新商品とおいしさ向上で米粉生活を続けやすく、グルテンコントロールの心地よさ発信

「OKOME BAKERY(おこめベーカリー)」は、株式会社ファンケル(以下、ファンケル)が「グルテンコントロール」を提案し、2022年にスタートした米粉パンのブランドです。現在、全8種類のベーグルと4分の1サイズの「BAGELet®」を定番でラインナップし、オンラインストアで販売しています。

グルテンフリーの「不」を解消、調査結果から新たな提案

ファンケルは、世の中の不安や不便など「不」を解消するという創業理念に基づく事業展開をしています。健康的な食生活の選択肢としてグルテンフリー商品のニーズが高まる一方で、それを継続するには、価格の高さ、食味の物足りなさなどが課題。令和5年度米粉商品開発等支援対策事業(以下、本事業)で、これら『不』の解消に取り組みました。

グルテンフリーの「不」を解消、調査結果から新たな提案
グルテンフリーの「不」を解消、調査結果から新たな提案

「米粉商品は小麦のものと比べて高いと感じる方が多い中で、さらに米粉以外の原材料が値上がりしています。手に取りやすい価格を維持するために、新商品を開発しながら、全商品の処方改良と製造工程の改善でよりおいしく量産化する挑戦をさせていただきました」と「OKOME BAKERY」ブランドオーナーの藤田恵里佳さん。

価格は据え置き、目指したのは小麦粉のベーグルを超える味。主原料の米粉と玄米粉の配合と機械の複雑な工程を見直し、配合の調整と製造テストを繰り返し、納得のいく食感での量産化に成功しました。

「グルテンフリー」は小麦アレルギーなどに対応してグルテンを完全に除去した食事法を指すのに対して、「グルテンコントロール」は自分のペースでグルテンの摂取量を柔軟に調整する食生活です。同社は、グルテンフリー商品の課題を確認するため、アンケートとインタビューを通してグルテンフリーに関する定量的・定性的な調査を実施しました。

その結果について、藤田さんは「グルテンフリーに対して、ハードルが高そう、おいしくなさそうといった印象が多く、『やってみたけれども値段が高くて継続できない』『制限していること自体にストレスを感じてやめてしまった』などの声が聞かれました。また、アレルギー対策と捉えられ自分事化できない方が多くいらっしゃることも判明しました」と話します。

これを受けて、「それほど厳しく制限せずに、おいしい日本のお米を使った商品として気軽に手に取ってもらえるように、『グルテンコントロール』という言葉でお伝えしたいと考えました」と言葉を続けます。この調査がこれまでの仮説を裏付け、どんな人にどのような商品を届けたいかのコンセプトが明確になったことで、社内の意思統一が進み、商品開発からプロモーションまで円滑に連携できたそうです。

米粉と玄米粉の配合が鍵、ファン高評価の新フレーバー誕生

小麦粉を超える米粉パンを実現する鍵は、米粉と玄米粉の配合です。繰り返し調整を重ねて、ベーグルの特徴であるもっちりとした食感が完成。将来的に、ベーグル以外にもパンの種類を増やしていく試金石になりました。

2024年の新商品「ピスタチオチョコ」のベーグルは、国産米粉・玄米粉にカカオを配合した生地でバレンタイン向けに商品開発をして2月に発売。季節商品でありながら、同年末に同社がインスタグラムで実施した「2024年お米ベーカリー総選挙」で、お気に入りとして投票するファンが多かったそうです。

米粉と玄米粉の配合が鍵、ファン高評価の新フレーバー誕生
米粉と玄米粉の配合が鍵、ファン高評価の新フレーバー誕生

「コーン」はベーグルとミニベーグルのBAGELet®で展開し、同年12月の初回販売で、購入者に商品に同梱したQRコードでアンケートを実施。「定期便のアイテム(定番商品)に入れてほしい」などの好評を得たと言います。

「ピスタチオチョコ」は、既存商品の「ショコラ」のカカオ生地がベースとしてあるものの、「コーン」は総重量の20%を占めるスイートコーンと生地の甘さのバランスを取るため、ゼロベースから米粉と玄米粉の配合をつくり上げたという点で難易度が高く、開発により多くの時間が費やされました。

商品開発で事業に弾み。可能性が広がるグルテンフリー商品

OKOME BAKERYを通して、グルテンコントロールという新しい食生活を浸透させるために、「他のフレーバーも検討して、新商品をどんどん出して行きたい」と藤田さんは意欲を示します。本事業後に、冷凍品で展開してきたベーグルを常温品でも販売する計画も進行中です。

顧客とのコミュニケーションを重視する同ブランドは、新商品をつくる際はインスタグラムのアンケートで、フレーバーなどの要望を定期的に収集しています。OKOME BAKERYのファンネームも顧客による公募で「おこめいと」に決定するなど、SNSを通じたファンマーケティングも商品開発の成功に貢献しています。

商品開発で事業に弾み。可能性が広がるグルテンフリー商品

米粉について藤田さんは、「多様な米粉が開発され、小麦粉の代替で使いやすくなっているのはありがたいです。一日のパンや麺の1食を米粉商品に変えるだけで無理なくグルテンを控えた食生活ができ、同時に日本のお米の生産者さんを守ることにもつながります」と語ります。

さらに、日本の米粉を使ったグルテンフリー商品を海外にも広めようと、2024年11月に渋谷で開催された試食調査イベント「Rice Flour Festival」にも出店。ベーグルを試食した外国人の93%がその味を高く評価しました。本事業の仕上げに、アメリカで日本製グルテンフリー加工品の市場調査を行い新たなマーケットを開拓していく予定。日本の米粉の可能性は海外にも広がっています。