
新型混合機導入によって、和菓子用上新粉が主体だった広瀬製粉が洋菓子用米粉の開発に本格的に乗り出しました。さらに念願だった地元茨城県産米を使用して初めて開発した「米粉パンケーキミックス」は、漂う米の風味が特徴で、カフェで出されるパンケーキを通じて多くの人たちを喜ばせています。近い将来には市販も計画している米粉パンケーキミックスを通じて、その喜びの笑顔は全国に広まっていくことでしょう。
400円(税別)/1kg
・業務用のみ取り扱い

茨城県で活動する有限会社広瀬製粉(以下、広瀬製粉)が、昨年度同様に今年度も米粉商品開発等支援対策事業を活用して、米粉の普及、そして地域農業の持続的な発展に取り組んでいます。同社は長年和菓子向けの上新粉製造を主軸としてきましたが、現在は近年の健康志向の高まりやグルテンフリー需要の拡大を受け、小麦粉の代替として幅広く活用できる米粉製品の開発に力を注いでいます。
その動きを加速する目的で本事業を活用して新型の縦型混合機を導入しました。この設備導入を大きな転換点として、同社初の試みとなる茨城県産米を100%使用した業務用の「米粉パンケーキミックス」を開発。2月から地元のカフェなどに納入が始まっており、広瀬製粉にとって、米粉との関わりが新しいフェーズへと移行しました。
広瀬製粉が今回、新型混合機を導入した最大の理由はブレンド工程の機械化と高度化でした。従来機では人の手作業が必要で、そもそも何十年も使い続けてきた機械は老朽化していました。その環境下では米粉に副原料を混ぜ合わせる際、粉体の均一性を保つことが技術的に難しく、製品品質のばらつきが大きな課題になっていたといいます。
「以前の設備では、これから力を入れていきたい家庭用や小ロット製品をつくる際に、配合の確実性を担保することが難しく、品質面での不安がありました」と総務を務める広瀬守さんは話します。新たに導入された縦型混合機は、サビや汚れに強いオールステンレス製で高い衛生水準を維持できるとともに、省スペースでありながら一度に大量の原料をムラなく撹拌できる能力を備えています。
この設備の導入により「これまで品質や衛生面への不安から受注を躊躇することもあった案件にも、機械への練度向上は必要ですが、自信を持って対応できるようになります」と広瀬さん。稼働からわずか1カ月で「米粉パンケーキミックス」に代表される品質の高い米粉製品を供給できており、同時に作業時間の短縮による省人化も進んでいます。少人数体制でも多様なニーズに柔軟に応えられる生産基盤が整いつつあるといいます。


新型混合機導入と並んで、大きなトピックは地元茨城県産米の使用です。これまで茨城県では契約栽培への取り組みがあまり進んでこなかった事情や価格面の壁などを要因として、他県産の米に頼らざるを得ない状況にありました。しかし、広瀬さんは「価格を上げてでも県産米の確保にこだわりました。やはり地元の米を使って、地元の人たちが納得できる米粉を届けたい」と強い思いを語ってくれます。
その思いから始まった米粉製品の開発では、米粉に適した特性を持つ品種「ひたちのゆめ」「ほしじるし」などを選定し、試行錯誤を繰り返しました。さらに、精米から製品出荷までの時間短縮にこだわったといいます。精米したての米をそのまま製粉、包装することで米の香りや風味を損なうことなく調理現場に届けることができます。
小ロット生産であれば、精米後の米を一定時間保存せずに鮮度を保ったまま製粉できます。この「茨城県産」というブランドと製粉直後の鮮度を意識した差別化は、小ロット生産が難しい大手製粉メーカーにはない広瀬製粉独自の強みであり確かな付加価値と言えるでしょう。
今後の展望について、広瀬さんは「米粉をごく当たり前の選択肢にしていきたい」と話します。業務用販売と並行して、今後は一般家庭でも手軽に楽しめる小袋製品の展開を進めていく計画です。
しかし「もちろん簡単ではない」と広瀬さんは続けます。和菓子用の経験と技術は豊かながら、洋菓子用は同社にとってまだまだ未知数。均質化への取り組みはもちろん、それ以前に消費者が求める米粉についての研究が必要だと話します。
その点では、業務用であるものの「米粉パンケーキミックス」納入先のカフェから継続注文があることで明るい前途は見えています。広瀬さんは「継続的な受注があるということは、私たちの米粉が受け入れられ、ファンがついてくれている証拠」と手応えを感じています。

今後は道の駅などでテスト販売の実施、問屋やスーパーへの提案を通じて、より多くの消費者が日常的に米粉を手に取れる環境を整えていくといいます。また、広瀬さんが特に重視しているのが、学校給食への導入です。パンの代替としてだけでなく、米粉を使ったお菓子などを提案することで、幼い頃から地元の米のおいしさに親しむ「食育」の機会を創出したいと考えています。
さらに、高齢者や食事制限のある人など、健康への配慮が求められる方にも選ばれやすい特性を持つ品種の米粉生産も視野に入れています。
こうした展開を通じて、2029年度までに年間10トンの販売目標を広瀬さんは掲げています。
「おいしいお米を今の暮らしに馴染みやすい形で提供することで、農家さんが意欲を持って米づくりを続けられる環境を支えたい」
その言葉どおり、米粉の需要拡大は地域の農家の所得向上や次世代の担い手育成に直結します。広瀬製粉の挑戦は、農業の持続可能性を高める一つのカタチとして、これからの地域の食を支えていくことでしょう。
※本記事は2026年2月時点の情報です