独自開発の製麺機と道産米100%が紡ぐクラフト米粉麺

独自開発の製麺機と道産米100%が紡ぐクラフト米粉麺

北海道札幌市を拠点とする株式会社イークラフトマン(以下、イークラフトマン)は、流通業向けのソフトウェア開発を主力事業としながら、食文化の架け橋としての顔も持っています。同社の食への取り組みの原点は2014年のベトナム・ホーチミン市への開発拠点設立に遡ります。現地でのソフトウェア開発を通じてベトナムの豊かな食文化、特に米を原料とした麺料理の奥深さに感銘を受けた同社は、その魅力を日本にも伝えたいという思いから、2021年に札幌市内でベトナム料理店「サイゴンフレッシュ」をオープンさせました。

イークラフトマンは、本場ベトナムの伝統的な製法と北海道産米を活用した米粉麺づくりをはじめましたが、その実現には大きな技術的な壁がありました。東南アジアのインディカ米に適性のある既存の製麺機では、粘り気の強いジャポニカ米を適切に加工できず、麺が切れたり、食感が損なわれるといった課題に直面したのです。

そこで今回、米粉商品開発等支援対策事業を活用して、人工衛星開発関連事業で培われた知見を投入した独自の製麺機を自社開発。その製麺機を使って、スープとセットにした袋麺スタイルの米粉麺を完成させました。装置設計と商品開発を担う芳賀和輝さん(写真左)と商品プロモーションを担当する早川和久さん(写真右)に今回のプロジェクトについて聞きました。

宇宙工学技術を応用した、国産米専用の独自製麺機

プロジェクトの大きなトピックは、理想とする麺を実現するために製麺機そのものを設計・製造したことでしょう。当初、海外製の製麺機で道産米の製麺を試みましたが、国産米特有の強い粘性が機械内部での詰まりや押し出し時の不均一な圧力を引き起こし、理想的な食感や形状を維持することが難しかったといいます。

「既存の汎用機で国産米のポテンシャルを引き出すには限界がありました」と語る芳賀さんは、以前から携わっていた人工衛星の設計技術をこの課題解決に活用。衛星に使用される金属の表面加工や研磨技術を投入し、摩擦を極限まで生じさせない独自の製麺機を開発したのです。
この製麺機を使うことで「米粉麺の食感を安定させるために用いられる増粘剤などの食品添加物を一切使用せず、滑らかな喉越しと力強いコシを両立させた国産米粉100%の米粉麺をつくれるようになりました」と芳賀さんは達成感を語ります。
独自の製麺機によって生まれた麺は、単なる小麦粉の代替食品の枠を超え、米本来の旨味を引き出した「クラフト麺」と言える高い完成度を実現していると同社は自信を見せます。

宇宙工学技術を応用した、国産米専用の独自製麺機
利便性と本格的な味を両立するスープ付き米粉袋麺

利便性と本格的な味を両立するスープ付き米粉袋麺

麺の原材料には、地元北海道産の米を使用することにイークラフトマンは一貫してこだわっています。開発過程では複数の品種をテストし、製麺後の食感と風味のバランスが最も優れた組み合わせを追求しました。その結果、豊かな甘みが麺になっても発揮される旭川産の「ゆめぴりか」が選ばれました。
また、芳賀さんたちが着目したのは「スープ付きの袋麺」という商品スタイルでした。「市場を見渡すと、乾麺単体の米粉麺は近年増えていますが、調理に手間がかからず、家庭で専門店のようなおいしさを簡単に再現できる、スープをセットにした袋麺形態の商品は世の中に多くありません」と芳賀さんはその着眼点を説明します。

開発の過程では、試食会を通じたフィードバックの反映を徹底しました。当初は和風スープとの組み合わせで開発を進めていましたが、社内での試食結果やベトナム料理店「サイゴンフレッシュ」の強みを最大限に活かすべきという判断から、レシピをエスニック風へと変更。スパイスの華やかさと米粉麺の繊細な風味の調和を追求した結果「エスニックスープの米粉麺は、試食アンケートで5点満点中4.3点という高い評価を得られました」とプロモーションを担当する早川さんは話します。

日本の米の可能性を世界に広げる

完成した「クラフト米粉麺」を世の中に浸透させるため、早川さんは百貨店勤務時代に培ったマーケット分析と販売ノウハウを活かした戦略をいま進めています。製麺機の導入や原材料の確保といった製造面のコスト精査だけでなく、消費者の声を聞くことを重視。試食会を継続的に実施するなどマーケティング調査にリソースを投入し、商品の精度を高めていく予定です。

イークラフトマンは、サイゴンフレッシュで年間1万食、ECサイトで1万4000食という高い販売目標を掲げており、その達成には価格設定が重要であるといいます。早川さんは「日本人だけでなくインバウンド層にもマーケティングの幅を広げ、サンプリングや試食会で消費者の声をできるだけ拾って適正な価格を吟味していきたい。エスニック以外にもカルボナーラやスープスパゲティ、焼きそばなどさまざまな食べ方を提案して、クラフト米粉麺の可能性を探っていきたい」と価格戦略について話します。

日本の米の可能性を世界に広げる
日本の米の可能性を世界に広げる

芳賀さんの目はさらにその先に向いています。「著名店舗とのコラボレーションや野菜のフレーバーを練り込んだギフト向け商品の開発を考えています。さらに、国産米粉でつくられた麺は、国内だけでなく世界のグルテンフリー市場でも評価されるポテンシャルを秘めていると思っています」と話す芳賀さん。海外出張中においしい米が食べられなかったという経験が、国産米の価値を世界へ発信したいという強い思いの原動力になっているといいます。

芳賀さん、早川さん、そしてイークラフトマンの挑戦は、夏以降の発売を予定しているクラフト米粉麺を皮切りにはじまります。宇宙に通じる精密なテクノロジーと道産米の融合は、米粉を新しい食のスタンダードへと昇華させる期待が高まる挑戦と言えるでしょう。

※本記事は2026年2月時点の情報です