「防災食」の常識を覆す米粉うどんで、備える楽しみ

「防災食」の常識を覆す米粉うどんで、備える楽しみ

災害大国の日本では、防災への備えは必須です。しかし、企業や家庭で防災用品や防災食を準備しているものの、いざ有事の際にどれほどの人が防災用品や防災食をスムーズに利用できるのでしょうか。この問いに対し、日本の「米」と「技術」を掛け合わせることで、新しい答えを導き出した企業があります。神戸市に拠点を置く株式会社NINZIA(以下、NINZIA)です。

同社が米粉商品開発等支援対策事業を活用して開発したのが、米粉とこんにゃくを融合させた革新的な「防災うどん」です。代表の寄玉昌宏さんは、日常的に食べたくなるほどおいしい、これまであまり類似品が見当たらない防災食品を社会に広めようとしています。 従来の防災食、特に麺類が抱えていた「伸びる」「おいしくない」「水や火が必要」という課題をいかに解決したのか。そして、NINZIAが掲げる「見せる防災食」というブランドコンセプトの意味とは? 寄玉さんに聞きました。

テクスチャ・エンジニアリングが実現した、伸びない米粉麺

NINZIAの米粉うどんが他の米粉麺と一線を画す最大の特徴は、独自のテクスチャ・エンジニアリング技術にあります。これは、米粉にグルコマンナン(こんにゃくに含まれる食物繊維)を特定の比率で配合し、食感を設計・調整する技術です。
「従来の米粉麺は、レトルト殺菌や缶詰加工時の高温加熱に弱く、どうしても麺がふやけてしまったり、溶け出してスープが濁るのが課題でした」と寄玉さんは話します。しかし、こんにゃくの持つ熱耐性と保水性を活かすことで、殺菌工程を経ても「プリッとした食感でありながら、サクッと噛み切れる」という、うどんらしいコシと喉越しの維持に成功したのです。

テクスチャ・エンジニアリングが実現した、伸びない米粉麺

このこんにゃく成分を用いた技術により誕生したのが、調理不要の「缶詰うどん」です。水も火も一切使わず、開缶してすぐに“おいしさ”を楽しめるこの製品は、まさに断水や停電が続く災害時に真価を発揮します。また、米由来の白い色味を保つことにこだわったため、白滝のような透明感ではなく、麺らしい見た目で食事としての満足感を与えてくれます。米粉とこんにゃく、日本の伝統素材が独自のテクスチャ・エンジニアリング技術で結びついたことで、こんにゃく麺とも小麦麺とも異なる、新規性の高い「長期保存可能な生食感うどん」が完成しました。こんにゃく成分を混ぜることで小麦粉よりも糖質を抑制でき「とにかくおいしい!」と寄玉さんは仕上がりに自信を見せます。

「見せる防災食」が解消する、備蓄の心理的ハードルと不便さ

「見せる防災食」が解消する、備蓄の心理的ハードルと不便さ

NINZIAが追求しているのは、おいしさだけではありません。同社は「見せる防災食」というユニークなブランドコンセプトを掲げています。これには、従来の防災食が抱えていた「倉庫奥に保管しておくもの」「(結果的に)賞味期限まで放置されるもの」というイメージを払拭したいという強い意図があります。 「防災食というものは普段はキッチンの奥や倉庫に放置してしまいがちです。しかし、それでは万一災害が起きた際、すぐに見つけられない、期限切れで無駄にしてしまうといったリスクを常にはらんでいます。災害はいつ起こるかわかりません。だからこそ、防災食は生活の中で目に見える場所に置いておけるものであるべきだと考えました」と寄玉さんは強調します。

生活空間に置いておけるパッケージ(缶)デザインにすることで、日常の中に防災が浸透し、有事の際にもすぐに防災食を手に取れるようになります。この身近さこそが「見せる防災食」の目的です。「非常食はおいしくない」「いざというときの持ち出しが面倒」というイメージを払拭し、日常の一部として備えてもらう。デザインの力によって防災をより身近なものへと変え、安心材料を常に手の届く場所に置いてもらうための戦略だといいます。

ローリングストックを日常のスタンダードに変える普及戦略

この防災うどんを、いかに社会全体に普及させていくか。寄玉さんは、単なる非常食の販売に留まらない多角的な普及戦略を練っています。
まず軸となるのは、日常で消費しながら備蓄する「ローリングストック」という習慣の定着です。NINZIAの米粉うどんは、非常時だけでなく、普段のランチや夜食としても食べたいと思えるおいしさを実現しています。「おいしいから食べるという単純明快な選択肢を提示することで、倉庫に眠らせるだけの防災食から日常的に消費される食事への転換を狙います」(寄玉さん)

ローリングストックを日常のスタンダードに変える普及戦略
ローリングストックを日常のスタンダードに変える普及戦略

現在具体的に検討されているのが、不動産デベロッパーとの提携です。例えば、標準設備としてNINZIAの防災うどんが導入される新築マンションの開発、オフィスの福利厚生として備蓄されるモデルケースなど、消費者が意識せずとも日常の中に防災うどんが存在する仕組みづくりを進めています。

さらに、社食や学食といった場での活用も重要なプロモーションの一環となります。日常的に多くの人が利用するこれらの場所でメニューとして提供されることは「米粉うどんのおいしさ」を直接体験してもらう貴重な機会となります。学食での提供は、次世代を担う若年層に対して米粉の新しい価値を伝えることにつながり、社食での活用は、働く世代の健康維持と同時に防災意識を高めるきっかけとなるでしょう。
こうした「普段の食の場」を通じて、米粉を特別なものではなく、選択肢の一つとしてスタンダードなものに変えていく考えです。先行発売された防災カレーが早々に売り切れるなど、市場の反応はすでに確かな手応えを示しているといいます。

NINZIAの目はハラール市場をはじめとする海外へも向けられています。同社は補助金を活用してマレーシアでマーケティング調査を実施し、米粉とこんにゃくという植物性素材をベースにした麺は、フードダイバーシティの観点からも海外での大きな可能性を確信したといいます。NINZIAは国内の米の消費拡大と世界の食の課題解決、その両面を追求することで、米粉を日常のスタンダードへと変えていこうとしています。
米粉は日本の食の未来を支える素材のひとつです。そして、NINZIAが提供するのは単なる缶詰ではありません。日本を代表する食材とNINZIAの独自技術のコラボレーションが、私たちの日常に「備える楽しみ」という新しい価値をもたらしてくれようとしています。

※本記事は2026年2月時点の情報です