地元のため、自農園のため、米粉商品で6次産業化へ挑戦

地元のため、自農園のため、米粉商品で6次産業化へ挑戦

こなつ農園は、「大地と稲本来の力を引き出す」という方針のもと、無農薬・無肥料で有機JAS米を栽培しています。農園主は小夏英昭さん。東京のIT会社勤務から転身し、実家を継いで平成27年に就農。営農10年を経て、米粉商品開発等支援対策事業を活用した小夏さんの6次産業化への挑戦が始まったのです。

消滅危機にある地元の稲作農家を救うためのチャレンジ

小夏さんが6次産業化を目指した理由のひとつは、地元の活性化。
こなつ農園のある熊本市南区城南町には稲作農家が7軒しかなく、そのうち7割は70代後半と高齢化が進み、跡を継ぐ人もいない状態。令和6年の農林水産省のデータでは、農家の平均年齢が約69歳、後継者のいない稲作農家が70%。城南町は全国の水準を上回る危機的な状況です。
「故郷・城南町の稲作が消滅してしまうのを防ぐ手はないか、とずっと考えてきました。粒食だけに頼っても、米は今以上に普及は進まない。そこで、米粉に加工し、パンや焼き菓子に加工して地元の特産品化することで、地元を再生させる足がかりにならないかと考えたのです」

消滅危機にある地元の稲作農家を救うためのチャレンジ

それに加え、自農園の経営を伸長させるためにも6次化は重要なステップだったと小夏さん。

「就農する際、差別化として有機栽培を掲げました。確かに地元では稀な特徴。ですが今や全国に同様の農園が星の数ほどあり、さらなる差別化ポイントがなければ、販路拡大が望めないのです」
ただ、設備もないゼロからのスタートはリスクが大きく不安。そんなときに知ったのが本事業でした。補助金を活用して、城南町とこなつ農園の未来をかけた挑戦が始まったのです。

試行錯誤の末、有機JAS米の米粉を使った焼き菓子・パンが完成

試行錯誤の末、有機JAS米の米粉を使った焼き菓子・パンが完成

小夏さんがチャレンジしたのは、有機JAS米を使ったオリジナル米粉での焼き菓子とパンの製造。補助金は米粉製粉機と、米粉パンや焼き菓子の安定品質を実現するオーブン・ミキサー・ホイロ、そして原材料の鮮度維持と計画生産を可能にする冷凍冷蔵庫・急速凍結庫の購入に活用しました。「次の一手のために」と自己資金で改装を進めていた倉庫にそれらを設置し、加工場を完成させました。
また、就農してから約4倍の8ヘクタールまで増やした圃場を活用し、米粉専用品種『ミズホチカラ』をはじめ『雄町』や『朝日』を3アールに作付け。初年度は2,520kgの米粉用の米を収穫し、それを使ったオリジナル米粉を完成させ、商品の試作が始まったのです。

「重要なのは『商品の付加価値をどれだけ高めるか』だと考え、レシピ開発は地元の有名レストランに依頼しました。地産地消を掲げておいしい料理を提供しているシェフに共感してもらえ、試作がスタートしました」

しかし、朝食や昼食など、毎日食べてもらえる食パンの商品化を目指したものの、米粉を使ったパンの「膨らまない」「日が経つと固くなる」という特徴に悩まされ、断念してしまいます。

「高齢者の多い当地域ではこの食パンは受け入れられない。つなぎに昆布酸を添加する製造法も開発しましたが、無添加で健康に良い商品をつくりたいため、採用せず。結果、大きく方向を転換しました。まずは水分量が少なくてすみ、米粉の難点が気にならないバケットを開発したのです。焼き菓子は順調で、米粉ならではの口どけが楽しめるシフォンケーキとカステラが完成しました」

そこから味種を増やすための試行錯誤を経て、8つの味の焼き菓子2種類と、山芋やこんにゃくを増粘剤とする無添加のバケットが完成したのです。

試行錯誤の末、有機JAS米の米粉を使った焼き菓子・パンが完成
こなつ農園の挑戦が他の農家に勇気を与え、地域活性につながれば

こなつ農園の挑戦が他の農家に勇気を与え、地域活性につながれば

「稲作は9カ月もの農閑期があります。6次産業化が果たせれば、農閑期で製造に注力し、時間を有効活用することができる。自社栽培の有機JAS米を専用工場で加工して販売、そうして年間を通して収入を確保するという稲作農家の事業モデルは、熊本県では、ほとんど例が見当たらない。県内の稲作農家のみなさんの刺激になればと期待しています」

そう話す小夏さんは、このチャレンジを成功させるため、SNSを活用した広報プランも考えています。新規事業のプロデュース実績が豊富な企業とタッグを組み、すでに動画を撮影済み。「こなつ農園だからこそつくれる、安全で、おいしく、心を満たす米粉商品」を積極的にアピールしていくとのこと。販売は新たに制作するECサイトで実施。これらの活動にも本事業が活用されています。

「次の展開も考えていますよ。熊本の特産であるお茶などを採り入れた味種を増やしていく予定です。こなつ農園の米粉商品が、城南町はもとより熊本県の特産品となるよう、がんばっていきます。軌道に乗れば、製造のための正社員を雇用する予定。雇用を創出するのも、地域の活性化には重要ですから。こなつ農園の挑戦に勇気づけられた熊本県の農家が、新たなチャレンジを志す、そんな未来を目指しています」

自農園はもちろん、熊本県の未来を拓く小夏さんのチャレンジは、いまスタートを切ったばかり。これからの展開が楽しみです。

※本記事は2026年1月時点の情報です