米粉工場の製粉能力を高めて、良質の米粉と米粉麺の供給を拡大

株式会社名古屋食糧(愛知県名古屋市)は、米の流通をはじめ、米穀製品や米飯加工品の開発・製造・販売のほか、米粉の製粉・加工品の開発に至るまで、米に関する幅広い事業を展開しています。グルテンフリーやアレルギー対応で小麦粉に代わる米粉のニーズが高まりを見せるなか、その裾野を広げるために製粉能力と品質を向上させ、米粉・玄米粉を使ったパスタの製品開発を推進しています。その取り組みについて、同社加工・食品事業部統括本部の部長、西岡孝格さんに話を聞きました。

米粉の幅広い用途に対応、製粉技術の強みを生かす

米粉の幅広い用途に対応、製粉技術の強みを生かす

名古屋食糧の米粉事業には20年近い歴史があります。2014年には一宮市に米粉工場を竣工して事業を拡大し、米粉・玄米粉の製粉とその加工品の開発・製造をしてきました。同工場は、小麦の持ち込み禁止で食品安全システム認証のFSSC22000を取得しています。

「近年、各メーカーさんで麺やパンなどの米粉製品の開発が進んでいます。当社でも特に米粉の麺を広く食べていただけるように、上流工程の製粉を強化しつつ、業務用・小売用の加工品を開発・製造することで、米粉を原料から最終商品までの幅広い形で届けることを目的に今回の事業に取り組んできました」と西岡さんは話します。

製粉事業では、主に原材料として食品メーカー各社の用途に応じて使いやすい米粉を提供してきた同社。米粉の加工性や食感に影響するデンプン損傷率を高くも低くも、用途によって粒度は細かくも粗くも、総合的にコントロールできる技術力が同社の製粉事業の強みです。

同社の製粉技術は、特に細かい粒度に対応していることに定評があります。実際に流通しているものでは最小20ミクロン(写真右)の微細粒を実現しています。一方で粒度の粗いものでは450ミクロン(写真左)などにも対応し、メーカー各社の意見を聞きながら、求められる米粉の性質を実現しています。

米粉の幅広い用途に対応、製粉技術の強みを生かす
米粉の幅広い用途に対応、製粉技術の強みを生かす

この製粉技術を生かして、昨今、需要が増えている製パン・製麺用の米粉の品質をさらに高めつつ、より多く供給するために、今回の米粉商品開発等支援対策事業で米粉の生産能力を2倍に増強しました。

自社製粉の玄米粉で小麦粉と遜色のないパスタを開発

高品質な米粉を広く供給すると同時に、自社製品としても米粉の加工品のラインナップを増やしていくことが、同社の米粉事業のテーマです。これまでも、米品種を選定して米粉を製粉するところから、各種乾麺・生麺を開発・製造してきました。その種類は、ラーメン、うどん、パスタ、きしめんなど、バラエティに富んでいます。

今回の事業では、新たなパスタの開発に取り組みました。一般的な小麦粉のパスタと調理面でも喫食面でも違和感のない米粉のパスタを目指して、ショートパスタ2種(フジッリ、リガトーネ)、ロングパスタ3種類(1.7㎜、2.2㎜、リングイネ)を開発しました。

自社製粉の玄米粉で小麦粉と遜色のないパスタを開発

「米粉のパスタにはいろいろなアプローチがあります。ライスパスタとしてお米らしさを引き出すこともできますが、飲食店やご家庭の食卓で小麦粉のパスタとの置き換えができるように、小麦粉と遜色ない玄米粉の生麺をつくりました」と西岡さん。

米穀卸の同社では全国のあらゆる品種の米を取り扱うことができますが、自社製品の米粉・玄米粉には、愛知県産「あいちのかおり」をはじめ、岐阜県産「ハツシモ」、三重県産の各品種など、主に東海三県産の米品種を使用しています。

「パスタの製品開発で最も難しかったのが成形です。特に細く長く成形するのは難しく、ある程度の強度が必要ですが、硬すぎると折れてしまいます。包装や流通のしやすさにも気を遣いました」と西岡さん。グルテンを含まない米粉は強度が出しにくく、ロングパスタをつくるのは難しいとされるなか、1.7mmのスパゲッティの製造に挑戦しました。

米粉の粒度とデンプン損傷率、生地の練り方、混ぜ方、水量、温度など、100通り以上のパターンでパスタ生地のテストを繰り返して、求める性質のパスタにたどりつきました。玄米粉99%の小麦粉不使用のパスタです。

市場が求める米粉のパスタ、品質・安全・おいしさを届けていく

市場が求める米粉のパスタ、品質・安全・おいしさを届けていく

それまでパスタはテスト機で成形していましたが、今回の事業で実機を導入。安定的な品質で製造をスケールアップすることができました。小麦粉と遜色のない米粉パスタは、主に業務や小売店向けに出荷され、発売後の売れ行きも好調です。特に健康食品店の顧客層とマッチしたようで、同社は販売計画を上方修正しました。

「小麦粉の麺が食べられない方に安心しておいしく食べていただくのはもちろんですが、グルテンフリーなどの健康志向でも米粉パスタは高いニーズがあります。海外のお客様が多いレストランでは、当社の米粉パスタの提供機会が増えていると聞いています」と西岡さん。

難しいとされるロングパスタの製造に、米粉の性質や成形方法の開発から取り組んだことで、米粉麺のポテンシャルを高めた同社。「海外にも自信を持って送り出せる米粉パスタができました」と笑顔で語ってくれました。