これまでにない米粉ならではの粘りとコシ

米粉の特性を生かしたフグの唐揚げを開発

株式会社お亀堂(以下、お亀堂)は、1950年に愛知県豊橋市で創業した甘味処をルーツとする和菓子店です。現在は直営6店舗のほか、地元のキヨスクや道の駅などでも和菓子を販売しています。近年は有楽製菓とのコラボ商品「ブラックサンダーあんまき」など話題の商品開発や、古民家カフェの運営も行い、和菓子を通じた顧客との接点を商品開発に活かしています。
昨年度は米粉商品開発等支援対策事業の補助金を活用し、米粉で焼き上げたグルテンフリーの新感覚和ケーキ「あんぽて焼き立てブリュレ」を開発。その経験と反響をもとに、新たな米粉商品の開発に取り組みました。お亀堂代表取締役の森貴比古さんに、開発した商品や今後の展開について伺いました。

「餅のようなモチモチ感」を実現した真空式横型ニーダ―

「今回開発したのは、米粉の“粘りとコシ”を活かした、卵不使用・小麦粉の使用量を抑えた平鍋焼き菓子(あん巻き)です。米粉の使用率は11.7%で、国産のものを使用しています。従来のあん巻き皮に比べて、『モチモチとした食感』が長く続くよう工夫された製法が最大の特長です」と森さんは語ります。
卵を使わず小麦使用量を抑えたことで、健康志向の方やZ世代の新たなニーズにも応える商品となっています。今後は小麦粉を使わないグルテンフリー化も検討中です。

従来のあん巻き皮では実現できなかった「まるで餅のようなモチモチ感」を可能にしたのは、当事業の補助金で導入した真空式横型ニーダ―です。
「一般的な和菓子に用いられる米粉は、加熱時間が短いため粘りやコシが出づらく、老化(硬化)も早い傾向にあります。そこで、真空式横型ニーダーを活用し加熱攪拌工程を長くし、もち粉をブレンドすることで、これまでにない独特の粘りと弾力を実現しました」と森さんは語ります。

「餅のようなモチモチ感」を実現した真空式横型ニーダ―
非常に繊細な米粉。生地の安定化に試行錯誤

非常に繊細な米粉。生地の安定化に試行錯誤

商品開発の最大の試行錯誤は、加熱攪拌時の加水量とタイミングでした。米粉は非常に繊細な素材で、水分量がわずかに変わるだけで、焼成後の皮の厚みや粘着性、剥がれやすさが大きく変化するそうです。
「当初はすべての水分を一度に加えて加熱していましたが、安定せず試作は難航。そこで一部の加水を後工程に回す『段階加水方式』に切り替えることで、生地の安定性が格段に向上しました。この気づきが、開発の大きなブレイクスルーとなりました」と森さん。

加水した米粉を加熱攪拌し十分に糊化(α化)させることで、生地のコシを引き出します。その後、小麦粉や膨張剤を加えて生地を仕上げ、平鍋で丁寧に焼き上げます。最後に餡をサンドして完成させる、和菓子職人ならではの手間暇かけた一品です。
この商品をまずは、若年層や女性層、健康意識の高い方に届けたいと考えているそうです。
今後は、生地のグルテンフリー化の挑戦とともに、地元の農産物を活用した餡のバリエーションも展開予定とのことです。

今回開発した製法とノウハウを活かしてシリーズ化へ

「今回の商品は、意外性と相性の良さからチョコあんを採用しましたが、三河地方ではメロンや柿、イチジクなどの生産が盛んなので、それらの規格外品などを活用した餡の開発を検討しています。近くの西尾はお茶の産地なので抹茶餡も検討中です。また、米粉の生地には醤油が合うので、醤油風味の餡もありかなと。餡自体も米粉を使用したものができないか研究していきたいと考えています」と森さん。今回開発した製法とノウハウを活かし、「モチモチ感」をテーマにした商品をシリーズ化していきます。

今後は生地や餡のBtoB提供も考えているそうです。
「OEM展開によって、地域菓子店と連携ができればと考えています。例えば生地を当社から提供し、地域のお菓子屋さんで独自の餡を入れて販売することを考えています。また、販売ルートとしてECサイトに加え、道の駅やサービスエリアなどの観光施設、ギフト用への販路拡大を目指しており、そのため賞味期限を2~3か月に延ばすことを目標にしています」と森さん。

今回開発した製法とノウハウを活かしてシリーズ化へ

また、和菓子教室などの体験型イベントを通したプロモーション活動も強化していくとのこと。
「米粉を使って生地を焼いたり餡を巻いたりする体験を提供し米粉商品の認知度を高めて、メディアへのアプローチも強化したいと考えています」(森さん)
今後の目標として、米粉の使用量として2026年度に3トン、2027年度に6トンを目指していきます。

最後に、米粉の可能性をどのように感じているかをお聞きしました。
「米粉は、これまでの和菓子に欠かせない素材でありながら、十分に活用されていない可能性を秘めた食材です。特に、粘り・コシ・弾力といった“日本人の好きな食感”を再現できる点は、小麦にない魅力です。また、近年のアレルギー対応やグルテンフリーニーズの高まりと合致しており、今後ますます注目される素材になると確信しています。地域資源としての意義も大きく、国産米の新たな活用先としても重要な役割を担っていくと考えています」(森さん)

※本記事は2026年1月時点の情報です