日本の田んぼを次世代へつなぐ、美容家の新たな挑戦

日本の田んぼを次世代へつなぐ、美容家の新たな挑戦

「日本の稲作農家数は急速に減少していて、その約9割が60歳以上と言われています。実際に農家さんと接するなかで高齢化と後継者不足が現実的課題であることを切実に感じています」。こう話すのは、美容業界で25年のキャリアがある合同会社ナオアンドパートナーズ(以下、ナオアンドパートナーズ)のいわせ直美代表です。農家の減少、それに連動する米離れに深い憂いを覚え、いわせさんは「自分にできることはないか」と立ち上がりました。

いわせさんが取り組みはじめたのが、全国の米農家と提携し、農家所有の田んぼとオーナー制度を結べる「田んぼ倶楽部」の運営です。田植えや稲刈りツアー、子ども食堂に米を寄付するなど、2024年に本格始動したこの活動は、実はその4年前から種をまき続けてきたものであり、いわせさんと米との関わりは10年にも及びます。
いわせさんが目指すのは、単なる農業支援ではありません。神様やご先祖様への感謝を込めながら農業を実践しています 。「農家の収入を向上させ、米の消費を啓蒙したい」と話すいわせさんの強い思いから生まれたのが、今回の米粉商品開発等支援対策事業を活用して開発した「米粉ビューティーバー」です 。

美容のプロが追求した「成分」と「しっとり感」

米粉ビューティーバーは、いわせさんにとって初めての食品開発でした 。美容業界に長年携わり、過去に美容グロスの開発経験も持ついわせさんは、研究に妥協を許さず構想から実現まで約1年を費やしました。何よりも重視したのは「成分」でした 。いわせさんは“忙しい日常の中でも、エネルギー補給と美容・健康を同時にサポートできる新しい間食”をコンセプトに「コストをかけてでも栄養価の高いものを使う」という信念のもと、米粉をベースにプルーンなどの自然素材やマンゴーといった高価な果物を使用。シュガーフリー、グルテンフリー、非遺伝子組み換え、化学肥料・添加物不使用に徹底してこだわったといいます。

美容のプロが追求した「成分」と「しっとり感」

平坦ではなかった開発途上での最大の壁は、米粉特有の性質だったと話すいわせさん。小麦粉に比べてパサつきやすい米粉をいかに“しっとり”とさせ、かつ歯につかない絶妙な食感にするか。いわせさんは千葉県南房総の農家から仕入れた米を粉にして、満足いく食感になるまで試行錯誤を重ねました。解決の鍵となったのは、フルーツとの配合バランスでした。フルーツを入れすぎると逆に硬くなってしまうため、その量を何度も調整し、支援事業を活用して製造を委託した農業法人の技術的サポートを受けながら、ついに理想の完成度に到達したと、いわせさんは当時を振り返ります。

現代人の心と体を整える3つのビューティーバー

現代人の心と体を整える3つのビューティーバー

こうして完成した米粉ビューティーバーは、ココア、ベリー、マンゴーの3種類。それぞれ長らく女性の美と健康の改善に努めてきたいわせさんだからこそ生まれた米粉商品です。
「ココアバー」は日本人の誰もが好きな定番の味なので、まず採用を考えたといいます。プルーン、アーモンド、⽞⽶、きなこ、ヘンプチャコールを使⽤し、忙しい朝や運動前後でもたんぱく質とエネルギーを効率よく補給できる設計に。「ベリーバー」にはプルーンやアーモンド、クコの実といった自然由来の素材に、水溶性食物繊維のイヌリンをプラス。不足しがちな栄養を補いながら、内側から環境を整えることで、毎日の軽やかなリズムをサポートします。リッチな満足感を得られるよう設計された「マンゴーバー」は、美容意識の高い人に受け入れてもらいやすいだろうと、いわせさんはそれぞれの完成度に自信を見せます。

米粉ビューティーバーには、現代社会の課題に対するいわせさんの深い懸念が込められています。若年層のメンタルヘルスの問題や、低血糖による集中力低下などの悪影響を考慮し「手軽に健康的な栄養を摂取することで、精神面にも良い影響を与えたい」という願いが込められているのです 。

ナオアンドパートナーズでは、米粉ビューティーバーの販売を2026年2月からオンラインショップで予定していますが、農家の持続性を支える意味合いで企業ブランドの向上にも繋がる付加価値商品として、企業向けのノベルティやギフトにも展開しやすいと考えています。
また、BtoBにも注力していくといわせさんは販売戦略について話します。日本の市場にはすでに多くのプロテインバーが存在しますが「スポーツジム、エステサロン、クリニックといった美容と健康のプロフェッショナルが介在する場所へのOEM提供が最も効率的だと考えています」(いわせさん)
補助金を利用して開発したパッケージデザインは、企業ごとにカスタマイズ可能な仕様で、導入企業のロゴやメッセージを入れることができるといいます 。

さらに、同社の視線は世界にも向いています。「メイドインジャパン」の技術と品質を詰め込んだこのビューティーバーを、インバウンド向けの抹茶フレーバー展開や海外輸出へとつなげていく構想を持っています 。

田んぼからはじまる日本の再生への祈り

「お米の消費シーンを創り出すことで、日本産の米の価値を高めたい」。いわせさんの活動の根底には、常に日本の再生への祈りがあります。多くの人に「ぜひ一度、素足で田んぼに入ってほしい」と呼びかけます。田んぼ倶楽部のツアーに参加したある女の子のエピソードをいわせさんが話しくれました。「もともとお米嫌いだったその子は、田んぼ体験を通じてお米が大好きになり、今ではパンやパスタよりもお米を食べる機会が増えたそうなんです。土や苗に実際に触れることで、モノの見方や感じ方に変化が生まれ、お米を守りたいという心が芽生えてほしい」と、いわせさんは田んぼ体験への思いを語ります。

田んぼからはじまる日本の再生への祈り

いわせさんは、米が単なるご飯としてだけでなく、菓子や揚げ物の衣、そしてビューティーバーといったさまざまな姿で生活に溶け込む未来を描いています 。米粉をきっかけに世界の可能性を広げ、日本文化の精神性を発信していくこと 。一本のビューティーバーから始まるその挑戦は、日本の豊かな田んぼを守り、私たちの心と体を内側から輝かせる、大きな一歩となるはずです。

※本記事は2026年1月時点の情報です