アルファ化玄米粉でかなえる質の高い食生活の実現

アルファ化玄米粉でかなえる質の高い食生活の実現

建築設計業を生業とする傍ら、イタリアンレストランも経営していたオーナーが特許技術を備えた摩擦乾燥製粉装置に出合ったことが、玄米粉を用いてさまざまな商品開発に乗り出したきっかけだという合同会社海楓社(以下、海楓社)。同社が商品に使用するのはアルファ化された有機玄米粉。その特性やアルファ化玄米粉でつくる商品の特徴などについて、輸出事業推進室の宮原一郎室長に話を伺いました。

粉だけでも食べられる、利便性や安全性にすぐれるアルファ化玄米粉

アルファ化玄米粉は、製粉時にアルファ化という工程を経ることでつくられる玄米粉です。従来の玄米粉より保存性が高く、加水した際の粘り気がグルテンや卵の代替になることで、従来の米粉ではひび割れが生じやすいお菓子づくりにも使用しやすいのが特徴です。吸水性が高いため、従来の半分程度の粉量で倍の生地がつくれ、コストパフォーマンスやフードロス軽減の点でも優れています。もちろん、グルテンの代替になるので、小麦粉を使わずにふんわり食感を実現し、アレルギーの心配もありません。

粉だけでも食べられる、利便性や安全性にすぐれるアルファ化玄米粉

海楓社がつくるアルファ化玄米粉は、特許技術を備えた製粉装置により米を炊いたような状態でそのまま粉になるそうです。
「そのため、例えば当社の玄米粉をお湯につけておけば、お粥のようにそのまま乳幼児や高齢者でも食べられます。機械の中で玄米同士がぶつかり合って発生する摩擦熱で殺菌されながら粉化していくので、細菌が残る心配もありません」と宮原さんは話します。
利便性や安全性にすぐれるアルファ化玄米粉であるため「店頭に置いておけば、自然に売れていくだろう」(宮原さん)と見積もっていたそうですが、現実は違っていました。
「実際に食べていただき、味などに納得していただかないと、アルファ化の価値どころか玄米粉自体の認知も図れませんでした。加工品として、まず玄米粉を体験していただくお膳立てが必要なことを痛感しました」と当初の手痛い思い出を宮原さんは振り返ります。

ぜひ手に取って食べてほしい栄養価の高い皮厚のシュークリーム

ぜひ手に取って食べてほしい栄養価の高い皮厚のシュークリーム

そこで、同社は玄米粉や玄米麺を使用した料理や玄米粉パン、玄米粉シュークリームなどを開発製造し、工場建屋の2階に開いているレストラン「海楓市場」で提供することに。1階の製粉工場はおよそ4年前から計画し、1年半ほど前に稼働に至ったといいます。
レストラン経営の経験があったので、食の安全や味に常に注意を払っていた海楓社は、最初から栄養価が高い玄米を製粉することに決めていたそうです。
「玄米は、白米より手間やコストが必要であるのは確かですが、栄養価や旨味を優先しました。当社が目指すのは質の高い食の実現です」と宮原さんは玄米粉への思いを話します。

米粉を使ったレシピ開発を専門家に委託して生まれたパンやシュークリームなどは、その思いを実現できていると宮原さんは自信を覗かせます。各種商品には、今回の米粉商品開発等支援対策事業を活用して開発した玄米粉生地が使用され、大量生産品とは一線を画す栄養価やおいしさをお客様に提供します。
「シュークリームはとても皮が厚いんです。大量生産品に比べると確かに割高ですが、栄養価が高いので、その価値はあると思います。体に良いのでお子さんに食べてほしい。補助金は製粉設備の改良などにも活用しているので、生産力を増強し、できるだけ早い時期に、より購入していただきやすい価格にしていきたい」と宮原さんは話します。

海外でも質の高い食を浸透させたい

また、当初からアルファ化玄米粉の海外輸出を検討していたという海楓社は、食品安全に関する国際規格であるISO22000を取得しており、今回の補助金をニューヨーク市場のニーズ調査などにも活用しています。「健康志向の高い人たちが多いニューヨークを拠点に、アルファ化玄米粉をアメリカのBtoB市場で販売していきたいと考えています。日本人の購買意識として、海外で流行する日本製品を好む傾向にあるので、将来的には逆輸入することで日本国内での販売拡大につなげていければと考えています。また、ニューヨークにはペットにお金をかける愛好家が多いので、アルファ化玄米粉でペットフード商品の開発も進めています」と今後の展望を宮原さんは話してくれました。

海外でも質の高い食を浸透させたい

もちろん、国内におけるアルファ化玄米粉の認知や浸透拡大も強化していきたいと話す宮原さん。「アルファ化玄米粉は消化に良いので、離乳食や介護食に利用できます。また、保存性も高いので防災用品にも活用できると考えています。小麦アレルギーを緩和する取り組みとして、日本人になじみ深い玄米にこれからも積極的に関わっていきたいです」(宮原さん)
海楓社は、レストラン「海楓市場」で提供する料理に地元の野菜などを使用した地産地消への取り組み、地域のママたちを雇用して海楓市場を地域の交流拠点として運営するなど、質の高い食だけでなく、“より良い社会”の実現にも引き続き積極的に取り組んでいってくれることでしょう。