個性も味も違う多彩なパンで、米粉の魅力を全国の食卓へ

個性も味も違う多彩なパンで、米粉の魅力を全国の食卓へ

全国のスーパーなどの小売店や生協の宅配サービスで販売しているパンを製造しているほか、「リトルマーメイド」などベーカリーの運営も行っている株式会社タカキベーカリー(以下、タカキベーカリー)。昨年に続いて米粉商品開発等支援対策事業を活用し、米粉を使用したパンの新商品開発やリニューアルを実施しました。それぞれのブランドコンセプトに合わせ、工夫を凝らした商品がラインナップしています。

玄米の甘さと香ばしさを、こだわりの製法で

「リトルマーメイド」は本事業を活用し、玄米を使った米粉にこだわって商品開発を行いました。2024年7月には玄米粉の美味しさと香りをより楽しめる「玄米ローフ」と、ゴロゴロ入ったマカダミアナッツと絶妙な塩加減が素朴な玄米の味わいとマッチした「玄米ロール」を発売。さらに2025年3月に、和食材である金時豆を包んだ「玄米の金時豆パン」を発売しています。

「米粉や玄米粉を使ったパンは、実は『リトルマーメイド』の定番商品。これまでもずっとラインナップされている歴史ある商品なんです」

玄米の甘さと芳ばしさ、そして豊富な栄養を、こだわりの製法で

そう話すのは、「リトルマーメイド」の新商品開発を担当した長田ゆかりさん。タカキベーカリーはもともと和菓子製造を行っており、米粉や玄米粉を扱うことが多かったそうです。ただ、和菓子製造は中止となり、その際に「米粉や玄米粉を使ったパンに挑戦しよう」と生まれたのが「リトルマーメイド」の米粉・玄米粉入りのパン。
「これまでは玉生地と呼ばれる冷凍パン生地を各店舗に配送していましたが、2024年度に新たに板状の冷凍パン生地『玄米シート』を開発しました。板状になったことで、ローフとしてはもちろん、フィリングを包む加工もしやすくなりました。この『玄米シート』を使ってつくられているのが今回の3種類の新商品です」

玄米の風味や味わいをより感じてもらうために、「玄米シート」は玄米の配合量を20%までアップ。また、玄米粉は、90年以上の歴史を誇る広島県の老舗の穀粉メーカー「上万糧食製粉所」と共同開発した焙煎玄米粉を使用しています。
「その日の天候・湿度に合わせて人の手で焙煎されるのが上万糧食製粉所様のこだわり。玄米の産地も中国地方産と限定され、独自の2段階焙煎法でつくられています。今回は上万糧食製粉所様にも試食してもらい、ご意見をいただきながら開発を進めました」

玄米の甘さや香ばしさを存分に楽しんでもらうため「焼かずにほんのり温めるのがポイント」と長田さん。 「玄米ローフは卵料理と合わせて、野菜とのサンドイッチにもおすすめ。玄米ロールは木の実と、金時豆パンは和食材と玄米粉の相性の良さを感じていただけます。ずっしりたくさん入ったフィリングの食感も楽しんでください」

人気のミニブレッドにしっとりもっちりの米粉入りパンが仲間入り

人気のミニブレッドにしっとりもっちりの米粉入りパンが仲間入り

タカキベーカリーでは、以前より販売していた「米粉入りもっちりブレッド(もち麦)」が好評で、さらなるリニューアルを行ったのが「米粉&もち麦入り食パン」。商品開発を担当した多久美香理さんは 「しっとりもっちりとした食感が米粉を使ったパンの特長です。今回のリニューアルでは、小麦粉を国産小麦のものに変更し、さらにもち麦を増量することで、よりもちもちとした食感となりました」と話します。

米粉や国産小麦を使用すると、パン生地の水分量が増えやすいため、日持ちがしづらい、形状が安定しにくい、生地が柔らかいので機械製造しづらいという問題が起こります。さらに、米粉を使ったパンは、膨らみにくく、焼成後にも腰折れが起きて形が崩れてしまうこともあります。全国のスーパーなどに陳列されるタカキベーカリーのパンにとって、売場での見た目が悪くなってしまうのは致命的。水分量を抑えれば腰折れなどは防げますが、それではウリでもある「しっとりもっちり」を楽しんでもらえません。

「水分の配合量を少なくし、さらにしっかり焼けば、形は保てます。でもそれではパンが硬くなる。このシリーズのウリは『耳までしっとりやわらかい』なので、必要以上に水分を少なくしたり焼きすぎるとそれは実現しない。そういったせめぎ合いの中、少しずつ配合量や焼き方を工夫して完成したのが『米粉&もち麦入り食パン』です。個人店の少量生産でこだわっているパン屋さんにも負けない水分量です。焼いてももちろん美味しいのですが、ぜひそのまましっとりした生地を楽しみながら味わっていただきたいです」

また今回、国産小麦を100%使用してますが(手粉は除く)、国産米粉と国産小麦の組合せは、消費者にとっても「安心感」や「信頼」を感じられるキーワードとして親和性が高いとのこと。年齢を問わず手に取っていただきやすい商品となっていると多久さん。

「『米粉&もち麦入り食パン』は、穀物を楽しむミニ食パンシリーズ(米粉・全粒粉・ライ麦の3品)の1品として、発売しました。穀物の入ったパンを『気軽に毎日の食卓で楽しんでいただきたい』というコンセプトのシリーズです。米粉入りのパンは洋食はもちろん、和食材との相性もいい。夕食のおかずに合わせて、主食を米粉入りのパンにするという食べ方もおすすめです。『時間がなくてお米を炊くのは大変』というときなど、手軽に食べられるので便利です」

パンづくりの可能性を広げる米粉を、今後もタカキベーカリーではぜひ活用していきたいと話していただきました。

「アップサイクルでサステナブルな米粉パン」という新たな挑戦

タカキベーカリーの人気のシリーズの1つ「石窯パン」。石窯の遠赤外線効果で皮はカリッと香ばしく、それでいて中はもっちりしているのが特長です。その「もっちり」を、米粉を使うことでさらに追求したのが「石窯 米粉と国産小麦のミニ食パン(冷凍・生協宅配限定販売)」です。

「生地に使用している米粉は、酒米として有名な山田錦と秋田県産うるち米です。2種類をブレンドすることで、風味よく豊かな味わいになりました。小麦粉も北海道産ゆめちからを使うことで、米粉のもっちり感を引き立てています。酒米の米粉でパンの生地をつくるとべちゃべちゃの生地で扱いにくく、また発酵後のボリュームもなく膨らみにくい。酒米はそもそもパン製造には不向きなのです。でも、多様な米粉を取り寄せて試作した際に『これしかない』と美味しさに驚き、この酒米の米粉でパンをつくりたいと決めました」
そう話すのは、「石窯 米粉と国産小麦のミニ食パン」を開発した岩永亜弥子さん。酒米でつくった米粉の魅力は、なんといっても米粉の「うまみ」と岩永さんは言います。

「アップサイクルでサステナブルな米粉パン」という新たな挑戦

「日本酒製造では、酒米を磨いて中心部だけを使う。表面を磨くことで日本酒は雑味がないすっきりクリアな味になるからです。高級な日本酒では70%ほども米を磨いて使いますが、磨き落とされた米の表面部分には、栄養素がたっぷり含まれているんです。それはパンにとっては『うまみ』。山田錦の米粉は、うるち米の米粉と比べてパンにしたときの『うまみ』が極上でした」

酒米・山田錦の米粉を使うと決まったものの、水分量の高い扱いにくい生地は製品化が難しく、試作を何度も繰り返したと岩永さん。酒米・山田錦に加え、秋田県産うるち米の米粉をあわせて配合すること、さらに国産小麦を加えることでパンの形に焼き上げることができました。

「ぎりぎりまで米粉の割合を増やしたくて、2種類の米粉に国産小麦をあわせることで完成させました。おかげで、石窯シリーズならではの皮の香ばしさに、米粉を使ったパンならではのしっとりもっちり食感、そして酒米のうまみが『そのままでも味わい深い』と、とても好評です」

開発のきっかけは、生活協同組合からの相談。「米の消費量を向上させよう」という取り組みを推進するなかで「米粉を使ったパンでも貢献したい。協力して欲しい」と声がかかったといいます。
「小麦粉が主原料のパンでも米粉を使うことで米の消費に貢献できる。そして、酒米の磨きくずとなっていた部分を、米粉に加工することでさらなる米粉の可能性を広げることができ、生協ならではのおいしいパンとして新しい価値づくりにつながりました。アップサイクルな取り組みとしても継続していきたいと、生活協同組合様と話しています」

焼成後、独自の冷凍技術で冷凍されているので賞味期限が長いのも特長。レシピの紹介や「和の食材と合う」といった生活協同組合の広報活動も後押しし、年齢問わず多く組合員様からご支持の声が挙がっているとのことです。
今後は全国の生協宅配での取り扱いが予定されており、「米粉でつくった石窯パンの美味しさと魅力を多くの人に知ってもらいたいですね」と岩永さんは話します。

様々なブランドで、様々な米粉を使ったパンをつくり、全国の食卓に届け続けているタカキベーカリー。伸びる需要に対応できるよう、今後も継続して新たな魅力ある米粉入りパンの開発を続けるとのことです。