ゼロから始めた米粉パンで地域活性を目指して

ゼロから始めた米粉パンで地域活性を目指して

ポストコシヒカリになる品種を目指して生まれた「いちほまれ」など、日本有数の米どころとして知られる福井県に、2024年4月「食と農のデジタルプラットフォーム TRETAS(トレタス)」がオープンしました。トレタスの中で米粉を使用した米粉パンを製造販売しているのが、トレタスの運営も手掛ける福井県経済農業協同組合連合会(以下、福井経済連)です。同連合会の販売企画課・布目貴洋さんに米粉パンの開発や、米粉による地域活性への思いについて聞きました。

食と農の情報基地から拡大していく米粉パン

トレタスは「とれたてで新鮮な農畜産物や魅力的な県産品との出合いに加え、デジタルを活用して福井県の食と農が持つ驚き、にぎわい、つながり、学びなどたくさんの可能性を体感してもらうプラットフォーム」として設立された次世代型の体験・交流拠点です。2024年4月オープン時から鮮魚や精肉、農産物の加工品・直売コーナーなど福井県の産物が販売されており、その一角に米粉パンを販売するコーナーも設けられています。

福井経済連は、今回の米粉商品開発等支援対策事業を活用して、米粉パンのラインナップ拡大を図りました。その数は2025年1月時点でおよそ50種を取りそろえるまでに。しかし、ここに至るまでの道のりは、常に手探りだったと布目さんは振り返ります。
「そもそも米粉を使用したパンづくりをはじめるきっかけは、トレタスの開業でした。北陸の米どころである福井県として、米の普及拡大を推し進めたかった。その中で『6次産品として米粉を使用したパンをつくってはどうか?』という意見が生まれ、米粉のパンづくりを始めました」とそのきっかけを話す布目さん。

食と農の情報基地から拡大していく米粉パン
苦労が続いた県産の米を使用した米粉パンの開発

苦労が続いた県産の米を使用した米粉パンの開発

しかし、いざ始めてみたものの、つまずくことばかり。「当初、パンの専門家は誰もいませんでした。そんな状態なのでうまく進むわけがありません。人づてに名古屋にあるベーカリーを紹介いただいて、そのオーナーに監修してもらいながら、改めて米粉パンの開発を進めました。経済連の職員がそのベーカリーに2カ月間研修にも行きました。そうしてようやくお客様に満足いただける米粉パンを販売できるようになりました」(布目さん)

布目さんたちが開発でこだわった点は、福井県産の米でつくった粉を使い、米粉の配合率が50%以上であること。米自体は地域で確保できますが、製粉の委託先探しに難航したそうです。布目さんは「県内外問わず、複数の製粉メーカーに相談し、コストや粒度など私たちの要望をかなえてくれる栃木県の大手製粉メーカーにようやく辿り着きました。今では年2回機械を私たちの米粉専用に動かしてもらい、年間20トンを製粉してもらっています。配合率に関しては、ベーカリーの監修のもと、米粉20%からはじめ、80%まで試作を繰り返しました。できるだけ多く配合したい思いはありましたが、おいしくなければ意味がありません。80%だと糠の匂いが強かったので、50%に落ち着きました」と、苦労を振り返ります。

さまざまな人とのつながりを大切に、米粉消費の拡大を模索していく

トレタスが開業し、米粉パンの製造販売をはじめてからも、来店者が飽きることなく楽しんでもらえるようにと、パンのラインナップを増やしてきた布目さんたちですが、一層の拡大を図るべく米粉商品開発等支援対策事業を活用したといいます。引き続き名古屋のベーカリーに協力してもらいながら、フォカッチャ生地のパンや米粉100%のスノーボールなど、惣菜パン、菓子パンおよそ50種類が新たにラインナップに加わりました。ほかにも、観光を意識して、福井県のマスコットキャラクター「はぴりゅう」を象った大判焼きの「はぴりゅう焼き」といった変わり種も。

また、同事業はパン生地の保存や焼成用の機器導入にも活用されました。「米粉パンはトレタスを拠点に、県内4箇所のJA直売所でも販売しています。トレタスで製造したパン生地を直売所に輸送し、各所で焼き上げて販売します。そのため、おいしさを保持する冷凍方法もパン生地開発の重要なポイントでした。販売方法に関しては、県内全域での米粉の消費拡大が目標なので、JAと協力し、そのネットワークを活用しています。今後も販売拠点拡大を目指します」と話す布目さん。

さまざまな人とのつながりを大切に、米粉消費の拡大を模索していく

さらに「トレタスの米粉パンが好きとおっしゃってくださるお客様がいらっしゃいます。お客様に常に真新しさを感じていただきたい。パンだけではなく、例えば、天ぷら粉のような米粉そのものを家庭で消費してもらえるような提案も考えていきたい。米粉パンの開発製造では、製粉メーカーや監修してもらっているベーカリーだけでなく、製造設備メーカーなど、さまざまな人に支えられています。その皆さんは、さまざまな方からのご紹介で出会えた会社や人たちばかり。今後もそうした“人とのつながり”を大切にして、多種多様な生産現場に適した米をつくって、福井県の米や米粉を通じた地域活性を図っていきたいと思います」と今後の展望について話してくれました。
米粉パンだけでなく、福井県のさまざまな産物と出合えるトレタスには、イベントホールやラジオブースなども設置されています。トレタスをハブに、米粉を普及促進する情報発信に期待が募ります。