老舗の技術と「笑みたわわ」でつくる春色バウムクーヘン

老舗の技術と「笑みたわわ」でつくる春色バウムクーヘン

バウムクーヘンをはじめとするさまざまな洋菓子を、愛知県から全国の食卓へ届けてきた株式会社香月堂(以下、香月堂)。そんな同社にとって、2026年は記憶に残る年になるでしょう。香月堂として、初めてのバウムクーヘンを世に送り出す最初の年になるからです。

そのプロジェクトを牽引するのは営業開発部の森靖史さんです。社内の開発部門と外部の窓口をつなぐ、いわば「現場と市場の架け橋」のような役割を担う存在。森さんを架け橋に、米粉商品開発等支援対策事業をきっかけにして「お米でつくったバウムクーヘン あまおう苺味」の開発がスタートしました。

主力商品のバウムクーヘンで、米粉の可能性を引き出したい

香月堂にとってバウムクーヘンは全社売上の約6割を占める、まさに看板商品です。同社としては新しい素材である米粉に取り組むにあたって、あえて主力商品を選んだのには理由があります。「長年培ってきた自社の技術を最大限に活かし、米粉という素材が持つ魅力を最も得意とする形でお客様に届けたいと考えたから」と森さんは話します。

「これまで、米粉を使ったお菓子には『どこかパサつきやすく、時間が経つと硬くなってしまう』というイメージが少なからずありました」。森さん自身が米粉に対してそのような先入観を抱いていたといいます。しかし、その意識を変えたのが、全農から紹介された新しい米粉用品種「笑みたわわ」との出合いでした。「笑みたわわ」が老舗菓子メーカーを米粉バウムクーヘンづくりへと動かしたのです。

主力商品のバウムクーヘンで、米粉の可能性を引き出したい
「笑みたわわ」だからこそ目指した新しいチャレンジ

「笑みたわわ」だからこそ目指した新しいチャレンジ

今回の開発において最大の鍵となった「笑みたわわ」は、従来の食用米にはない製菓・製パンに非常に適した特性を備えています。まず挙げられるのは、その粒のきめ細かさです。一般的なお米を粉にすると、どうしても損傷デンプンと呼ばれるデンプンの傷が生じてしまい、それがお菓子のパサつきや食感の悪化につながることがあるとされています。しかし「笑みたわわ」は、デンプン質が非常に柔らかく、粉砕する際にダメージを受けにくい性質を持っています。「笑みたわわ」であれば、ザラつきがほとんどないなめらかな米粉をつくることが可能になります。

さらに、アミロース含有率のバランスが洋菓子製造に非常に適しており、焼き上げた際にしっとりとした質感を長く保つことができます。森さんも、初めて試作した際に「思っていたよりもずっとしっとりしている」と驚いたといいます。米粉の課題であった老化の早さを克服し、賞味期限60日から90日という品質基準をクリアできる見通しが立ったことも、大きな収穫でした。
昨今の健康志向の高まりや取引先から寄せられる米粉菓子への関心も踏まえて「新しいチャレンジをしてみよう」とプロジェクトが立ちあがったのも「笑みたわわ」ゆえだったといいます。

試行錯誤の半年間を経て「おいしい」を全国へ

森さんたちは「笑みたわわ」に「小麦粉とそんなに扱い方に違いはなさそう」という印象を抱いて開発に乗り出しました。最初の試作でも手応えを感じましたが、委託先の設備変更という外的な要因も加わり、結果的に想定以上の試行錯誤を繰り返すことになったといいます。
もちろん「笑みたわわ」の特性を認識したうえで、米粉に向き合いましたが、従来のラインで焼くとバウムクーヘンの表面がデコボコになったり、形が安定しなかったりと、製造現場でのトライアルは想定以上の回数を重ねました。火の強さを秒単位で調整し、生地の状態を確かめながら最適な焼き時間を探り当てる日々が続きました。そうして半年を経て、米粉ならではの「歯切れの良さ」と「しっとり感」が共存する、香月堂の新しいバウムクーヘンが誕生したのです。

最初はスタンダードなプレーンタイプのバウムクーヘンを検討したそうですが、春を象徴する「あまおう苺」のフレーバーが選ばれました。これは、問屋や取引先との対話の中から生まれたアイデアです。「米粉という新しい素材を、より親しみやすく、見た目にも華やかに楽しんでほしいという想いを込めました」と森さん。

補助金を活用して開発を進めたパッケージデザインもほぼ固まり、2026年4月から5月の発売を目処に「お米でつくったバウムクーヘン」が全国のスーパーや量販店に並べられるように準備が進められています。「健康を意識している人はもちろん、これまで小麦粉のバウムクーヘンに手を出しづらかった人たちに手に取ってほしい」と森さんは話します。

試行錯誤の半年間を経て「おいしい」を全国へ

「笑みたわわ」という名称には、たわわに実った稲穂から食べる人、つくる人すべての「笑顔」があふれるようにという願いが込められているそうです。香月堂は「笑みたわわ」をバウムクーヘンに昇華することで、小麦粉でつくったバウムクーヘンでは得られないしっとり食感や、米ならではの甘みで全国の食卓を、食べる人たちの「笑顔」であふれさせてくれることでしょう。

※本記事は2026年3月時点の情報です