伝統雑穀のソルガムと地元・東松島産ひとめぼれ米粉でつくった本格グルテンフリースイーツ。米油、甜菜糖、平飼い卵、豆乳など厳選素材を使用し、クロスチャージユニットでしっとり・ふわふわ食感を長期保存。CO2吸収率の高いソルガムを2025年度から自家栽培することで、環境配慮と地域の持続可能性を目指しています。
・プレーン(ホール) 2,800円(税込)/400g
・プレーン(カット) 350円(税込)/50g
・トマト(ホール) 3,120円(税込)/400g
・トマト(カット) 390円(税込)/50g
・奥松島イートプラザ
宮城県東松島市野蒜ヶ丘1-15-1
Tel.0225-88-2611
・RISE BEACH奥松島
宮城県東松島市宮戸室浜62-1 RISE BEACH
Tel.050-8883-9364
・ハライソ
宮城県東松島市野蒜字亀岡80
Tel.0225-25-7319
・自社ECサイト
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東日本大震災の津波被害により閉校した宮城県東松島市の野蒜小学校。その跡地を利活用し、防災と復興をキーワードに体験型プログラムを提供しているのが貴凛庁です。同社は現在、事業の第2フェーズとして同地に「KIBOTCHA(キボッチャ)スマートエコビレッジ」を構築中。この取り組みの象徴ともいえるのが、防災食にもなる「米粉ソルガムシフォンケーキ」の開発です。
「KIBOTCHAスマートエコビレッジ」は、平常時は教育プログラムを収益化しながら地域コミュニティとして機能し、有事の際には1万人規模の安心・安全が担保された避難所に生まれ変わる仕組みを持っています。このプロジェクトは、全国約800人のビレッジ住民票を持つ人たちと共に取り組み、持続可能なまちづくりを目指しています。
その貴凛庁が「米粉ソルガムシフォンケーキ」の開発に乗り出した背景には、地域持続化への深い洞察がありました。同社代表取締役で元自衛官でもある三井紀代子さんは次のように語ります。
「ビレッジの衣食住の『食』の部分でネイチャーポジティブ(自然再興)を実現し、気候変動への適応と環境保全に貢献したいと考えました。その一環として、2025年に1ヘクタールのソルガム農園を開設します。このソルガム粉と地域の米粉を活用し、グルテンフリーで健康的な食を提供するとともに、防災食としても機能する商品を開発したいと思いました」
ソルガムはイネ科の植物であり、成長過程で二酸化炭素を吸収することで、環境負荷の低減に貢献すると期待されています。和名をタカキビと言い、東北の宮城県や岩手県で古くから活用されてきた歴史があります。また、東北は米の産地としても知られ、ソルガムと米粉の組み合わせは地域に根差した持続可能な食品開発につながります。
ソルガムには食物繊維やビタミンB群、米粉にはタンパク質や炭水化物などが含まれ、栄養面でもメリットがあります。そして、どちらもグルテンフリーであることから、災害時に多くの人が安心して食べることができます。
温めてきたこの構想は、今回の米粉商品開発等支援対策事業によって実現へと動き出しました。
地域活性化につながる商品開発を目指して、同社が米粉の原料として選んだのは、東松島産「ひとめぼれ」。宮城県生まれの米品種です。この米粉を石臼製粉機で丁寧に製粉し、ソルガム粉と組み合わせました。健康志向に配慮して、材料には米油、甜菜糖、卵は平飼いのもの、牛乳の代わりに豆乳を加えています。
宿泊施設や飲食店の運営も手がける同社では、これまでも米粉を菓子づくりや料理に使用してきました。しかし、ソルガム粉とのバランスを見つけ出すまでには、試行錯誤の連続でした。
「米粉にはもちもち感、ソルガム粉にはざらざら感がありますが、それぞれの個性を強く押し出しすぎると、重い食感のシフォンケーキになってしまいます。軽やかな仕上がりを目指して、米粉とソルガム粉の比率だけでなく、混ぜ方にも工夫を重ねながら手探りでレシピを開発しました」と三井さんは振り返ります。
当初は米粉とソルガム粉を半々で試作を開始しましたが、最終的には米粉の割合を多めに調整することで、理想的なバランスに到達しました。米粉の自然な甘みとソルガム粉の香ばしさが混ざり合い、食欲をそそる風味豊かなシフォンケーキに仕上がりました。
もうひとつの課題は、防災食としての保存性でした。粉としては長期保存が可能ですが、焼き上がりの状態で日持ちさせるために、食品熱交換装置「クロスチャージユニット(XCU)」を導入しました。この装置は食品の水分をコントロールすることで鮮度を保ち、品質の向上にも役立っています。その結果、シフォンケーキ特有のふんわり・しっとりとした軽い食感が長持ちするようになりました。
こうしてレシピを開発した「米粉ソルガムシフォンケーキ」は、スマートエコビレッジのベースとなる旧野蒜小学校にちなんで「ノビルシフォン」と名付けられました。現在、同社が指定管理で運営する観光案内所「奥松島イートプラザ」やKIBOTCHA内のレストラン「ハライソ」などで販売されています。
「米粉は地産地消できる食材であることが魅力。食育にも活用できます。健康志向の高まりに伴うグルテンフリーのニーズや食物アレルギー対応の観点からも大きな可能性のある食材だと感じています」と三井さんは語ります。
「米粉ソルガムシフォンケーキ」の展開として、地元の新鮮な野菜を使ったフレーバーの開発にも力を入れています。第一弾としてトマトを発売し、次にいちごの発売も予定しています。また、ワークショップでの活用や学校給食への導入を視野に入れつつ、さらに「米粉とソルガム粉の組み合わせでパスタなどにも挑戦したい」と意欲を見せます。
「KIBOTCHAスマートエコビレッジ内で自給率を高めることにも注目しています。食を通じた地域活性化を進めながら、有事の際の健康的な食の提供をしっかりと探求していきたい」と展望を語ります。
現在、ソルガム農園は初夏の種まきに向けて土づくりが進められています。米粉との相乗効果で、地産地消の推進と地域活性化への貢献を目指して、さらなる挑戦が続きます。