豊田市で学校給食用パンを製造するキングパンが、その技術を生かして市販用に冷凍米粉パンを新開発。米粉には愛知県産「あいちのかおり」を100%使用し、油脂・砂糖は不使用のフランスパンと同じ製法でバゲットとブールを完成させました。給食でも人気の米粉パンを冷凍品としたことで賞味期限を90日に延ばし、全国配送が可能に。プレーンな米粉パンはどんなおかずにも合い、特にホットドッグやサンドイッチなど具材を挟んだ調理に好適です。電子レンジで温めるともっちりと、トースターで焼くと表面がパリッとした食感に仕上がります。
お米バゲット 希望小売価格160円(税別)/1袋(1個入り)
お米ブール 希望小売価格380円(税別)/1袋(6個入り)
・スーパーなどの量販店
愛知県豊田市で半世紀。学校給食に主食のパンや米飯を供給してきたキングパン協業組合が、新たに米粉フランスパンに挑戦。冷凍品としてバゲットとブールの2種類を開発し、学校給食にとどまらず一般家庭向けにも米粉パンを提供していきます。
豊田市内で学校給食用パンを製造する4社により1970年に設立されたキングパン協業組合は、地元産の米粉を使ったパンの製造を通じて、地産地消の推進と子どもたちの食育に長年貢献してきました。
近年、少子化などの影響でパンの学校給食需要が減少する中、工場の稼働率の維持が課題となっていました。その打開策として、市販用パンの製造を徐々に増やしていくと、給食でも人気の米粉パンが一般家庭でも大好評。しかし、米粉パンの課題である保存性が拡販のネックになっていました。
同組合代表の倉橋良幸さんは、「米粉のパンは翌日には硬くなってしまう性質があり、賞味期限が短いことが消費拡大の妨げになっています。この課題をクリアして、より多くの方々に米粉パンを楽しんでいただければと思います」と話します。
この課題解決に向け、令和5年度米粉利用拡大支援対策事業で、長期保存が可能な冷凍米粉パンの開発に着手。学校給食用の米粉パンで培った技術をベースに、キングパンとしては初めての冷凍パン製造に挑戦。家庭の食卓に馴染みのある食事パンとして、フランスパンのバゲットとブールを開発しました。
その製法は、小麦粉のフランスパンと同様に油脂や砂糖は使用せず、シンプルな材料に学校給食の規格に近い配合で小麦由来のグルテンを加えて製パンします。主原料の米粉は地元の愛知県産の「あいちのかおり」を100%使用。おにぎりでもおいしいこの米品種の持ち味である甘みやもちもち感を生かした食べ飽きない食事パンに仕上げています。これで懸案だった賞味期限は、常温品で製造日を含む3日だったところを90日まで延長することができました。
完成した2種の冷凍米粉パンは「お米バゲット」と「お米ブール」として商品化。今回、初めて冷凍パンを手掛けた同社にとっては販路の開拓も重要な課題です。そこで、今回の事業では商品開発と同時に効果的な販売戦略の構築にも注力してきました。
その第一歩として着手したのが、食べ方の提案です。商品開発でアドバイザーを務めた料理研究家監修のもと、両商品を使ったアレンジレシピを開発。2024年11月には、神奈川県川崎市と東京で「愛知県産米粉の試食会」を開催し、バイヤーや一般消費者に向けて新商品とアレンジメニューをお披露目しました。
試食会で特に注目を集めたのが、「お米バゲット」を使用したバインミーです。かつてフランス領だったベトナムで生まれたこのサンドイッチは、具材の汁をパンが吸収することで味わいが増すという特徴を生かした一品で、今回は愛知県産の食材をサンド。また、「お米ブール」を使用したあんバターサンドなどのご当地メニューも好評を博しました。
「地産地消のコンセプトと結びつけることで、米粉パンを新しいジャンルの食文化として発展させていきたいですね」と倉橋さんは展望を語ります。試食会で得られたフィードバックは、今後の商品改良や新たなメニュー開発に生かしていく予定です。
また、家庭でのおいしい食べ方を検証し、その伝え方も工夫しました。自然解凍でもおいしく食べられますが、いろいろな方法を試した結果、電子レンジで温めて解凍するとふっくらし、さらにオーブントースターで焼き上げることで表面がパリッとします。この情報をいかにわかりやすくパッケージに表現するかの検討に、実は最も苦慮したそうです。
米粉パンの商品開発を通して、新たな可能性が広がりつつあります。従来は地元消費が中心でしたが、冷凍米粉パンの商品化により全国展開への道が開かれました。同時に製造ラインのトレー洗浄工程を自動化することで製造効率をアップさせ、昨今の人手不足の状況下においても安定供給できる体制を整備しています。
現在の課題は冷凍商品の配送コストの最適化です。これが実現できれば、消費者への直接販売という新たな販路も視野に入ってきます。
倉橋さんは、米粉の可能性について次のように語ります。「国産米粉のパンには、日本人が好むもっちりとした食感があります。これによって、新たなパン愛好者を開拓できる可能性があると考えています。私たちは学校給食向けに小麦粉パンと米粉パンの両方を製造していますが、どちらも子どもたちに好評です。特に、米粉パンならおいしく食べられるという子どもたちもいます。このように、米粉という選択肢の提供は、製パン業界全体の発展にも貢献できると確信しています」
さらに倉橋さんは、国産米粉の消費拡大は地域振興や日本の食料自給にとって大きな意味を持つと考えています。
キングパンは長年にわたり、地元産をはじめとする原材料にこだわり、安全・安心・健康を追求した丁寧なパンづくりを続けてきました。その理念と技術の結晶がこれらの米粉パンといえるでしょう。今回の新たな商品開発が、日本のパンのさらなる可能性を拓く一歩になりました。