“麺づくりのプロ”が米粉100%のグルテンフリー麺を開発

“麺づくりのプロ”が米粉100%のグルテンフリー麺を開発

中華麺を中心に、さまざまなタイプの麺製品を製造・販売している株式会社ヤマナミ麺芸社(以下、ヤマナミ麺芸社)。同社では米粉商品開発等支援対策事業を活用し、新たに専用の工場を整備して米粉麺の開発に取り組みました。米粉という新たな素材を使っての商品開発は、それまでの小麦粉を原料とする麺づくりとは違う苦労があったそうです。同社で初となる米粉麺の開発ストーリーを、専務取締役の吉岩正純さんに伺いました。

長年の想いを実現すべく、米粉麺の開発に挑戦

「以前から米粉を使った麺に興味をもっており、いつか自分たちでつくってみたいと考えていました」と話す吉岩専務。米粉を使った麺を全国各地から取り寄せて試食したり、現地に食べに出かけるなど、リサーチを続けていたものの、事業として着手するには至っていませんでした。

他社製品の試食を重ねる中で、吉岩専務は米粉麺のボソボソとした食感が気になっていたそうです。「食感のよさは、麺のおいしさにも関係しています。長年麺づくりに携わってきた会社として、なめらか食感のおいしい米粉麺をつくってみたいという想いと、農林水産省による『米粉商品開発等支援対策事業』という後押しもあり、2024年1月に開発事業を立ち上げました」と振り返ります。
商品開発にあたり、ヤマナミ麺芸社では米粉麺専用の工場を新設。米粉商品開発等支援対策事業を活用して、ミキサーや計量器、麺を乾燥させる機器などを設置して製麺ラインを構築しました。新工場では試作品の調整を経て、2025年3月から製造を開始しています。

長年の想いを実現すべく、米粉麺の開発に挑戦
製造工程で発生した課題を着実にクリア

製造工程で発生した課題を着実にクリア

ヤマナミ麺芸社で開発した米粉麺は、数種類の国産米をブレンドした米粉を使用しています。もちもち食感となめらかな口あたりを得るための第一歩として、米から米粉の加工工程に注目し、委託先の製粉会社と何度も調整を行いました。

米粉での生地づくり、成形、乾燥させるという製麺工程でも、いろいろな部分で細かな調整が必要だったと吉岩専務は話します。「米粉には小麦粉のように粘りや弾力のもととなるグルテンが含まれていません。そのため最適な食感を得るための生地づくりには、特に時間をかけてじっくり取り組みました。米粉に加える水の割合や生地に適度な空気を含ませるための練り時間、均一な品質を保つための温度管理など、調整は多岐に渡りました」

吉岩専務を中心とする開発チームが最もこだわっていた“食感”に関しては、米粉に水を加えて混ぜ合わせる時間を小麦粉の麺よりも短かくし、シート状に伸ばしてロールに巻き付けた生地をしばらく寝かせて熟成させることで、水分量が均一になりなめらかな仕上がりになったそうです。
「グルテンを含まない米粉麺は、ゆでたときに麺が切れやすく、それがボソボソとした食感にもなっていました。私たちは米粉の特性を把握し、最適な水分量や熟成時間を見極めることで、目指していた食感にたどり着きました。完成までにかなり時間がかかってしまいましたが、おいしい米粉麺ができたと思っています」と話してくれました。

製造工程で発生した課題を着実にクリア
もっとおいしい米粉麺を目指し、開発は続く

もっとおいしい米粉麺を目指し、開発は続く

いくつもの課題をクリアして完成した2種類の米粉麺。「米粉ラーメン」は太さ約1.5mmのストレートタイプで、一般的なラーメンのようにスープと合わせて味わうほか、ゆでた麺を水で締めて冷やし中華やつけ麺に、フライパンで炒めて焼きそば風にと、多様な調理法で楽しむことができます。吉岩専務は「鍋のシメに米粉ラーメンを入れるのもお勧めですよ」と教えてくれました。
「米粉ラーメン」より少し太めの約1.6mmに仕上げた「米粉パスタ」は、ソースとの絡みがよく、和風の素材や味付けとも好相性だそうです。

試食会では「もちもち、ツルツルとした食感がいい」「米食に新たな選択肢ができてうれしい」「ゆで時間が短く手軽に使えて便利」といった声が幅広い年代層から届き、こだわりの食感はもちろん、米粉麺の魅力がしっかり伝わっていると実感したそうです。
「どちらの米粉麺もグルテンフリーなので、小麦アレルギーをもつ人にも安心して食べてもらえます。また『米粉パスタ』はゆでる際に塩を使わないので、塩分を控えている方にもお勧めです」

最後に、今後の米粉製品開発について展望をお聞きしました。
「米粉麺は小麦粉の麺とは違うポテンシャルをもっていると考えています。食物アレルギーをもつ人やヘルシーな食生活を実践している人はもちろん、新しい食感や味わいを求めている人など、米粉麺のニーズは今後さらに広がっていくのではと期待しています。当社としても、OEMの受注生産をはじめ、新たな顧客を獲得するビジネスチャンスとして商品開発を続けていきたいと考えています」

さらに、グルテンフリー食品のニーズが高い海外での展開や、非常食への活用、流通面での効率化などを視野に、長期保存が可能な製品へブラッシュアップしていきたいとも考えているそうです。
「生地に含まれる水分量を調整することで、賞味期限はある程度延ばすことは可能です。しかし、それによって肝心の食感が損なわれてしまう可能性があります。今後は当社製品がこだわってつくり上げた“食感のよさ”と、長い賞味期限の両立を目指します」と話してくれました。

トライ&エラーを繰り返しながら、時間をかけてじっくり取り組んできたヤマナミ麺芸社の麺づくり。 新たな目標に向けて、“麺づくりのプロ”たちの挑戦は続きます。