八ヶ岳の桑と県産米粉が生む、新たな地産スイーツ

八ヶ岳の桑と県産米粉が生む、新たな地産スイーツ

山梨県・八ヶ岳南麓で桑(マルベリー)を栽培し、桑の葉茶や桑の実を使った加工品を製造・販売しているマルベリーファーム。代表の矢ヶ﨑秀樹さんは、桑という地域資源の可能性に着目し、その良さを引き出す商品開発に取り組んできました。

クッキーという選択で幅広い世代へ

八ヶ岳高原ではかつて養蚕とともに桑の栽培が盛んに行われており、その歴史を現代の食へとつなぐことも、矢ヶ﨑さんの大きなテーマです。同社では、高原の澄んだ空気と清らかな水、日照時間の長さといった土地の特性を活かし、化学的な農薬を使用せずに桑を栽培することでその価値を守ってきました。

「桑の葉茶は栄養価の高さで知られていますが、まだ一般の食卓には広く浸透しているとは言えません。だからこそ、日常の中で自然に取り入れられる形にしたいと考えました」と矢ヶ﨑さんは話します。それを具体化したのが、幅広い世代に親しまれている、チョコレートサンドクッキーでした。

クッキーという選択で幅広い世代へ

桑の葉茶と組み合わせる生地の材料として選んだのは、山梨県産の米粉です。日本の食文化を支えてきた米からつくられる米粉も、近年、健康志向の高まりとともに注目されています。伝統性と健康志向という共通の価値を持つ県産原料を掛け合わせることで商品価値を高め、地産地消や地域ブランドの創出にもつなげたい。その思いから、新たな商品開発への挑戦が始まりました。

米粉と桑の葉茶で生まれた新しい味わい

米粉と桑の葉茶で生まれた新しい味わい

桑の葉茶を日常に取り入れてもらうために選んだのがクッキーという形でした。しかし、商品開発は容易ではありませんでした。桑の葉はほのかな甘みと青葉のような独特の風味を持ち、その個性が強く出すぎると好みが分かれてしまいます。

「桑の葉茶の良さを伝えるためには、おいしく食べてもらえなければ意味がない」と矢ヶ﨑さんは振り返ります。

一方で、米粉は繊細な素材です。配合や焼成条件がわずかに変わるだけで食感が大きく変化します。理想としたのは、軽やかで歯ざわりのよい食感。その仕上がりを安定させるため、配合比率や焼成温度を細かく調整しながら試作を重ねました。

試作品を重ねるなかで見えてきたのは、桑の葉茶の風味を前面に出すだけでは広がりに限界があるということでした。そこでたどり着いたのが、チョコレートをサンドするという発想です。桑の葉茶の風味を損なわず、チョコレートの甘さとも調和させるため、バランス調整にも時間を要しました。

こうして完成したクッキーは、軽やかで歯切れのよい口当たりの中に桑のやわらかな香りが広がります。生地の間にサンドした濃厚なチョコレートで味に奥行きを与え、甘さとほろ苦さのバランスを整えました。満足感がありながらも後味はすっきり。桑の葉の個性を活かしつつ、幅広い世代に親しまれる味わいへと仕上がりました。

地域素材と米粉が拓く、次の展開

桑の葉茶米粉チョコサンドクッキーは、地域素材の可能性を形にした商品として評価を得ています。地元の食文化と素材を結びつけるだけでなく、ギフト需要や観光資源としての活用も見込まれています。

今回の米粉商品開発等支援対策事業では、同商品の企画・試作・改良に加え、市場調査やパッケージデザイン、包材制作、商品撮影など、販売展開を見据えた体制整備も行いました。地域ブランドとして市場に送り出すための基盤を構築できたことは大きな成果です。

地域素材と米粉が拓く、次の展開
地域素材と米粉が拓く、次の展開

地域原料を積極的に活用することで、農業との連携強化や付加価値の創出にもつながります。山梨ならではの素材を掛け合わせた点は、訪日外国人にとっても地域性や日本らしさを感じられる強みとなります。

販売面では、ECモールや百貨店、空港売店、ナチュラル系小売店への展開を段階的に進めるとともに、Web広告やSNS運用、商談会を通じて認知拡大を図ります。令和11年度には米粉の年間使用量50トンを目標に掲げ、商品ラインナップの拡充と安定した販売体制の構築を進めていきます。

矢ヶ﨑さんは、「米粉は国産原料として安定的に供給でき、地域の農産物と組み合わせることで、地産地消や地域ブランドの創出にもつながる素材だと考えています」と語ります。

今後は、シャインマスカットやモモ、甲州ワインなど県産農産物との連携も視野に入れながら、国内外市場へ展開し、米粉需要の拡大と地域ブランド価値の向上を通じて、山梨の農業活性化にも貢献していく構えです。

※本記事は2026年1月時点の情報です