北海道発・国産米粉の洋菓子でブランディング

北海道物産展などの催事やECで、全国的に北海道グルメの販売を手掛ける株式会社Chokochip(チョコチップ、以下Chokochip、札幌市)。同社が販売する北海道発のスイーツは、国内はもとよりインバウンドでも人気です。新たなラインナップとして日本に馴染みの深い米粉で洋菓子をつくろうと、洋菓子製造のエーアンドエー(札幌市)とタッグを組みました。

初挑戦の米粉スイーツ、固定ファンへテスト販売

Chokochipマネージャーの澤田貴博さんは、「米粉商品開発支援対策事業が、新たな商品開発に取り組む後押しになりました」と話します。エーアンドエーのパティシエ田中彰人さんが、そのレシピ開発・製造を担当しました。

両者が米粉スイーツ4種類の商品開発に着手したのは、2023年8月。その3カ月後の11月にはフィナンシェ(3種類)、シフォンケーキ、ロールケーキ、クッキーの全商品が完成。Chokochipが運営するECサイトでテスト販売しました。同社のECサイトには固定ファンも多く、フィナンシェは発売後すぐに売り切れたほどの人気ぶりです。

「既存で小麦粉の同アイテムがあり、そのうえで米粉100%のものを試作してもらったので、ゼロから始めるよりもスピーディーに開発できたと思います」と澤田さん。とはいえ、エーアンドエーでは原材料の一部に米粉を配合した経験があっても、米粉100%の洋菓子の製造は今回が初めて。商品化するにはレシピの再検討が必要でした。

初挑戦の米粉スイーツ、固定ファンへテスト販売
米粉の特性にオリジナリティをプラス

米粉の特性にオリジナリティをプラス

「米粉はグルテンを含まないので、生地の食感や膨らみ方が小麦粉とはまったく違います。レシピ開発ではそこを試行錯誤しました」と話すのは、パティシエの田中さんです。アイテムごとにその工夫を聞いてみました。

まず、フィナンシェに関しては、膨らみ方が弱くなる傾向がありました。エーアンドエーが自社で保有するフィナンシェのレシピは使わずに、バターの分量から粉の分量まで、すべての材料の配合を一から組み直したと言います。焼き上がりのパサつきを抑えるために水分量を調整してしっとり感を残しています。あずきは自社で甘さを控えめに炊き、そこにフィナンシェ生地を混ぜ込んだことで米粉の生地にあずきが香り、和を感じるフィナンシェに仕上げました。それをプレーン生地との2層仕立てにしたところにオリジナリティがあります。

また、膨らみ方の違いがわかりやすく出るのが、シフォンケーキです。小麦粉を使うとふわふわと軽い食感になりますが、米粉ではしっとりとした食感になります。その特徴を生かして、しっとり・もちもちの米粉のシフォンケーキに仕上げました。

生地の膨らみ方の調整は、ロールケーキが一番難しかったと言います。ただ膨らませるだけではなく、シフォンケーキ同様にしっとり・もちもち感を出しつつ、中身のクリームを包み込むところで試行錯誤を重ねました。

澤田さんが試食して驚いたというのが、米粉のクッキーです。市販の米粉のクッキーにはさまざまなタイプがありますが、同社のそれは「口に入れたとたんに溶ける」と言われるほど柔らかく、舌の上でホロホロと口溶けの良い食感が特徴。米粉の甘さが感じられるレシピにしたことで、他社製品との差別化になっています。
「グルテンのない米粉のクッキーは硬くつくらなければ輸送・販売中に崩れてしまいます。柔らかいクッキーをつくるのはリスクが高いチャレンジですが、冷凍商品として届けられることが私たちの強みです」と田中さんが話してくれました。

米粉の特性にオリジナリティをプラス
工場拡充で量産化、北海道発の越境ECも視野

工場拡充で量産化、北海道発の越境ECも視野

「米粉の洋菓子の商品化は、従来の製法を見直したことが成功のポイントでした」と田中さんは振り返ります。エーアンドエーがOEMで培ったさまざまな食材を使った洋菓子製造の経験が、米粉の商品開発に生かされる形となりました。冷凍商品を取り扱ってきた両社のノウハウもまた、解凍および半解凍したときの洋菓子のおいしさの再現性に欠かせません。

「冷凍商品は常温の焼菓子や半生菓子よりも賞味期限が長いので、販売する側としても売りやすいですね」と澤田さん。初回ロットのテスト販売が好調で、2024年春には工場を拡充して量産体制へ。将来的には北海道ブランドとして越境ECも視野に入れています。

日本らしさを訴求するために商品のパッケージやラベルにもひと工夫。商品ロゴを「こめこのおかし」とひらがなにすることで、柔らかさとやさしさを表現。こめこの文字を米粒のイラストで囲んでビジュアルからもアピールしています。

「新たに開発したこめこのおかしが、当社のEC全体の売上を底上げしています。米粉だからおいしいお菓子がコンセプト。既存の小麦粉のラインナップと食べ比べて、米粉ならではの風味や食感を楽しんでもらえたらうれしいですね」と澤田さんが、本格販売に向けての抱負を語ってくれました。

工場拡充で量産化、北海道発の越境ECも視野