BG無洗米加工装置の本格導入で作業効率化・環境への配慮・品質向上を推進

玄米を精米する過程で使用される大量の水や、精米を洗ったときに出る「とぎ汁」など、精米や米粉の加工で生じる水問題は、製造コストや業務効率を左右する要素の一つになっています。群馬製粉株式会社(以下、群馬製粉)では、製造ラインにBG無洗米加工装置を新たに導入し、製造コストの削減と業務の効率アップに成功しました。さらに米のとぎ汁の排出をなくし、環境保全にも貢献しています。穀粉業界初となる試みに取り組んだ経緯と、その効果についてお聞きしました。

業界初となるBG無洗米加工装置を本格導入

業界初となるBG無洗米加工装置を本格導入

1947年に前身である群馬粉化製造所として設立し、以来、米粉を中心に上新粉やきな粉といった穀物粉の製造・販売を手がけてきた群馬製粉。菓子メーカーや和菓子店など“作り手”が使いやすい製品づくりをモットーとしている同社は、多くの業者から高い信頼を得ています。

群馬製粉では、近年ニーズの高まりを見せている米粉の製造にあたり、穀粉製造業界で初となるBG無洗米加工装置を導入しました。新設備の導入を決断した背景には、これからも国内外に広がりを見せる米粉の需要に対応し、高品質の製品を継続して菓子メーカーなどの製造会社に届けられるようにしたいという思いがありました。
「製粉会社の多くは、原料となる米を精米された状態で仕入れて加工しています。しかし当社では、玄米を仕入れて精米し、製粉する“ワンストップ製造”を行っています。今回、BG無洗米加工装置を導入した理由の一つには、社内でさらなる業務の効率化が求められていると考えたからです」と代表取締役社長の山口博之さんは話します。

業界初となるBG無洗米加工装置を本格導入
本格派の洋菓子で、地域産品とコラボレーション

山口社長は設備導入を決断したもう一つの理由として、環境への配慮を挙げています。米粉の製造工程には、精米を洗って内部に水を浸透(吸水)させたのち、表面の水分を取って粉砕する「湿式製法」と、吸水を行わず生米を粉砕する「乾式製法」があります。群馬製粉では、デンプンの損傷を抑えてきめの細かい米粉を作ることができ、ふんわりと口どけの良い製品になる湿式製法を採用しています。しかし湿式製法は、製造課程で米のとぎ汁が大量に発生することがネックとされてきました。

山口社長は「米のとぎ汁は排水として処理をしなくてはならず、相応の設備やコストもかかります。さらに昨今いわれている環境への負荷も懸念材料でした。地球レベルで環境保護やSDGsへの意識が高まっている中、当社ももっと何かできないかと考えたときに、米のとぎ汁を減らす方法としてBG無洗米加工装置の導入に至りました。渋川工場への設置にあたっては、別の建屋から米を移動させるパイプの新設なども必要だったため、1年半もの時間がかかりました。しかし実際に稼働が始まると、その成果には目を見張るものがありました」と話します。

群馬製粉のBG無洗米加工装置の導入は業界内でも話題となり、新聞や業界誌でも大きく取り上げられました。山口社長は「新たな一歩を踏み出した当社の挑戦が、穀粉業界さらには製造業者や米の生産農家の皆さんにも、新たな気づきや価値を見いだしてもらえるとうれしく思います」と話してくれました。

菓子メーカーなど、作り手にもメリットをもたらす

無洗米は「肌ヌカ」と呼ばれる精米時に付着する粘度の高いヌカもはがし取ってしまうため、米を水に浸したときに出る白く濁った「とぎ汁」が出ません。また、一般的な精米に比べて吸水速度も早いことがわかっています。特に餅米は加工前に長時間水に浸して吸水させなくてはならず、菓子メーカーなどの製造業者には業務効率化への課題となっていました。しかし、無洗米を使用すれば、吸水時間が約半分に短縮されます。さらに洗米による旨み成分の流出を抑え、製品の見た目を左右する白さも向上するといった利点もあるそうです。

「BG無洗米加工装置は、当社にさまざまな好循環をもたらしてくれました。その効果は製造業者も同様であると考えています。作業効率アップやコスト削減はもちろん、手がけた製品が環境に配慮したものであることは、環境保護という観点からも良いことなのでは」と山口社長。

菓子メーカーなど、作り手にもメリットをもたらす
菓子メーカーなど、作り手にもメリットをもたらす

このように、製粉業者と製造業者双方にメリットがあったBG無洗米加工への転換。無洗米を使用した米粉は、試験的に導入してもらった製造業者からも好評価を得ているそうですが、それでも課題はあると経営企画本部長の大塚忠宜さんは話します。
「長年お付き合いをしている取引先の中には、無洗米で加工した米粉へすぐに切り替えることを慎重に考えているところもあります。きちんとしたデータやサンプルを提示して、品質が向上しました、見た目もキレイになりますよとアピールしても、すぐには納得していただけない。職人気質といいますか、長年お客様に愛されている製品を作り続けている会社の矜恃なのでしょう。今回の事に限らず、新しい試みには必ずあることですが、そうした方々にも技術部門や営業担当と連携し、今後も丁寧に説明していくことを心がけていきたいと考えています」

「未来型製粉工場」として米粉の可能性に期待

本格稼働を開始した群馬製粉のBG無洗米加工装置。初年度となる2024年は、同社の製品ラインナップのうち米粉で1~2割、餅米で2割程度を無洗米に切り替えていく予定とのことです。今後の展開について、さらにお聞きしました。

BG無洗米加工装置の導入に当初から携わってきた製造本部長の中澤稔さんは、「今回導入した設備で製造した無洗米は、当社のほかの製品にも展開していく予定です。稼働状況も安定してきたので、これからは製造スタッフが得てきたノウハウをより多くの人が共有することで、さらなる効率アップを目指します」と話します。

「未来型製粉工場」として米粉の可能性に期待
「未来型製粉工場」として米粉の可能性に期待

山口社長は「当社が環境保護に取り組む『未来型製粉工場』であることを、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。高品質な日本の米は、海外で注目されている食品の一つです。そこに環境への配慮という付加価値をプラスすることを当社のアピールポイントにして、日本の米の実力と魅力を積極的に発信してきたいと考えています」と話してくれました。

日本の穀粉業界に新たな潮流を生み出し、日本の米の魅力を世界へ発信する企業へ。今後も群馬製粉の取り組みに注目が集まることでしょう。