うどんでもラーメンでもない、「おこめん」を麺の新ジャンルに

うどんでもラーメンでもない、「おこめん」を麺の新ジャンルに

広島県で江戸時代から16代にわたり米をつくり続けてきた農家が、令和のいま、米だけでなく米粉を用いた麺の普及に取り組んでいます。2004年に法人を設立し、2014年に商号変更した株式会社おこめん工房(以下、おこめん工房)は、祖業の米づくりと並行して日本に新たな食文化を育みたいと願い、「おこめん」という米粉を使用した自社ブランド麺の製造販売を手掛けています。「おこめん」に対する思い、「おこめん」で目指す未来などについて、代表取締役の井掛雅祥さんが話してくれました。

麺をつくるだけでは伝わらない。求められた提案力

「おこめん」は、広島県産の米からつくった米粉と北海道産のでんぷんでつくられています。添加物や小麦粉が入っていないので、グルテンフリーで体にやさしい安心の米粉麺です。米粉由来のもちもちした食感とコシの強さ、茹で時間が90秒と短時間で、常温で5ヵ月保存できる利便性の良さなどさまざまな特徴がある食材です。「おこめん」は井掛さんのお父様である先代により2005年に開発されました。2007年には米粉に特化した商品としてブラッシュアップされ、これが現在の「おこめん」の基本になっています。ラインナップは白米麺と玄米麺の2種類。

「公務員を務めてきた父が、公務員時代に取り組んできた地域活性への思いと長年培ってきた米づくりのノウハウを地域のために生かしたい、と早期退職して起業しました。私はもともと建築の世界にいましたが、建築を通じた地方ならではの街づくりが目標だったので、地域活性の一環として父と一緒に『おこめん』に取り組むようになりました。2007年に米粉に特化した『おこめん』を開発しましたが、最初はゴムのような食感でした(笑)。米粉をベースとする『おこめん』の基礎はできましたが、いまなお試行錯誤を繰り返しています」と「おこめん」とご自身とのつながりを話す井掛さん。

麺をつくるだけでは伝わらない。求められた提案力

今回の米粉商品開発等支援対策事業を活用した目的も、より良いものをつくり続ける試行錯誤の一環だといいます。「おこめん」はベトナムのフォーに代表される東南アジアの米粉麺文化にならい、古来より米文化に親しんできた日本であれば、東南アジア以上に米粉の麺文化が育つだろうと考えたことが開発のきっかけでした。米粉麺文化が日本で浸透すれば、米の多様化、そして地域振興にもつながります。

しかし、いまなお米粉を使った麺類の認知が低いと井掛さんは話します。「おこめん」はラーメンやパスタ、サラダなど米と同様に料理のジャンルに囚われないさまざまな食べ方を楽しめるのが特徴のひとつですが、「その特徴が実は弱みだったんです。『おこめん』はオンラインショップだけでなく、道の駅などで店頭販売もしていますが、手に取ってもらえないことが多いんです。そこでお客様に聞いてみると『どうやって食べればよいかわからない』『どんな料理に合うんだろう?』というお声。つまり、食べ方を提案できていないことが浸透しない一番の理由だと感じました」と井掛さんは「おこめん」の課題を話してくれました。

「食べやすい」「食べたい」と思ってもらえる商品の開発

「食べやすい」「食べたい」と思ってもらえる商品の開発

「おこめん」の食べ方提案として、以前からレシピ開発に取り組んできたそうです。ただし「おこめん」をうどんやラーメンなどすでにある麺の代替ではなく、「おこめん」という新しい麺のジャンルにしたいという思いにこだわりすぎて、「新しい食べ方を提案しないといけないと躍起になっていた」と井掛さんは振り返ります。
日本人になじみのある食べ方で米粉麺文化を提案しようと改めて取り組んだのが、今回の事業で開発した「おこめんつゆ付きセット」でした。

もともと、うどんが好きな方には白米麺、そば好きの方には玄米麺をお勧めしていたといいますが、「おこめんつゆ付きセット」は麺だけでなく、麺つゆとセットにして冷やしそばと同じように食べてもらう商品として“食べやすさ”を意識して開発されました。麺自体も麺つゆとのからめやすさを考慮し、従来品よりも少し細くし、茹で時間はわずか50秒に短縮。食べやすさ、調理のしやすさだけでなく、玄米麺と麺つゆはグルテンフリーで、玄米の栄養がしみ出たゆで汁を米湯として楽しめるなど健康面にも配慮されています。玄米には健康米としての人気が高い一方、手間や美味しさに対するマイナスイメージが拭えません。茹で時間の短さはそのイメージ軽減にプラスに働くはずと井掛さんは自信を見せます。

100年後の未来を思い描きながら、常に前に

すでに「おこめん」は県内の学校給食に採用されるなど、特に玄米麺の需要が伸びているといいます。この流れを加速して、生活の中に「おこめん」を浸透させていきたいと話すとおり、井掛さんは事業を活用して焙煎器や製粉機などの設備を導入し、玄米麺の生産量を1.5倍に増強させました。

「当社の根底にあるのは、地域活性です。100年後も住んでいられる田舎の仕組みをつくることを目標にしています。そのためには、この地の基幹産業である稲作を時代にマッチングさせる仕組みが必要だと思っています。つまり、米の多様化へのチャレンジ。小麦ではない新しいジャンルの食品を米粉でつくっていくことが、稲作産業の発展につながると考えています」と米粉でつくる未来への思いを熱く語ってくれる井掛さんは、台湾の麺料理である麺線や焼きそばにできる太めの米粉麺など、100年後を見据え、すでに新しいアイデアを続々と思い描いています。

“100年後の未来を思い描きながら、常に前に