
創業120年を間近に控えた広島県の渡辺精進堂。地産地消にこだわる和洋菓子の老舗が新商品として開発したのは、三次産米を使った米粉だけでつくったバウムクーヘンです。広島レモンは、ほのかにレモンが香る爽やかさ。さくさくの生地に、レモンピールの苦味がアクセントです。瀬戸内藻塩はしっとりとした食感で、甘塩っぱさがクセになります。広島県の食材の魅力がつまった新スイーツとなりました。
米の樹BAUM(広島レモン/瀬戸内藻塩) 1,400円(税別)/1個
備北自然想菓 風季舎
・三次町本店
広島県三次市三次町1534-1
Tel.0824622037
・東酒屋店
広島県三次市東酒屋町585-5
Tel.0824652888
・南畑敷店
広島県三次市南畑敷店506-13
Tel.0824622027
・自社ECサイト
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有限会社渡辺精進堂(以下、渡辺精進堂)は、1907年(明治40年)に広島県三次市に創業し、地元で120年近く愛されている和菓子店。現在は和菓子だけでなく、洋菓子も数多く手がけ、三次市内に3店舗のカフェ「風季舎」を運営しています。その老舗が、これまで製造していなかったバウムクーヘンの開発にチャレンジ。米粉をはじめ、広島県や三次市の名産品を使った商品を目指し、取締役の栗栖一典さんをリーダーとして取り組みました。
渡辺精進堂のこだわりは、広島県の大地で採れる素材をふんだんに使用すること。バターや牛乳はもちろん、リンゴやイチゴなどのフルーツに、きな粉なども三次市産をはじめ広島県産の食材を使っています。渡辺精進堂が誕生し育まれた三次市、そして広島県の魅力を、広く日本に広め、三次市の生産者さんに恩返ししようという思いが込められているのです。
しかし、三次市は少子高齢化の影響により人口減少が進む、典型的な過疎の地方都市。米の名産地として知られていますが、生産者の高齢化と担い手不足により、米の収穫量は年々減少傾向にあるといいます。
その状況を改善しようと、三次市は農業振興プランを策定。そのプランに沿って、持続可能な地域農業の確立や、夢が持てる農業の実現を目指しています。その中では、三次産米の販路拡大や地産地消の強化も進められており、その一環として渡辺精進堂のチャレンジも進められています。

「三次市の農業振興プランの理念に賛同し、三次産米を使った米粉100%のバウムクーヘンをつくろうと方針を決めました。バウムクーヘンは、全国各地で博覧会が開催されるほど人気のお菓子。近年、そのニーズはより高まっています。当社にはバウムクーヘンオーブンがなかったため、いままでチャレンジができませんでしたが、米粉商品開発等支援対策事業が活用できると知り、開発への挑戦を決断できたのです」
栗栖さんは、渡辺精進堂が属するグループの代表会社である洋菓子店「株式会社ボストン」で職人として務めていた経験もあります。その栗栖さんを筆頭に、バウムクーヘン開発チームが結成されました。

開発にあたっては、本事業を活用して広島県にある洋菓子店をリサーチしました。県内の有名店や、全国的な人気ブランドを訪れ、バウムクーヘンのラインアップを探ったそうです。
リサーチの中で、バウムクーヘンの高まる人気を再確認。そして人気があるからこその、様々な味種や食感、包装形態の多様性を目の当たりにしたと言います。
「季節の素材にこだわったり、カット方法や食感を工夫したり、逆に無選別で包装を簡素にして価格を抑えたり、各社が差別化を図って様々な特色を出していました。まさに十人十色の多様さです。だからこそ、渡辺精進堂のバウムクーヘンにもチャンスがあるなと感じたのです。リサーチの中で米粉100%、それも私たちのように三次市産にこだわったバウムクーヘンはありませんでした。それ以外の素材も、地産地消に特化したものは珍しかったのです」
手応えをつかんだ栗栖さんたちは、レシピ開発に取りかかりました。しかし、そこで米粉100%というこだわりが大きな壁になりました。小麦粉でつくる場合と異なり、米粉は水分を多く含むので生地が重くなります。そのため、バウムクーヘンオーブンから生地がボタッと落下してしまったり、バウムクーヘンの特長である年輪模様が出なかったりしたそうです。普段は小麦粉の菓子をつくることが多い職人さんたちは、バウムクーヘンオーブンの会社と協力し、試行錯誤しながら苦労して最適なレシピをつくっていきました。
「これまでの洋菓子づくりのノウハウや経験を活かして、プレーンのバウムクーヘンはなんとか完成させることができました。次に頭を悩ませたのは、どんな味にするか、そしてどのような形状で販売するかでした」
掲げた条件は「他社にはないような地元産の食材を使うこと」そして「渡辺精進堂らしい和を感じられる商品であること」
それに合わせ、様々な案が出されたと言います。例えば、米粉の生地に小豆を練り込んだり、中央にこしあんを入れるという案。また、瀬戸内の藻塩と三次名産の「霧里しょうが」を組み合わせた、しましま模様のバウムクーヘンという案。さらには、カリカリの食感にして、ライオンのたてがみに見えるようにカットする案などもありました。
「それらのエッセンスを活かし、まずは『広島レモン』の製造が決まりました。レモンは広島が日本一の生産量を誇っています。また、既に他商品でも使用している自社製造の砂糖漬けレモンを使えるのも決め手になりました。しょうがも試作はおいしかったのですが、霧里しょうがの地元外での知名度が低いのとお子様には選ばれにくいかも、ということで『瀬戸内藻塩』のみを採用。形状も、まずは一般的な厚み6cmのホールでの販売。動向を見て商品展開を広げようということになりました」


店舗横のスーパーが空き物件になったため、そこを取得して製造工場にしました。完成した工場には、本事業を活用して購入したバウムクーヘンオーブンなどの機器が設置されました。パッケージのデザインや制作も、本事業を活用して行われました。
完成したのは、「米の樹BAUM」という新ブランド。味は「広島レモン」と「瀬戸内藻塩」の2種です。
「広島レモン」は、ほのかにレモンが香る、爽やかな味。さくさくの生地で、レモンピールの苦味がアクセントになっています。「瀬戸内藻塩」はふんわり食感がウリで、社内でも評判がいい製品。側面のフォンダンにも少量の藻塩を入れ、全体的にやさしい甘塩っぱさがクセになる味です。
2026年2月、チラシとSNSで告知を行い、風季舎東酒屋店で4日間の限定販売を行いました。渡辺精進堂の新製品ということで、多くの地元の方がお店に足を運び、「米の樹BAUM」を購入したそうです。
「2日目が大雪に見舞われ、思ったように客足が伸びなかったのが残念でした。それでもそれぞれ200個以上を販売できました。店頭では試食も行いました。食べていただいたお客様の反応も好評で、順調な滑り出しとなりましたね」

現在は定期的に製造を行い、風季舎の店舗で販売を行っています。その売れ行きも好調で、早くも渡辺精進堂の新定番としての地位を獲得しそうだとのこと。また、バレンタインにはチョコがけでカット方法を変えたものも販売し、好評だったと言います。今後は母の日などのイベントに応じた特別なバウムクーヘンも企画していく予定です。
「博覧会への出展やモンドセレクションの受賞も目指しています。まずは三次市から、そして知名度が上がれば、広島市内の百貨店や駅のお土産売り場のスペースでも販売をスタートしたい。広島の新名物となるのが目標です」
三次市特産のピオーネやイチゴをつかった「米の樹BAUM」など、今後の企画アイデアはたくさんあると話す栗栖さん。これからの展開が楽しみです。
※本記事は2026年3月時点の情報です