
熊本県産の米粉を50%以上配合し、1個30gほどの食べきりサイズの米粉パンを開発しました。丁寧に手で成形し、こんがりと焼き上げてあるパンは、小麦粉でつくったものと変わらない仕上がりです。食べてみると、米粉の特徴であるしっとりもちもちとした食感と、口のなかでやさしく広がるお米の風味を楽しむことができます。食事の量や飲み込みやすさに配慮が必要な病院や介護施設、幼稚園、保育園など、様々な場所や用途での活用が期待されています。
108円(税込)/1個
・オリエンタルベーカリー 泉佐野工場売店
大阪府泉佐野市住吉町27-6
Tel. 072-464-2606

1950年に大阪で創業した株式会社オリエンタルベーカリー(以下、オリエンタルベーカリー)は、ホテルやレストラン、機内食などで使用する業務用のパンを製造するパンメーカーです。バゲットや食パン、クロワッサンなど種類も豊富で、取引先のニーズや用途に合わせた製品づくりが高く評価され、多くの顧客を獲得しています。同社では、米粉商品開発等支援対策事業を活用して米粉パンの開発に取り組みました。試行錯誤を繰り返しながら、商品化を目指した道のりを、代表取締役社長・原田幸博さんにお聞きしました。
オリエンタルベーカリーでは、様々なタイプの業務用パンを製造しています。ホテルやレストラン、機内食などで使う食パンやロールパン、菓子パンなど品目の多さに加え、パンの大きさや製造個数についても、クライアントの要望に柔軟に対応できる体制で取り組んでいます。この多品種・少量生産は、同社の大きな強みとなっています。
さらに近年は小麦粉でつくるパンのほかにも、アレルギーをもつ人に対応した卵や乳不使用のパン、塩分の摂取に制限がある人たち向けた減塩・無塩パン、タンパク質やミネラル分を調整した機能パンなども多く手がけています。
原田さんは「病院や介護施設からは、パンに含まれる成分や食べたときの飲み込みやすさ、1回の食事で食べ切れる量であるかなど、細かい指示や要望が届きます。当社では、おいしさはそのままに、こうした細かな要望にも対応した製品づくりを心がけています」とも話してくれました。

今回の「米粉ロールパン」の開発も、グルテンフリー食品への関心の高まりや、小麦粉のパンを食べられない人も、おいしくパンを食べてもらいたいという想いがきっかけでした。
こうしてスタートした米粉パンの開発でしたが、当初は思うような仕上がりにならず、苦戦したそうです。オリエンタルベーカリーでは、これまでも米粉を使ったパンを製造していましたが、米粉の配合率は5~10%程度にとどまっていました。
「米粉パンの製造は初めてではありませんでしたが、米粉の割合を増やすとパンの膨らみが悪くなったり、時間が経つとデンプンの老化によって固くなったりと、なかなか満足のいく仕上がりなりませんでした」と原田さんは当時を振り返ります。
何度も試作を繰り返した結果、比較的サイズが小さいロールパンを商品化し、2025年10月から発売を開始しました。

米粉パンの開発にあたり、オリエンタルベーカリーでは、支援事業を活用して泉佐野工場の製造ラインに高性能ミキサーや分割機器などを新たに設置して、製造体制を整備しました。これにより、作業工程や業務の効率化が進み、開発にかける人も時間も確保することができたそうです。
そんな中、オリエンタルベーカリーに1つのチャンスが訪れました。それは2025年4月~10月まで開催されていた大阪・関西万博会場内のレストランやカフェで使用するパンをつくってもらえないかというものでした。
「国内外から多くの人が訪れる大イベントで自社製品を使ってもらえるなんて、とても名誉なことですし、大きなビジネスチャンスです。この機会をなんとしても活かしたいと、米粉パンの開発に注力しました」と原田さんは話します。
しかし何度も試作を繰り返したものの、満足のいく仕上がりに到達できず、大阪万博での採用には至りませんでした。
「長年パンづくりに携わってきた当社として、自信をもって提供できるところへ到達できなかったことは非常に残念に感じています。しかし、今回の挑戦によって、多方面から様々なヒントをいただけたことが、職人魂に火が付いたといいますか、開発チームのモチベーションが確実に上がりました」とチャレンジした成果を評価します。
オリエンタルベーカリーでは、米粉の割合を従来品よりも増やしながら、ロールパンや食パン、バンズなど、数種類の製品を平行して開発してきました。このうち商品化できたものは「米粉ロールパン」だけでしたが、ほかのパンについても開発は続いています。
例えば、ハンバーガーなどで使うバンズは、ロールパンよりも大きいサイズになりますが、比較的平たい形状なので膨らみを確保できるようになってきているそうです。一方で、ある程度高さを出さなくてはならない食パンは、膨らみをキープすることが課題となっています。そこで焼き型をひとまわり小さいものにするなど、さらに検討を重ねています。


原田さんは今後の商品開発について「現在調整中のバンズや食パンも、2026~27年にかけて商品化できるように進めています。しかし最終的なゴールは、米粉100%のパンをつくることです。今回の開発で様々な知見を得ることができましたが、商品化への道のりはまだ長くなりそうです」と話します。
そしてこう続けます。「当社では、病院や介護施設で使うパンも多く手がけています。患者さんや施設で暮らしている人にとって、食べることは大切な楽しみの一つ。そういった人たちが安心して食べられる、おいしい“米粉100%”のパンの完成を目指します」
今回開発した「米粉ロールパン」は、製造している泉佐野工場に併設されている売店での販売をはじめ、ほかの工場の売店でも販売を進めています。そしてバンズや食パンの商品化に目処がついたら、「米粉パンシリーズ」としてOEMや家庭での活用も視野に、営業活動やECサイトの拡充に取り組んでいく予定です。
みんなで一緒に味わい、笑顔で食事を楽しむ。米粉100%のパンの完成を目指して、オリエンタルベーカリーの挑戦は続きます。
※本記事は2026年1月時点の情報です