機械メーカーがつくる、米と水だけのやさしい米麺

機械メーカーがつくる、米と水だけのやさしい米麺

大阪市で1961年に創業、1975年に会社設立した株式会社幸和工業は、製菓機械をはじめとする食品製造機械の開発・製造を手がけてきた企業です。農林水産省主催の技術研究組合への参画や、累計1,000件を超える特許取得など、食品加工分野で高い技術力を培ってきました。

機械を製造する会社が、なぜ麺に着手したのか。商品開発のプロジェクトリーダーを務める営業部の稲角雅史さんに話を聞きました。

転機となった高アミロース米のアルファ化

同社が米粉の可能性を模索し始めたのは、70年代後半にさかのぼります。アルファ化澱粉技術開発にも取り組みましたが、市場は小麦粉主体へと傾き、米粉活用は期待したほど広がりませんでした。

「日本で自給できる主食は米です。いつか必ず米粉の価値は見直されると、当社では長年考えてきました」と稲角さんは話します。

転機となったのは、高アミロース米の生産農家との出会いでした。米をアルファ化する装置の開発に成功し、その米を製粉会社で粉砕したところ、従来の米粉に比べ保水力が大きく向上することが判明。グルテンの代替として活用できる可能性も見えてきました。

アルファ化米粉の販売事業を開始すると、食品メーカーにも採用され、令和6年度には1.8トンを販売。しかし、粉そのものを販売するだけでは、米粉の広がりに限界があることも感じていました。

「近年、小麦アレルギーやグルテンフリーへの関心の高まりという社会情勢の変化もあり、米粉事業を見直しました」と稲角さんは振り返ります。
機械メーカーとして培った技術を、最終商品へ。こうして、米粉と水だけでつくる米麺の開発が本格的に始まりました。

転機となった高アミロース米のアルファ化
米と水だけで麺を成立させる設計技術

米と水だけで麺を成立させる設計技術

同社が最終商品として「麺」を選んだのは、独自のアルファ化技術で保水力が向上した米粉の特性を最も活かせる分野だったからです。一方、機械の取引先である製麺業者からは、製造ラインでのコンタミネーションや加工の手間を理由に、機械よりも完成品の麺を求める声が多く寄せられていました。技術的な可能性と市場ニーズが重なったのです。

一般的に、米粉だけでは生地のまとまりが弱く、面状に伸ばす工程で割れやすいという課題があります。そのため市場に流通している米粉麺の多くは、小麦粉や加工澱粉、増粘剤などを加えて物性を補強しています。

今回使用したのは、福岡県産の高アミロース米「ふくのこ」です。粘りが出にくく、比較的さっぱりとした特性を持つ品種で、麺への加工適性が高いと判断しました。

この米を自社開発機でアルファ化した米粉と、通常のベータ化米粉とを独自に配合しました。アルファ化米粉がつなぎの役割を果たし、ベータ化米粉が米本来の風味を支えることで、保水性と伸展性のバランスを整えました。

「アルファ化した米とベータ化米の配合が、食味と物性の両立の鍵になります」と稲角さん。

その結果、増粘剤などを使用せずとも、切れにくく、すすって食べられる長さを確保。もっちりとした食感と、米らしいやさしい味わいを実現しました。短時間で仕上げるラーメンとは異なり、うどんのようにじっくりと茹でることで本来の力を発揮します。口に含むと、もっちりとした弾力がありながら、表面はなめらか。噛みしめるほどに米のやさしい甘みが広がり、和風のあっさりとした出汁と合わせると、その素朴な味わいがより際立ちます。

製造体制の整備に向けて米粉商品開発等支援対策事業を活用し、製麺機および包装設備を導入しました。これにより自社内での一貫製造が可能となり、米粉と水だけで仕上げる“混ぜ物なし”の米麺を安定的に供給できる基盤が整いました。

米と水だけで麺を成立させる設計技術
展示会が後押し、BtoC戦略と農家連携

展示会が後押し、BtoC戦略と農家連携

2025年の業務用食品や製パン・製菓業界向けの展示会で米粉麺を紹介すると、想定以上に一般消費者からの反響がありました。

「本当に米粉と水だけですか」「アレルギーがあって麺を諦めていました」「ぜひ販売してほしい」など、小麦アレルギーを持つ子どもの親やグルテンフリー実践者から、切実な声が寄せられました。海外からの来場者も多く、ヴィーガンを選ぶ層からの関心も確認できました。

一般消費者の強いニーズを直接確認したことが、BtoCを主軸とする戦略に転換するきっかけになりました。現在の生産能力は月産3,000~4,000食規模であり、安定した大量供給にはまだ時間が必要です。まずは本当に必要としている人に直接届けることを優先し、ECを活用した直販体制の構築を急いでいます。

将来的には、ヴィーガンやアレルギーへの関心が高い海外市場も視野に入れています。国内で製造した製品を冷凍して輸出する形で、日本産米の価値を活かしたニッチ市場の開拓を目指します。

さらに、農家と連携し、米づくりから製粉、製麺までを一貫して手がける体制の構築も構想しています。令和11年には米粉の年間使用量22トンを目標に掲げ、段階的な拡大を見据えています。

「将来的には、農家の皆さんと協力し、米づくりから製粉、製麺までを一貫して手がける体制を築きたいと考えています。特に自社拠点のある関西圏での連携を広げていきたい」と稲角さんは抱負を語ります。

機械メーカーとして培ってきた技術を、国産米の新たな需要創出へとつなげる挑戦は、これから本格化します。

※本記事は2026年2月時点の情報です