米粉うどんを、広島と世界をつなぐ架け橋に

米粉うどんを、広島と世界をつなぐ架け橋に

言わずと知れた広島県のご当地名物「広島風お好み焼き」。地元や国内の人たちだけでなく、インバウンド客にも人気のお好み焼き屋が集う横丁が、広島市の平和記念公園近くにあります。御好み横丁「/5(ゴブンノ)」には5店舗のお好み焼き屋が集まり、多種多様なラインアップのお好み焼きが多くの人たちを魅了しています。
中でも異彩を放つのが、今回ご紹介する株式会社ユーカラー(以下、ユーカラー)が運営する「undo」です。undoの特徴は、具材に広島風お好み焼きでよく知られる焼きそばではなく、うどんを用いている点です。さらに、そのうどんは米粉を原料に、自家製麺所で製麺されています。米粉うどん開発の経緯や開発時の苦労などを、米粉うどん製麺所「undo factory」店長の井坂純彗さんに伺いました。

米粉うどんを具材に健康志向のお好み焼きとして差別化

お好み焼き店 undoは、2023年8月にオープン。同年に広島で開催されたサミットも影響して海外からの旅行者にも広島風お好み焼きは注目されるようになりました。
「海外の方は日本人よりもベジタリアンやビーガン、グルテンフリーなどに関心が高く、undoでもインバウンドのお客様を中心に、健康志向のお好み焼きや素材を求める声が増えていきました」と井坂さんは振り返ります。
もともと他店との差別化を図って、“うどんのお好み焼き”専門店としてundoは開業しました。しかし、インバウンド客の来店や健康需要が高まったことで、多様な食文化に対応できるお好み焼き、そしてグルテンフリーの米粉うどんの自家製麺化をさらなる差別化要素として、展開していくことを決めたといいます。

米粉うどんを具材に健康志向のお好み焼きとして差別化

自家製麺化にあたり、井坂さんは香川県のうどん店や岡山県にある製麺会社に何度も視察に赴きました。全国でチェーン展開する店舗にも訪れ、価格帯や分量を決める参考にしたそうです。井坂さんたちが目指したのは、お好み焼きの具材にしても、うどんだけを食べてもおいしい米粉うどんの開発でした。お好み焼きの具材にする点が、大きな課題だったといいます。

「広島風お好み焼きは、薄いクレープ状の生地の上に麺やキャベツなどを重ねて焼くため、具材にソースをうまく絡めるとおいしく仕上がります。そこで、うどんはキャベツとのバランスを考えてソースが絡みやすい平麺を開発しました。麺の太さと幅がわずかに違うだけで、食感に影響が出ました。0.1mm単位で変えながら試行錯誤を繰り返し、2ヶ月ほどをかけてようやく完成させました」と開発の苦労を井坂さんは話します。 開発した米粉うどんは従来品の課題も解決したと続けます。「自家製麺化以前は、仕入れた米粉うどんを使用していましたが、従来品は小麦のうどんよりも太く、噛み切るのに力が必要だったため、お好み焼きの中で存在感が強すぎるという課題がありました」(井坂さん)

製麺所を開設した理由の裏にある思いとは

製麺所を開設した理由の裏にある思いとは

こうして開発された平麺の米粉うどんの提供がスタートし、でんぷん量を吟味して加工した米粉から生まれるもちもち食感は好評だったといいます。しかし、徐々に課題が見えてきました。「お客様から良いお声をいただけたとおり、味や食感は満足できる仕上がりでしたが、麺自体が薄いため製麺の工程で切れてしまう。さらに、茹ですぎると麺の水分が飛んでしまうので、茹で時間の調整に苦労しました」(井坂さん)
井坂さんたちが開発した米粉うどんは、もちもちした食感を追求したため、水分が多めに調合されています。そのため、うまく茹でないともちもち食感が損なわれるという、扱いの難しさが浮き彫りになってきました。

ユーカラーが製麺所を開設して自家製麺を始めた理由は、味の追求やコスト削減だけではありません。そこには同社が常に掲げる理念の実現という思いもありました。同社は、健常者と障がい者が一緒に働ける環境づくりを常に目指し、誰もが従事できるよう作業を単純化する仕組みづくりを進めてきました。米粉うどんの製麺やお好み焼きの調理などもその仕組みづくりの一環ですが、製麺機でのうどん製麺に課題があれば、理念の実現は叶いません。そこで、上記の課題を解決すべく、さらなる麺の改良を施したといいます。

製麺体験を通じて、広島と世界、そして人々をつなぐ

製麺所開設から3ヶ月を経た現在では、その課題もクリアし、お好み焼き用のうどんだけでなく、製麺所で独自にうどん商品を販売するに至っています。現在はおろし冷うどんやサラダうどんなど4種類のうどんをラインアップし、毎週新商品の開発に取り組んでいるそうです。さらに、製麺所 undo factoryでは、インバウンド客を主なターゲットにした製麺体験サービスも用意。参加者は自ら製麺した米粉うどんをその場で味わい、日本の麺文化に触れることができます。

また、製麺所の壁には訪れた人が自由に絵や文字を描けるスペースが用意されています。「子どもたちが自分の考えや心の内を自由に表現して、例えば障がいを持つ子どもたちにも自分を開放できる場として活用してほしい」という思いからだと、井坂さんは話してくれました。ユーカラーは、米粉うどんを通して、広島と世界がつながるきっかけ、そして、障がい者をはじめさまざまな人たちがつながる社会をいま、そしてこれからも形づくろうとしています。

製麺体験を通じて、広島と世界、そして人々をつなぐ