOODEX JAPAN(国際食品・飲料展)に出展し、「あさか舞」の米粉を使った洋菓子を紹介した経験もあります。
「米粉の洋菓子は海外のバイヤーに好評で引き合いもありました」と中島さん。自社工場で手づくりしているため製造量が輸出のロットに満たず、商談はまとまらなかったものの、グルテンフリーと日本産という両面で米粉の洋菓子のニーズがあると手応えを感じ、本格的な商品開発に乗り出しました。
商品開発の拠点は、富久栄珈琲亀田本店(郡山市亀田)に隣接する本店工場。5人の製造スタッフが、従来の小麦粉を米粉に代えて何種類もの洋菓子の試作を繰り返しながらレシピを開発しています。焼菓子では、これまでにフィナンシェとダコワーズを商品化しました。
「米粉の焼菓子はホロホロとした食感のものが多いと思いますが、米粉100%で小麦粉の焼菓子と遜色のないリッチな味わいを目指しました」と中島さん。フィナンシェはずっしり・しっとりに仕上げ、ダコワーズは外はサクッと中はふんわりとした食感にまとめています。
中島さんと製造スタッフの一押しはロールケーキです。しっとり・ふんわりと焼き上げた米粉のスポンジ生地に、ビーントゥバーのガナッシュとチョコレート生クリームを重ねて巻いたロールケーキは、断面が美しく、リッチでビターな味わい。イートイン店舗で提供している商品で、自社のスペシャルティコーヒーに良く合います。
福島の名産品とのコラボレーションは、中島さんが最も力を注ぐ商品開発の形態です。老舗蔵元である笹の川酒造のクラフトウイスキーと自社のビーントゥバーチョコレートを組み合わせた生ショコラに「あさか舞」の米粉を使用しています。ブレンデッドウイスキー「963」とフランボワーズソース、「山桜」とはキャラメルソースをマッチング。米粉でショコラを滑らかに仕上げた郡山ブランドの逸品です。
郡山産だけはありません。会津のリンゴ園とのコラボ商品や米どころ福島県ブランド米の米粉を使った商品も開発してきました。中島さんは「今後も福島県の良いものを使った商品を開発して福島ブランドを広めていきたい」と話してくれました。
今回の米粉商品開発等支援対策事業でオーブンを増設し、チョコレートの成形マシンなどの設備を導入。生産能力を従来の3~4倍に高めました。「ある程度の量産体制が整い、やりたいことができるようになりました。手づくりの良さを残しながら、機械にできることは機械化して、製造スタッフがより開発に力を注げるようになりました」と中島さん。目下、ラングドシャなどのより繊細で強度が必要な米粉生地の開発にチャレンジしています。
米粉を使った商品開発が格段に進み、新作も続々と登場しています。珈琲屋さんのティラミスは、吸水性の高い米粉のスポンジにエスプレッソコーヒーをたっぷり染み込ませ、カカオとコーヒーがほろ苦く薫る大人の味です。チョコバーは、ボンボンショコラ(中に詰め物をした1口サイズのチョコレート)を棒状に成形したもので、ガナッシュクリームのとろけるような食感と底に埋め込まれた砕いた米粉生地のサクサク感の取り合わせが絶妙です。季節商品のクリスマスケーキも完成したとのことです。
「グルテンフリーや日本産が注目され、インバウンドでの需要が高まっています。米粉には日本人が思っている以上に可能性を感じます。海外輸出のチャンスもあると思うので、福島県の物産とコラボして世界に打って出る商品を開発していきたい」と言葉に力を込めます。商品開発のコンセプトは「幸せに太ろう」。良い食材を丸ごと使うことを意識して、食パンやピザなどの食事系の商品も開発。食パンは米粉のモチモチ感とバターの風味でコクのある味わい。ピザはチーズにこだわり米粉入り生地がそのおいしさを引き立てています。いずれも米粉70%からのスタートですが、商品バリエーションを増やしつつ100%に向けてレシピ開発をしています。
今後、東京・新宿に物販店のオープンが決まっています。15年前、海外と日本を往来する仕事がしたくてコーヒーを選んだという中島さん。今、米粉で日本発の架け橋をつくろうとしています。