瓦せんべいで知られる神戸の老舗菓子店が、150年の歴史ではじめて米粉を使用した菓子づくりに本格的に取り組みました。しっかりしたもっちり食感を目指してさまざまな苦労を乗り越えながら、ようやく完成した生もちまんじゅうは「そ」と名付けられ、長時間保持される、そのもちもち感が多くの人たちに喜ばれていくことでしょう。瓦せんべいのように、国内だけでなく海外にもその喜びの顔が広がっていくことに期待が募ります。
206円(税込)/1個
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・亀井堂総本店 元町商店街本店
兵庫県神戸市中央区元町通6-3-17 Tel.078-351-0001
・亀井堂総本店 六甲道店
兵庫県神戸市灘区永手町4-1-1 PLiCO六甲道内 Tel. 078-845-9008
・百貨店や交通系売店(販売予定)
瓦せんべい発祥のお店として、神戸の地で150年愛される株式会社亀井堂総本店(以下、亀井堂総本店)。創業以来変わらぬ味をお客様に届け続けてきた同社が、米粉商品開発等支援対策事業を活用してはじめて取り組んだのが、米粉を使用した新商品づくりでした。どのような商品を目指したのか、取締役社長の松井隆昌さんに話を聞きました。
「近年、日本でセリアック病などグルテンに起因する疾患に悩む人たちが増えていると知りました。菓子製造業者としては見過ごせない問題です。少しでも同じような苦しみを味わう人たちを減らしたいと考え、米粉を使用した新商品開発に挑みました」と米粉を使用することになったきっかけを松井さんは話します。取引先バイヤーからは「瓦せんべいとは違う新しい商品がほしい」というニーズも以前から聞こえていたといいます。瓦せんべいを原点にカステラ生地のお菓子が全国に広まっていった歴史をなぞるように、米粉を使ったお菓子を広めていきたいという思いが、伝統を重んじる老舗菓子店に、これまでにないプロジェクトをスタートさせました。目指したのは「しっかりしたもち食感のまんじゅう」です。
土産物のマーケットで近年大きく成長しているのが、広島で販売されている「生もみじ」という米粉を使ったおまんじゅう。この商品に代表されるように、最近はもっちりした食感が多くの人に好まれる傾向にあると、松井さんもニーズを捉えていたそうで、5~6年前から米粉を使用した「もち食感まんじゅう」を構想していたといいます。
米粉を使用した新商品を広めていくうえで求められるのは、新しいお客様との出会い。好みの食感の変化だけでなく健康志向の高まり、さらにはSNSで簡単に多くの情報に接触できる時代性など、ニーズの多様化には目を見張るものがあります。これらを考慮したうえで、これまでの亀井堂総本店の商品にない特徴が新商品には必要でした。
しかし、カステラ素材の商品が主流である亀井堂総本店にとって、米粉を使った商品づくりはまったく未知の領域だったと松井さんは話します。そこで、商品開発や製造管理を支援してくれる洋菓子専門のコンサルタントと契約し、材料の選定から仕入れルート、米粉の配合などで助言をもらい進めていきました。
松井さんたちも米粉に関するさまざまな論文や情報を収集・研究して、自分たちに合った材料を吟味。小麦粉で培ったノウハウを生かしながら、製造機と米粉の相性、米粉の配合率を見極めていったそうです。
「ただ高い米粉の配合率を目指すのではなく、お客様が何度も買ってくださる食べやすさを追求しました。当社は企業のノベルティなどで利用していただくBtoBの取引が多いのですが、コロナ禍を経て、一般のお客様の需要を高めていかないといけないと痛感しました。一般に浸透することで、企業や団体への認知も上がっていきますから」(松井さん)
米粉ならではのもっちりとした食感は、亀井堂総本店にとって新たな価値になり、新しい顧客の開拓につながります。食感の追求において、避けて通れないのが食感の維持でした。「当社の商品は全国に流通するので、冷凍や長期保存を考慮した食感の維持が必須です。その点で大きくかかわってくるのが包装方法です。従来の包装機械では生もちの食感を維持できませんでした。そこで、今回の補助金を活用して機械を導入し、酸素を透過しない冷凍対応のフィルムも取り入れました。商品開発をサポートしてくれたコンサルタントだけでなく、機械メーカー、フィルムメーカーの皆さんの知識と経験にとても助けられました」と松井さんは当時を思い出しながら開発の苦労を一言ひとこと言葉にしていきます。
こうして生まれた新商品は「生もちまんじゅう『そ』」と名付けられました。とてもシンプルですが、さまざまな思いがこの“一文字”に込められているといいます。「新しく生まれた『そ』のネーミングには、米粉をはじめて使った思いを忘れないための『始祖(そ)』。そして『素(そ)材』へのこだわり。最後に『粗(そ)品』。関西では熨斗の表書きに“ささやかな”という意味合いで「そ」とだけ書く伝統があります。手土産に利用していただきたい商品なので、その意味を込めました」と商品への思いを松井さんは話してくれました。
食べやすくリピート買いしたくなるお菓子は、国内の顧客だけに限らず、海外にも広げていきたいと話す松井さん。「そ」は2月に発売されたばかりですが、日本らしく四季を取り入れたバリエーション展開をすでに描いているそうで「春は桜の餡、新茶の時期には抹茶餡、秋には栗餡といった具合に。日本を印象付けやすい商品となり、海外のお客様に受け入れてもらえやすいのではないかと考えています」(松井さん)。
開港後の神戸でほどなくして生まれた瓦せんべいとともに、日本の菓子文化を支えてきた亀井堂総本店が、これからは国産米粉を用いた「そ」で、日本の菓子の新しい歴史を紡いでくれることでしょう。